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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第二章 世界樹篇
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合流組の災難

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流れの速い暗灰色の雲から大粒の雨が降り頻る。

雨粒は大きな葉に当たり騒々しい音を立てているが、黒い樹木が生い茂る黒森の中までは届かず、闇に吸い込まれて消えてしまっているかのような静けさだった。


「ギャギャ!ギギャア!」

「ギシギシシッ!」


そんな中を騒がしいゴブリンの一団が松明を掲げて移動して行く。五匹のゴブリンはいずれも金属の短剣を持ち、道すがら伸び放題の草を楽しげに刈り取っていた。


少し離れた場所の樹上から、鋭い視線をゴブリン達へ向けている者がいる。その姿はボロボロで、左耳を失い肩には赤い血痕が残るエルフ服を着たオリヴィアだった。


(また武装したゴブリンね。金属製の武器を底辺のゴブリンにまで行き渡らせる程の集落が…)

「オリヴィア。この先の岩影に野営の痕跡があったわ。あの様子なら休憩に戻るはずよ」


すぐ隣から女性の声が掛かる。その女エルフのサナティナも腕に酷い傷があり、疲労の色が濃い顔をしていた。


「彼らを呼んで。ゴブリンを倒して朝まで休みましょう」


サナティナの姿が消えると数時間前の出来事が思い返された。




エルフ達がマッドローパーと呼ぶ荒野の怪物に襲われた際、アリエル達を逃がす為にオリヴィア達は囮となった。


一番大きな獲物だった馬車を逃した怪物は、風船の様に破裂すると無数の触手を吹き出して、近くにいた冒険者達を喰らい尽くした。


負傷したオリヴィア達も三人の仲間を失い、絶体絶命の中、以前襲われた際に知り得た怪物は森に立ち入らないことを思い出し、北の黒森へ走った。


だが蠢く触手の塊はオリヴィア達よりも速く、生き残った三人は死を覚悟する。そこへ西から飛んできた輓馬のいない馬車が怪物に当たり、逃げ延びる事ができた。


黒森に飛び込み素早く樹上へ上がったオリヴィアが見たものは、馬車を呑み込み粉砕する怪物と、西へ逃げていく馬、触手に追われてこちらへ走ってくる冒険者達だった。


「――ふぅ!ふぅ!今回はやばかったな!なんなんだ、あの化け物は!?」

「知らないわよっ!急に飛び降りろとか馬車を飛ばせとか無茶言うし、ウネウネした触手の塊も襲ってくるし、もう最悪…」


黒い全身鎧を着込み、身の丈程もある大剣を背負った大男が、オリヴィアもよく知るエルフの外套を頭から被った魔法使い風の女性と言い争う。その隣で軽装に二本の剣を腰に差した男が手を振って呼び掛けてきた。


「ヘイ!お姉さん達!無事…ではないか。薬あるよ!」

「…助かったわ。ありがと――っ!」

――ガッシャーン!――


潰れた馬車がオリヴィア達の近くに激突して大きな音を立てる。怪物は諦めたのか、砂埃が舞う荒野の先へ姿を消した。


「うっ…」

「オルティス!」

「兄さん!?」


樹木の影に隠れていた血だらけの男エルフが倒れると、オリヴィアとサナティナが助け起こす。サナティナは精霊に語りかけて治療を始めるが、自身も酷い怪我を負っており、苦しそうな表情を見せる。


