第15話やれば出来る期末テスト
いつも通り真美と一緒に登校すると、教室内にいるクラスのみんなが珍しく机に向かってノートに書いたり教科書を見たりしていた。なんだか異様な光景だ。
「あー和也、皆城、おはよう」
俺達に挨拶する蓮真までもがその対象だった。
「どうした蓮真! お前ってそんなに勉強熱心だっのか!? 頭大丈夫か!? 熱でもあるんじゃないか!?」
俺がそう言うと蓮真はあのなぁ……と何か言い始めた。
と、その時俺の背中を真美がちょんとつつき、振り向くとそっと俺の耳に囁いた。
「お兄ちゃん、今日から期末テストだよ……」
「……え、まじで?」
……そういえば今日から期末テストでした。ずっとゲームしてたから全く気づかなかったぜ!
その日の教科は国語と英語だったのだが、俺は全く勉強していなかったがために記号問題とマルバツ問題しか解けなかったのであった。
「はぁ〜疲れた……」
帰り道、疲れのせいか思わずそんな言葉がもれた。すると一緒に帰っている幹弘が笑った。
「ぷっ、お前の場合深夜までゲームしてたからだろそれ。ちゃんと勉強しろよ」
「いやぁ……だって勉強めんどくさいし。あ、アルドラの勉強ならいくらでもするぜ!」
途端に元気になった俺を見た幹弘は思いっきり苦笑していた。すると俺の隣にいた真美が腰に手を当てながら言う。
「お兄ちゃん! ダメだよ、ちゃんと勉強しないと!」
「いやぁだってさ……てか、お前らは勉強してるのか?」
途端、みんなの顔がこいつダメだ早くなんとかしないとみたいな顔をし始めた。何で?
すると今度は今まで黙っていた詩帆が言う。
「……カズは一度しっかり勉強した方がいい」
うぐ……まさか一緒に深夜までゲームをしている詩帆に言われるなんて……あ、そう言えば
「そう言えば城咲は?」
「……呼んだ?」
「うおっ!?」
どこから沸いた……ではなく後ろにいた城咲がとてもげんなりした表情で俺の隣にきた。
「大丈夫かお前……」
一応そう言うと彼女は頭を横に振った。
「もうダメ……今日のテスト、マルとバツの問題と記号の問題しか解けなかった……」
あ、こいつ俺より酷いな……俺は思わず内心で同情した。
何故なら今回のテスト、記述問題が圧倒的に多く、記号やマルとバツの問題なんて15点分くらいしかなかったからだ。
ということはだ。合計しても30点分くらいしかないというわけだ……ちなみに赤点のラインは30点。そう、足りないのだ。
「お前も苦労してるんだな……」
「あんたもね……」
俺達は互いに深いため息をついた。真美、蓮真、幹弘、と頭がいい奴らばかりの中(月宮と詩帆も恐らく頭がいい)勉強しない・記号やマルバツ問題しか解けない俺達は似た者同士がゆえに何か通じるものがあるかもしれない。
「むぅ……」
何故かそんな俺達を見てむくれる真美。頭いいんだから俺に嫉妬する要素皆無だろうに。
「じゃあみんなで勉強会でもするか? 教える方も教えられる方も勉強になるし」
そう言いだしたのは意外なことに幹久だった。
「お前にしてはそれ、神提案だな!」
「にしてはとか余計なお世話だ」
そんな俺に幹弘はやれやれといった表情をするのであった。一応褒めたんだけどな。
テストの1日目が金曜日だったおかげで次の日が土曜日だったのもあり、珍しくしっかりとした幹弘の提案によって俺達は部室に集合した。
部室が集まるための便利な場所になってしまっているのは割愛だ。
「ここをこうして、こう解いてから連立方程式を使うと簡単にできるよ、やってみて」
「ふんふん」
現在城咲は月宮に数学を教えてもらっていた。飲み込みが早いあたり彼女も頭が悪いわけではなさそうで単に勉強してないからだけのようだ。
対して俺はというと……
「お兄ちゃん……めんどくさいからっていきなり連立方程式を使っちゃダメだよ。最初にしっかりと式を組み立てるからこそ後が簡単で楽になるんだから」
「はいはい」
「ハイは一回!」
「はい……」
俺は元々めんどくさいことが嫌なタイプのため、自ら進んでやることは少ない。誰かに言われたらするんだけどな。
だが、いう通りにすればちゃんと解けるあたり俺もねっから頭が悪いわけではなさそうだ。今度からはゲームもほどほどにしてしっかり勉強しよう。
いや、それができるかどうかは怪しいところだけどな。
ちなみに蓮真と幹久は何やら雑誌か漫画のようなものを読んでおり、詩帆にいたってはやはりゲームをしていた。
見ている限りだが、この部のメンバーってみんな頭いいんだな。
「……お兄ちゃん、ちゃんと集中して」
また真美に怒られた俺は問題集に目を戻し、再び解き始めた。
そして月曜日、火曜日、水曜日と雪崩のように期末テストの試験がやってきた。というのも、この期末テストは現代文、古典、数学1、数学A、英語、日本史、家庭科、体育の8教科で構成されており、1日あたりのテストも2教科と少ない。そのぶん早く帰れるから勉強しろってことなんだろうけどな。恐らく家に帰ったあと、勉強するか遊ぶかによって結果が大きく違ってくると俺は思う。
そして木曜日、全教科のテストが返却され、クラスの順位と学年の順位が結果の紙に記されていた。
「うそだろ……? まじか」
「どうしたの? お兄ちゃん……えぇっ!?」
「なになにどうしたんだ? ……って、おいおいおいまじかよ俺より点数上じゃねぇか」
俺の今回の期末テストの結果は8教科で合計632点という驚異的な数字を叩き出していた。てかこれ1日目の教科もしっかり勉強していれば700点超えも狙えた。平均にすると1教科あたり約79点だ。それを見た真美や幹久が目をむき出しにして驚いているがそれはむしろこっちがそうしたい。中学で5教科168点しか取れなかった俺が79点だと!? 夢なんじゃねぇかこれ! もしくは明日俺死ぬのか……そう思っていると、
「……玲那もすごい」
「どれどれ? ……っ! ほんとだ……しかもお兄ちゃんより上……」
「ちょっ、あんまり見ないでよ恥ずかしいわ」
俺も思わず席を立ち、城咲のテストの結果を見ると彼女のテストにも驚くべき光景が広がっていた。
彼女は合計640点取っており、平均にすると約80点だ。城咲もやべーな。
「月宮……幸の教え方が良かったからよ」
「嬉しいけどさっちゃんて呼んで欲しいな〜玲那ちゃん」
「……幸で勘弁して。なんか恥ずかしいわ」
おおっ、いつの間にか名前で呼び合う仲になってる。やっぱり女子同士って仲良くなるの早いな。
「うぅ……なんでこんなゲーマーの子に私が負けるの……」
「……ゲーマーで悪かったわねブラコンさん」
「むっ! ブラコンなんかじゃないもん!」
……この2人は何故か例外のようだ。早く仲良くなるといいんだけど……
ふと辺りを見回すと詩帆が携帯を見て落ち込んでいるのが視界に入った。
「どうした? 詩帆」
すると詩帆は顔を上げて何かを俺に言おうとするが……
「ううん、なんでもない」
携帯の画面を閉じて小さく笑う詩帆。この時、俺は少し彼女のことが心配だったがこれ以上深く追求しないことにした。




