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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第二章 世界樹篇
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レイジの新居

64


厚い雲が空を覆うお昼時、ヴィヴィを追って訓練所へ向かうレイジ。


普段なら訓練に励む冒険者達の姿が見られるはずが一人もおらず、教官達の姿もなかった。


探索者ギルド側は迷宮杯や大迷宮誕生に賑わっているのに対し、冒険者ギルド側は妙に静かで、買取所には多数の人影があった。


「なんだあれ?」

「見に行って見るにゃ♪」


シャケが一人で行ってしまうと、冒険者ギルドの入口にいたヴィヴィが頬を膨らませながら戻って来た。


「これが禍罪大迷宮表層を飛び回るガーゴイルか…普通のとずいぶん違うな?」

「中は空洞だぞ?この金属自体がガーゴイルなのか?」

「中身は倒したら消えたらしい。人造魔物の特長と一緒だな」

「金属は?魔法銀にダマスカス鋼の合金?お宝の塊が空を飛んでるのか…けどこれは厳しいなぁ」


口々に目の前の物を評価し合う冒険者達。その間を通って前へ出ると、買取所のど真ん中には二メートルを越える卵型をした金属の塊が転がっていた。


卵の上部側面にはガラス製の丸窓があり、下部には大小様々な金属パイプが緩やかに曲がりくねりながら延びていた。


「――!な、なぁこれって…」

「はい。地下要塞にあった水槽によく似ていますね」

「…知ってるの?…なるほど。これ以外にも沢山あるのね?」


ヴィヴィは興味深そうにフィーリアから話を聞くと、ギンカを見ながら思案している。


「倒したのは五人組みのシルバーランクパーティーにゃ」


シャケが指差した方向には、チェイスと話す男女五人がいて、いずれも見るからに手練れとわかる者達だった。


その内の一人は、まるでリースが成長したかと見紛う程よく似た女性で、明るい赤髪を肩で切り揃え勝ち気な目をした魔法使いだった。


「リースちゃんに似ていますね」

「あ?あぁ…それ以外にもどっかで見たような?」

「…もう行きましょ。このままギルド前に回れば不動産屋に近いわ」


ギンカは物欲しそうにガーゴイルの残骸を見ていたが、レイジ達が移動するとしっかり付いてきた。


「…結構知能が高いわね。あの銀の像もっとちゃんと調べておけばよかったわ」

「ん?ちょっと待って?前に見た事あんの!?」


ヴィヴィはレイジの問いには答えず、足早に不動産屋の建物に入っていく。




不動産屋は二階建てで、大きなガラス窓が多数使われた中がよく見える建物だった。


扉を開けると目の前にはヴィヴィと冒険者ギルド長のグラント、受付嬢メーリンが話をしていた。


「――いいんじゃないか?」

「お?メーリン?と…ギルドマスターさん?」

「レイジさん!左手治ったんですね…よかったぁ。もう無茶はしないでくださいよ?」


メーリンと軽く話していると、ヴィヴィとの話がまとまったのかグラントがジロジロと見てくる。


「…ふむ?そうは見えんがな…まぁいい。ちょっと来なさい」


不動産屋の主人の元までみんなで向かうと、カウンターの奥へ案内され、大きなテーブルと椅子が沢山ある会議室のような部屋に入った。


「ヴィヴィさんからだいたいの話は聞いた。七区にカンパニーの支店を構えたいそうだな?」

「え?そ、そうです」

「実はな…冒険者ギルドも七区に支部を作る予定なのだ。場所は迷宮前広場…迷宮の目の前だ」


グラントの話ではここ最近エルフの出入りが増えた事により、人種の冒険者との間でトラブルが増えているらしい。


特に見目麗しいエルフ女性を、頭の悪い低ランク冒険者達が仲間に引き入れようと狙っているのだそうだ。


このまま放っておくとエルフ達が森へ帰ってしまいかねないと、ギルド職員や商人達から話が上がり、第七迷宮区に二番目となる支部を作ることになったという。


広場には大樹迷宮が発見された当初に建てられた大きな建物があり、それを改装してレイジとカンパニーにその一角を貸してもいいと話した。


「え!?ギルド内にカンパニーの支店やオレの部屋を用意してらえるんですか?」

「もちろん条件はある。カンパニーには支部で使う魔道具類を安く卸してもらいたい。お前には指名依頼として、ギルド職員が揃うまでの間、夜間駐在員になってもらいたいのだ。なにぶん急な話でな、まだ人材も集まっていない。とりあえず明日からこのメーリンと数人を向かわせ、日中のみの営業とする予定だ」