すると灰色ローブの少年が隣りに膝をつき、言語ではなく高い音域で声を発する。その旋律を聞いたオリヴィア達は不思議な感覚と共に傷が癒え始めた。


「これは…神聖魔法?」

「レインは世にも珍しい旋律による神聖魔法の使い手だぜ。俺達はあっと!?」

「――俺達は西風って言う魔法王国から来た冒険者だ。俺がゴライオ。こいつはジェスターでそいつは…」

「アーシェよ」


名乗りながらフードを払った女性は、金髪にオレンジ色の瞳、耳がオリヴィア達と同じで尖っていた。


「ハーフエルフなのね」

「そうよ。母がエルフなの」


癒やしの旋律が終わるまでの間、情報交換をしていると、彼らはカーマインを追ってきたという。


「荒野の怪物マッドローパー…聞いたことないな」

「お仲間は残念だったわね…」

「使命の為…彼らは勇敢だったわ」


その場にいた皆の傷が癒えて疲労が幾分か回復すると、見晴らしが良すぎる為に移動する事にした。


気を失っているオルティスをゴライオが背負い、黒森の縁を東へ進む。しかし度々武装した魔物の襲撃を受けて、オリヴィアとサナティナが森の奥を偵察しに向かう事にした。




ゴブリンを難なく倒して埋めてしまうと、岩影で休憩を取る。


「この先に魔物達が集まっていたわ。ゴブリンにオーガ、トロルまでいた。それにヴーグも…皆武装してる」

「豪勢だねぇ。美味くはないけど」


干し肉をかじりながら話すジェスターは珍しい双剣使いで、さらに氷という上位属性魔法の使い手だった。


奥の手にもなる魔法を惜しげもなく使い、氷の器を作っては飲み物を注いで皆へ配る。その際、金色の髪の根元が青い事にオリヴィアは気付いた。


魔素儀式を受けに来る学園の子供達の中にも、髪を染めている者がいた事を知るオリヴィアは、古代シュメル人と同じ金髪に憧れる彼らの心情を察して視線を下げた。


「集落の奥には倒木があって、地面には大きな穴が空いてたわ。恐らくこの辺りにある中州街の脱出路に空いた穴よ。以前もその脱出路を通って中州街に逃げたことがあった」

「なるほど…決まりだな」


ゴライオは黒い全身鎧を脱がずに休憩しており、干し肉をまとめて数枚かじると、僅かに酒気を含む水で流し込んだ。


背負う大剣は巨大な盾のようで、それを振り回せるとは信じがたいものがあった。


「けど、それ以上増えるようだと不安があるわ…レインが狙われたら困る」


エルフ寄りのハーフであるアーシェは、変わった弓を背負っている。しなりが大事な弓には数ヵ所小さな穴が空いていて、弦には艶があり目を引き付けられた。


レインという明るい灰色髪の少年はリースより幼く見え、アーシェが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。


