第2話純白の天使と悪巧みの小悪魔
結局蓮真の挨拶は失敗に終わり、その後いつものように学校を終えた俺と真美は一緒に帰っていた。
「まったくっ……お兄ちゃんの妹じゃないっていつも言ってるのに!」
そう言いながら真美は地面に落ちている小さな石ころを蹴った。
どうやらまだ根に持っているようだ。
「はぁ……まだ怒ってるのか?」
俺が聞くと真美は即座に「当然」と答えた。 あながち間違ってはないんだけどな……。
そうこう話しているうちにいつの間にか家の前にたどり着いていた。
「お兄ちゃん早く早くっ」
「分かったから落ち着けって」
急かす真美を抑え、出来るだけ急いで鞄から鍵を取り出し、家のドアを開けた。
ちなみに、我が家は5人暮らしとは言ったが実は現在父さんは海外赴任中であるため、実際は4人暮らしだった。
と、なると俺はこの家では唯一の男となるわけだが別に特に不自由なことは何もない。不自由なことは……だけどな。
夕食と風呂を終え、俺がリビングのソファで携帯をいじっているとそれは突然やってきた。
ガチャりという音と共にドアが開き、誰かが入ってくる。
「あっ和にぃ、何してるの?」
そう言い、俺の前に現れたのは実の妹である香織だった。艶やかな黒髪を後ろに巻いてポニーテールにしている彼女は道で誰かとすれ違うと男女関係なく半分以上は振り返って彼女を見るほどの美女だ。
これは俺が兄として贔屓しているわけでもない。まぎれもない事実だ。おまけにスタイルもそこそこよく、出ているとこは出ている。
「ん? 何って蓮真達とLUINDをやってる……って、お前またバスタオルだけじゃねぇか。服を着ろ服を」
何故か香織はバスタオル1枚を身体に巻いた状態で俺の前に立っていたのだ。バスタオルからはみ出た艶かしい肩と鎖骨が露わになっている。
「えーだってめんどくさいし見られるの和にぃだけなんだから別にいいし?ね?真美ちゃん」
俺がそう命令すると香織は真美を呼んだ。
「うん! お兄ちゃんなら全然いいよ」
真美の声と共に軽い足音が聞こえてくる。
そしてその姿が俺の視界に入った時、
「なっ……!?うおっ!」
俺はあまりの驚きにソファから転げ落ちてしまった。
そう、真美もまた、香織と同じくバスタオル1枚を身体に巻いた状態で俺の前に現れたのだ。
「いててて……」
「大丈夫? お兄ちゃん」
真美はそう言い、俺の顔を覗き込んできた。バスタオルからほんの少しだけ覗く谷間が……
「って、お前ら2人とも服を着ろやあぁ!」
……とまぁ、不自由なことはないのだが今のようなラッキースケベやトラブルは日常茶飯事だ。香織はともかく家族じゃない真美はやばい。いや、まぁ香織もスタイル的な意味でやばいんだけどな。
しかも香織のやつ、小さい頃から俺にいたずらをよくしかけてきており、そしてそれはいつの間にかそれはおさまったはずなのだが、2年前に真美がこの家に来たことによってまた別の形で復活したのだ。主にエロい形で。今のも恐らくわざとだったに違いない。
たまに度がすぎると俺は母さんに訴えるのだが「いいじゃない。妹達とのスキンシップよ!」とか訳のわからないことを言いだすため、不発に終わってしまう。
信頼されているやら面白がられているやら……
とにかく心の強度をもっと鍛えないとな。そう思う俺であった。
そして香織のいたずらは寝る時になってもやってくる。
俺は布団に入りながら蓮真と幹弘にLUINDをし、明日のある作戦を立てていた。内容は当日まで内緒だ。
と、その時、部屋のドアがガチャりと音をたてて開いたのが分かった。
携帯の画面から目を離し、ドアの方にちらりと視線をやると……
「和にぃ、真美が寒いってさ」
そう言いニヤリと笑う香織と枕をぎゅっと抱きしめている真美がいた。その表情が何故だか少し赤い。
てか寒いってなんだ寒いって。もう春であったかいじゃねぇか。
「……んで? それがどうしたんだ?」
すると、香織は端的に述べた。
「和にぃも一緒に寝ようよ」
……はい? とりあえず俺はいたって普通の正論で返した。
「それならお前ら2人でくっついて寝ればいいじゃねぇか」
いたって普通の事を言うと、香織は何故だかはぁとため息をついた。
「和にぃって割と鈍感だよね……」
「……はい?」
「ううん、とにかく! 和にぃも一緒に……寝よ! 真美ちゃん!」
「うん!」
なんか息ぴったりだな2人とも。そんなことを思っていると俺の姿勢がガクンと横に崩れた。
見ると香織が俺の左足を、真美が俺の右足を持ち上げて引きずっていた。
まさかこいつら! 俺をこの部屋から引きずりだして自分達の部屋に持ち込む気か!
「そうは……させるか!」
俺は辺りを見回すと、近くにあった本棚をガシッとつかんだ。これなら流石に妹2人の力をもってしても、本棚ごと俺を引きずりだすのは不可能だろう。
「うぅ〜……」
「和にぃ……手強いっ」
よっしゃあ! これで俺はこの部屋で寝れる!
そう思ったのと同時に香織が叫んだ。
「真美っ! なんでもいいから和にぃの視界を遮って!」
ふん。遮るだと? あまいな香織。例え目隠しされようが玉ねぎで目潰しされようが俺は……
「分かった! ……えいっ!」
「ふぐっ!?」
真美は俺の正面に回り込むと、いきなり俺の顔に抱きついた。しかも胸を押し付けて。
香織ほどは大きくないが、恐らくCかDぐらいはあるこのほどよい大きさ。そして甘い香りと俺の顔を包み込むような柔らかい弾力が……
「真美ちゃんナイス!」
「んーーーーーーー!」
香織がそう叫ぶと同時に、俺の身体は妹達が寝る部屋へと一気に引きずられていった。
「お兄ちゃん、ごめんね?」
引きずられる道中、あちこちに身体をぶつけた俺が1番痛かったひざの部分を撫でていると右隣に寝ている真美が急に声をかけてきた。
俺は左隣にいる香織が完全に眠りに落ちているのを確認すると口を開いた。
「いや、いいけどさ……なんで一緒に寝たかったんだ? もう春なんだから寒いとも思えないし」
すると、真美は唇を尖らせながら言った。その表情は少し拗ねているようにも見える。
「……お兄ちゃんのバカ」
「……なんかすまん」
俺が素直に謝ると真美はふふっと言い、笑った。そして笑った時の彼女は少しばかり大人っぽく見え、少しドキッとしてしまう。
「いいよっ。でも……いつか気づいて欲しいな」
「ん? なんだそれ?」
「すぅ……」
真美から返事がない。どうやら眠ってしまったようだ。それにしてもいつか気づいて欲しいなって、何のことなんだろう……
「……まぁいいか。おやすみ、真美」
俺は真美の頭をそっと撫でると眠りについた。