急な話に動揺するレイジ、ヴィヴィは手っ取り早く決まっていいと勧めてくる。


みんなを見回すと逆に見つめ返され、自身の決定で決まるとわかると、逆になかなか踏ん切りがつかないレイジ。


「か、カンパニーに確認しないと…お?」


ガラス窓の外に人の頭ほどの白い球体が浮かんでおり、レイジが気付くとガラスに対して光を照射した。


「おっ!そーーーいっ!!」

「「!?」」

「いつまで待たせんだこのやろ~!へぶっ!」

「失礼しました。私はカンパニー副代表のセレンと申します。突然このような訪問をお許しください。冒険者ギルドマスター、グラント様」


ガラス窓にどこかの部屋にいるカンパニーの代表テルルと、セレンが映し出される。


悪態をつくテルルをセレンが張り倒して画面から消えると、何事もなかったようにグラントに挨拶をした。


「あ、あぁ…これはいったい?」

「旧文明の遺産ですわ。ただあまり稼働時間がありませんので、要件だけお伝えします。カンパニーの支店についてはレイジ様に一任しますので、よろしくお願いいたします」

「え~!余所と一緒なんて!…なら間取りはウチが九割よ!私の部屋は最上階じゃなぎゃ!」

「――レイジ様。明日には修復も終わるようですので、キッカがそちらに向かいます。ではまた後日に…失礼しました」


唐突に映像が途切れ、白い球体は上昇していくと西へ飛んでいく。外では変なゴーレムがいると騒ぎになっていて、衛士が必死に追っていくが途中で諦めていた。


「…あ~問題ないみたいなんで、よろしくお願いします」

「そ、そうか…よし。ではメーリン。手続きをしてくれ。それと彼らを支部予定地へ案内し、部屋割り等決めたら六区の親方に連絡しておいてくれ」


グラントは話終えると一息つき疲れた顔をする。


「ふぅ。休む間もないな…そう言えばお前もロメロを捕縛したパーティーの一人だったか?その後の話は聞いたか?…ふむ、ロメロは神聖教国に送り返されることになった」

「え!?ここで裁けないんですか?」


グラントは都市議会で決まった話をレイジに聞かせる。


ロメロの罪状は誘拐から殺人まで多岐にわたり、刑罰は迷宮都市で一番重い永久奉仕活動が妥当と決まったのだが、教会の司教の地位にいた男なので、裁きは神聖教国の神罰によって行うと教会から通達があり、引き渡したそうだ。


「まぁ死刑のないここより、神聖教国の神罰の方が酷いらしいからな。ロメロもここで裁いてくれと喚いていたそうだ」


そしてロメロの一件が片付くと、今度は昨夜に起きた帝国の上級貴族殺害の事件で、帝国から上級騎士が来ると言う。


「下手をすると帝国と戦争になる。とトリスは青い顔をしていたが…他にも闇ギルドや禍罪大迷宮など問題は山積みなのだ!いっそ天人に頼んで更地にしてもら――いたたたっ!」

「…バカなこと言わないで。天人の中には真に受けて人がいてもかまわず力を行使する方もいるわ。冗談でもやめなさい」


ヴィヴィに杖で小突かれながら、追い出される様にしてグラントは帰っていき、メーリンは不動産屋の主人と何かの書類作成をしている。


シャケはずっとゴーレムの飛んでいった先を見上げながら興奮していて、ギンカはなにもせずぼーっとしていた。


「凄いにゃ~♪あんなゴーレム見たことないにゃ。欲しいにゃ~」

「ゴーレムの維持費は個人で賄えるものじゃないらしいですよ」

「…それよりテルルって子もマリブランドの愛用者だったのね」

「…へ!?マリブランドぉ?それってそのゴスロっ!」


思いもよらない単語を聞いてレイジが聞き返すと、ヴィヴィがニヤリ顔をした。


「…別にあなたが異世界人だという事は、私もフィーリアも知ってるのよ。ただマリと同じ異世界の住人とは知らなかったわ」

「――知ってたのか!?な、何者なんだよ…」

「…ふふっ。後でフィーリアから教えてもらいなさい。彼女が来るわよ」




メーリンの用事が終わって七区の迷宮前広場に来ると、広場の南側には年代物の大きな平屋があった。


幾度となく改装がされた形跡があったが、倉庫代わりにされていただけあって丈夫ではあるようだった。


「明日から六区の職人さんが改装してくださる予定です。レイジさんは事務室の隣にある、好きな部屋を使ってください」

「カンパニーの支店はどうするか…」


ここに設ける支部は素材の買取とギルド本部への連絡だけなので、それほど広くなくていいそうだ。


レイジはカウンターを仕切らず奥の事務室を分けて、裏手を素材置き場と作業場にする簡単な間取りを提案する。その後ギンカを連れて事務所だった場所の隣の部屋へ入った。


「今夜からこの部屋にいてもらうけど大丈夫か?」


ギンカはコクコクと頷いた後、なにもない部屋の隅に寄り、床に座るかのように腰を落として休む。

その後、メーリンが六区へ向かうとフィーリアが帽子を脱ぎ、白金の髪がこぼれると共に尖った耳が現れてレイジが驚く。


「隠していてごめんなさい。私は大森林にあるエルフの里からきた天人ウィンディア様の使徒です。ヴィヴィさんも役割が違いますが、迷宮都市で活動している使徒ですよ」


(ハイエルフ!?使徒だって!?カッコいいな…何番目の使徒?)


「…私達は天人から色々と話を聞いてるからあなたの事も知っていたのよ。それにヤマト名で黒目黒髪は異世界の存在を知る者なら誰でも異世界人を疑うわ」


簡単にバレるとわかりガックリと肩を落とすレンジ。

その後、少し話をしてからヴィヴィ達は帰っていき、明日の昼に禍罪大迷宮へ様子見に行く事にした。

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