「オーガは私達が誘導しましょう。森の中でエルフに勝る者はいません」

「よし…早朝ヴーグ狩りをしようか」


ゴライオはそう言いながら西風のメンバーを見た。




西風のリーダー、ゴライオが持つ携帯鐘が日の出と共に震える。しかし森は依然として暗いままだった。


傷は残ったもののオリヴィア達は回復し、ヴーグの集落を襲撃する為に装備を確認していく。


「オーガが離れたらヴーグを逃がさず討ち取る。トロルはゴブリンを掃除してからだ」

「トロルちゃんは任せてよ。俺の氷炎は今までに二十以上は倒してきたんだぜ?」


ジェスターは見た目通りのお調子者で、何かとオリヴィア達にアピールしていた。


サナティナには目が覚めた兄のオルティスが寄り添い、ジェスターへ睨みを利かせる。そんな二人にゴライオは大剣の腹を叩いて注目を集めた。


「目の前の敵ばかりでなく、穴の中からやって来るかもしれない増援にも警戒しろよ。不測の事態には倒木を利用して穴を塞ごう」

「レインはいつものお願いね」


いつものが気になり聞いてみたがお楽しみにとはぐらかされてしまう。




西風の面々は暗い獣道を慎重に進み、オリヴィア達は樹上を飛び移る。少しして開けた場所に出ると、異臭にアーシェが顔を顰めた。


「一、二…十二、十三、よし聞いた通りだ。オーガ四匹が離れたらヴーグから始末する。いいな?」

「了解~」


鳥の鳴き声の後、広場中央で火を囲うオーガの一匹がキョロキョロし始め、仲間を連れて離れていった。


西風の四人は、広場の端に集まり背中を見せている、三匹のヴーグ目掛けて駆け出す。


レインは途中で立ち止まり、一呼吸置いてから高く澄んだ声で旋律を奏でる。その声を聞いた他の三人は淡い光を纏い、加速して瞬く間にヴーグの背後へ迫った。


「――っしゃー!きたきたきたぜ!レインの戦歌!み~な~ぎ~るぅ♪」


ジェスターが振るう二振りの剣がボサボサ頭のヴーグを十字に斬りつけると、揺らめく氷炎が身体を包み込み、黒く変色させていく。氷漬けになったヴーグは、鉄塊とも呼べる槌と歪んだ鎧をそれぞれ持ち、足元には冒険者らしき男の死体があった。


「ぬぅぉおおー!」


頭上で振り回されたゴライオの大剣は、旋風を巻き起こし、斜めに二回振り抜かれる。ヴーグを輪切りにすると、足は立ったままだった。


アーシェはそんな二人とは違い弓の弦を軽く弾くだけで、中腰で作業をしていたヴーグは膝をつき、虚ろな目をして倒れる。


「ギャギャギャ!イギャー!」

「ブフッ、ブフッ、ブィギィーッ!」

――グシャ!――


ゴブリンはうたた寝をしていたトロルの背中を何度も叩き、西風の者達を指差す。それをトロルは煩わしそうに叩き潰すと、立ち上がろうとして転んだ。



「うぉー!らぁ!――アーシェ!ちゃんと止めを刺せ!」

「わかってるわよ!」


向かって来たゴブリン四匹を、ジェスターと共にすれ違い様に倒してトロルへ迫る。しかしその巨体を利用して転がり出したトロルに、二人は危うく下敷きにされるところだった。


広場の端、トロルの影に身を潜めていた五匹のオークが現れる。一体を除いて皆大きな鉈を持ち、歪んだ兜を被ったオークは槍を肩に担いでいた。


「くそっ!ゴブリンの他にもいたか!」

「ゴライオ!こっちからも来るわ!」


ゴライオ達とアーシェ達の間、大きく空いた穴からは獣の遠吠えと、何かが駆けて来る足音が響く。


「思ったより規模が大きい集落だな。頭はだれですか~?」

「ジェスターふざけてないで下がれ!アーシェは倒木を使って穴を塞ぐんだ」


下段から振り上げられたジェスターの剣は、氷炎の波を起こす。飛び退いたトロルの足を僅かに凍らせると、再び転倒させた。


迫って来ていた五体のオークは倒れたトロルに進路を塞がれるも、兜をした槍オークだけは軽々と飛び越え、ジェスターに向かって突きを放つ。


剣で槍の軌道を逸らして反撃しようとしたジェスターだったが、咄嗟に後方へ飛び退いて、急に伸びてきた槍を間一髪で避けた。


「――っと!今のは危なかったわ~。槍を短く持つなんて豚にしては考えてるじゃねえか」

「特殊個体だ!油断するな!」


そのオークは長めの槍を予め短く持ち、突き出すと同時に手を緩めて間合いを見誤らせようとしたようだ。


ゴライオの警戒を促す声に剣を振って答え、目の前の普通のオークにしか見えない槍オークを見据える。しかしすぐには向かって来ず、後続がもがくトロルを迂回して来るのを待っていた。


魔物や魔獣にも当然個体差がある。一流冒険者と対等に戦う森狼や、一軍を指揮するただのゴブリンも過去には現れた。

妖魔種は格が上がると大概見た目や能力が変わるのだが、中には変わらない者もいて、その謎は未だ解明されていない。


「雑魚は頼むわ」

「わかった…レインっ!」


ゴライオの視線の先では地面を隆起させたアーシェが、倒木を転がして穴を塞ぐ。それと同時にレインの声が止み、樹上から襲撃してきた猿の魔獣に外套を切り裂かれていた。


「レイン!下がって!」


アーシェの弓から放たれた矢は猿の眉間を貫き、眠っているような安らかな顔のまま倒れる。その時、横から飛び掛かってきた赤紫色の蜘蛛に驚き、咄嗟に弓で頭を庇うと弦を切られてしまう。


