第一話 《死神》剣士
趣味全開です。
肉体欠損や残酷描写が苦手な人は、Uターン!
(あんまり重くないけどネ)
戦いの、戦場の音が微かに聞こえる。
仲間の兵士と共に鬱蒼と木々の茂る林を駆ける若き剣士。
戦場に向かっているのにもかかわらず、剣士の口元には笑みが浮かんでいた。
「なに笑ってるんすか、仲間が押されてるんですよ」
同世代くらいの兵士が指摘するが、若き剣士は笑ったまま顔を向けた。
「いや、すまん。また活躍出来ると思ったらつい、な」
不敵に笑うその表情は自信に溢れ、実際にその実力も並では無い。
各地の戦場で傭兵として勲功をあげ、驚くような短期間で正規の部隊を任せられる程に出世したことにも、その実力が伺える。
「オレに任せろ。この戦場は、オレの舞台だ」
木々が途切れ、兵士達が剣を抜き放ち林から躍り出る。
強襲を受けた友軍の陣地は、あちこちから煙が上がっている。
「さあ、《死神》の戦いを見せてやるッ!」
若き剣士の名はショーン。《死神》の二つ名を持つ、帝国軍の急先鋒だ。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「おおおぉぉぉぉッ!!!」
力強い雄叫びと共に振り下ろされる幅広の両手剣。
防ごうと掲げられた剣ごと叩き斬り、敵軍の兵士は鮮血を噴き上げながら崩れ落ちる。
「ショーン隊長!新手です!」
部下の声に顔を上げると、斬り伏せた数以上の敵兵が迫ってきていた。
「王国は数だけはありやがるなっ、オレが行く!」
「隊長!?無茶です!」
部下の制止の声を振り切り、単身敵軍へ肉薄する。
「オレが負けるわけねーだろォ!」
裂帛の気合と共に振るわれた両手剣。
しかし。
「なんだぁ?活きのいいのがいるな」
長大なハルバードがショーンの剣を防いだ。
「ちょっと遊んでやる。きな、ボウズ」
両手剣の一撃を防いだ、白髪交じりの巨漢がショーンを挑発する。
今まではこんな事はなかった。
一刀の下に敵を斬り伏せてきたショーンの頭へみるみるうちに血が上る。
「上等ォ!後悔すんなよッ!」
既に、ショーンは周りが見えぬほどに頭にきていた。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「(なんだ、なんなんだこいつは!?)」
ショーンはハルバードの男に追い詰められていた。
長柄を巧みに操り、巨漢に似つかわしくない身のこなしで剣をいなされる。
まるで子供扱いされるかの如く、釘付けにされていた。
「よえぇな、そんなんでよく生きてこられたな?ボウズ」
「うるっ…せえっ!!」
ショーンは強い。
重量がある両手剣を使っているものの、その一撃は鉄剣を叩き斬る。
戦場で勝ち、生き残ったからこそ今の立場がある。
彼が弱いはずがなかった。
何故ならば、彼はこの世界に神の加護を受けて産まれなおした《転生者》なのだから。
強靱な肉体。
鋭い五感。
病知らずの免疫。
神に願った加護はどれも驚異的なものだ。
その強靱な肉体は、幼少期に魔獣と呼ばれる化け物を退治出来るほど。
その五感は、戦場で飛来する矢を感知し掴み取って防ぐほど。
その免疫により、産まれてから一度も病を患った事がない。
幼い頃より、大人顔負けの活躍ぶりを見せていた。
しかし。
「やっぱ、よえぇよボウズ」
ハルバードの柄で剣を払われ、石突きで体勢を崩され。
返す刃で。
「ッ!が あ、ぁあ あぁッ!?」
利き手を、肩口から斬り飛ばされた。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「徹底ッ!徹底ーッ!」
怒号のような声が響き渡る。
陣地は既にその役割を保てず、友軍の指揮官はこの場を放棄する決断を下していた。
「まぁ、こんなモンかね」
ハルバードを肩に乗せる男は、事も無げに呟く。
涼しげな表情で辺りを見回し―――…
「がっ、ぎぃっ…うで、が あ、ぁっ!」
男は、のたうち回るショーンを見る。
すると、早足で近づきかがみ込んだ。
「加護持ち転生者だからって調子に乗るからこうなる」
男の言葉に痛みを忘れ、目が見開かれる。
男は知っているのだ。ショーンの最大の秘密、転生者であるという事を。
「いい勉強になっただろ」
腰に下げたポーチから手早く革張りの薬瓶を取り出すと、斬られた肩口へ振りかけられる。
薬が染みてうめき声を上げるが、痛みが引き出血が止まる。
「これで少なくとも死にはせん。じゃ、な」
マントをはためかせ、男がその場を後にする。
遠のく意識の中、部下の声が聞こえた。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇
趣味全開でした。
楽しんで貰えたなら幸いです。