「きゃー!私の弓がぁ!」

「くそっ!気が散るから叫ぶなよっ!」


赤紫蜘蛛を怒りに任せて蹴り飛ばすアーシェ。レインは裂けた外套下から小さな槌を取り出すと蜘蛛を打ち払った。


ジェスターは槍の振り回しを身を低くして避けると懐へ滑り込むが、回し蹴りが脇腹を掠める。バク転して距離を取ったところに追撃の槍が迫り、氷炎の壁で防いで下がった。


しかし槍オークは氷の壁に体当たりをして粉砕すると、地面を蹴りつけて、砕けた氷を飛ばしてから突きを放つ。そこへ赤紫蜘蛛が飛んできて、槍オークの顔に当たり槍先が逸れた。


氷の破片が腕に刺さったジェスターは槍を踏み越え、氷炎を纏わせた双剣でオークの首を断ち切る。赤紫蜘蛛諸とも兜を被るオーク頭は氷の炎に閉ざされて炭化していった。


「あぁ痛え。なんてバカ力だ。まったく…」


その直後、苦悶の表情を浮かべたアーシェが足を押さえて倒れた。




オリヴィア達は不思議な旋律を受け、普段以上に身体が軽く感じた。


木々の間を風のように舞い、地上を必死についてくるオーガ達を翻弄する。広場から東の僅かに開けた場所で、サナティナが着地した木の枝が抵抗なく折れてしまう。落ちる途中で蜘蛛の巣に絡まったサナティナは、頭上に大きな赤紫色の蜘蛛がいるのを見つけて悲鳴を上げた。


「サナティナ!」

「危ない!」


助けに向かったオルティスにオーガが槍を投擲する。服に掠すりバランスを崩したオルティスは地面に落ち、追撃に振るわれた大剣を前転して避けると、三匹のオーガを連れて森の奥へ駆けていった。


一匹は執拗にサナティナを狙い、手に持った斧ではなく、手を伸ばして足を掴もうとしている。上から迫る赤紫蜘蛛はそんなオーガが気に入らないのか、赤紫の液体を吹き掛ける。

粘性があり糸を引く液体を顔に受けたオーガは、苦しみもがき暴れ始めた。


その隙にオリヴィアは常に肌身離さず持ち歩く、銅褐色の杯を掲げる。その杯は魔道具で、火の精霊を宿していた。

エルフが水や風の精霊と親和性が高いのに対し、ダークエルフのオリヴィアは火や土の精霊と親和性が高い。

水や風と違い火の精霊は特定の場所に集まり、なかなか出会う機会がないので携帯していた。


「火の精霊よ!力を示せ!」


杯からは真っ赤に燃える蜥蜴が顔を出し、サナティナに迫った赤紫蜘蛛に飛び掛かると、燃えながら落下していく。


サナティナは風の刃で蜘蛛の巣を断ち切り、落ちてくる蜘蛛を避けると、暴れていたオーガに足を掴まれてしまう。


――ドオォォォン!――


地面に叩きつけられた…と思った次の瞬間、大きな音と激しい揺れがオリヴィア達を襲い、オーガは太い腕の肘から先を残して消え、代わりに白い柱が立っていた。


見上げていくとその柱は大きな足だったようで、全身真っ白のツルリとした身体は蜥蜴人に似た生き物、頭には目鼻や耳がなく、小さな赤い唇が不自然についているだけだった。


その異様な姿を前にオリヴィアは呟く。


「…は、白皮」

――ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!――

「きゃー!」


唇からは真っ赤な蛇の舌がチロチロ覗く。オルティスの向かった先を向くと、サナティナが足元にいるのにもかかわらず全力疾走していった。


オリヴィアが慌てて助け起こし樹上に避難すると、目の前を肉塊が吹き飛んでいき、続いて青い顔したオルティスが戻ってきた。


「にっ逃げろ!巻き込まれるぞ!」


背後からは槍先に刺さったままのオーガを使って、黒樹を薙ぎ倒しながら向かってくる巨人の姿があった。




次々振るわれるオーク達の鉈を、ゴライオは大剣を斜めに構え盾のようにして受けきる。そして地面を強く踏み締めて押し返した。


四体のオークを弾き飛ばしたゴライオは、二匹のオークを両断し、地面を掘り返しながら振られた大剣はオーク達を吹き飛ばした。


トロルは転がってきた瀕死のオークを踏み潰しながら迫る。

右腕には赤黒い蛇腹状の籠手をしており、最後のオークと戦うゴライオに向けて手のひらを翳すと、無数の蝿が吹き出した。


「ヴーグの魔道具だ!アーシェ!――アーシェ!?」

「今ちょっとまずいってさ!」


アーシェの代わりにジェスターの氷炎がゴライオとオークを分断する。オークは蝿に包まれると絶叫し、蝿が空に消えた後には赤黒く汚れた骨と、僅かな肉だけが残るオークが現れて崩れ落ちた。


「「うおぉっ!?やばいぞ!?」」


トロルはブフブフと声を上げて笑っているようだ。

ゴライオ達に赤黒い籠手の手の平を向けた時、オーガが飛んできてトロルを巻き込み黒樹にぶつかる。


横を見るとオリヴィア達が向かって来ており安堵するが、次の瞬間には彼女達の背後に巨大な白い人影が現れた。


「「うおぉっ!?かなりやばいぞ!?」」


オリヴィア達を跨く足が地に着くと、爆発的な速度で迫り、さらに巨大化したように見える巨人。さすがのゴライオも身体が震え、反応できなかった。


巨人は何かの残骸が絡む大きな白槍を、トロルに覆い被さるオーガに投げつけ串刺しにする。

そのまま槍を掴んで二匹ごと森の奥に投げ入れた。

すると遠くからは何かの悲鳴が響き、再びドシン!ドシン!と、激しく地面を揺らしながら槍を追いかけていく。


後には踏み荒らされた広場と、身を寄せ合って倒れるゴライオ達が残った。




アーシェは赤紫蜘蛛を蹴った際に毒を受け、レインの治療を受けながら巨人が走り去るのを呆然と見ていた。

駆けてきたオリヴィア達は荒い息をしつつ、固まるゴライオ達を助け起こす。


「はぁ、はぁ…大丈夫?白皮は魔物や魔獣しか襲わないから心配ないわ」

「……あ?あ、あぁ。大丈夫だ」

「大丈夫じゃないわよ!迷宮産の眠弓は駄目になるわ、虫には刺されるわ、最悪よっ!」

「あ!ヴーグにとどめは刺したのか!?」


アーシェはハッとなって振り向くと、ぺしゃんこになり正視し難い残骸があった。


「…吐きそう」


レインは黙々と回復を掛け、吐き気まで中途半端に抑えられたアーシェは微妙な顔してお礼を言う。全員の無事を確認すると、新手が来ないうちに脱出路に入ることにした。


「脱出路を逆に進み迷宮路との境にある階段を上がれば、ギルドに出るわ。いきましょう」


オルティスが呼び寄せた精霊により倒木が退かされると、穴の下にはダイアウルフがうろうろしていた。


ゴライオの一撃で片付けると、脱出路をオリヴィアの先導で進み、階段の影に潜んでいた混合魔獣に襲撃された。


「キマイラかよ!?」

「ぐっ!一旦駆け抜けろ!」


ジェスターの首に獅子が噛み付く寸前でゴライオの大剣が割り込み、オルティスが起こした強風に怯んだ隙に逃げ延びる。オリヴィア達はそのまま階段前に陣取る混合魔獣を避け、横の通路に逃げ込むと風の流れを感じた。


「待って!…こっちよ!この先に精霊の導きがあったわ!」

「って東側にいってしまうんじゃないか?」

「…いってみよう。精霊の導きには助けられた事がある」


暫く進んだ先から喧騒と血の匂いが流れ込み、覚悟を決めたオリヴィア達は飛び出して行った。

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