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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第一章 迷宮杯篇
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59


賞品を選び終えて地下から上がると、大勢の探索者から讃えられる。ルーティ達は疲れた顔をしながらも手を振って答え、ゆっくり出口に向かった。


その後ろではヴィヴィと話をしていたバーバラが、一旦宿へ帰り使いの者と話をしてくると言う。


「すぐに戻ります」

「…気をつけてね」


西の商店街へ消えていくバーバラを見送るルーティ。ヴィヴィが抜き身の短剣を持っていることに気付く。


「それはバーバラが選んだ魔道具ね?」

「…そうよ。彼女の決意の証」


ヴィヴィは悲しいような、寂しいような顔をしていた。




雷火と別れて冒険者ギルドへ移動する一行。

日はだいぶ傾き、訓練所に冒険者の姿はほとんどない。

孤児院に着く頃には夜になりそうで、暗闇を恐れるフラウを皆心配したが、念話に夢中で気付いていないようだった。


フラウはずっとリースと手を繋ぎ、チラチラと様子を見ながら歩いている。二人とも左耳にお揃いの銀の耳飾りをしていて、カリム達はとても羨ましがったが、フラウの状態を考えて、ルーティが我慢させていた。


(今度西側のお店へ遊びに行こう。良さそうな帽子を見たんだ)

「え?あの辺りのお店は高いですよ?」

(リース?)

「あっ…」

(む、難しいですね…)


最初、リースは魔道具の扱いに慣れず声を出して答えていた。

その度フラウに注意され、念話で話すよう努めるていると、考えている事まで伝わってしまう事に気付き、恥ずかしがった。


次第にリースの顔は曇っていき、ルーティ達が気を利かせて話題を振る。しかしフラウが見るからに不機嫌そうな顔をするので、それ以降話し掛けられずにいた。


(迷宮で気温調整の魔法がかかった外套を手に入れたんだ、帰ったら着せてあげよう)

(…嬉しいですけど、他の子の前では着ないですよ?後この耳飾りはアニィ達にも使わせてあげてもいいですか?)

(耳飾りはだめ!私達に必要なんだ…外套ならいい)

(ありがとうございます)

(今夜は一緒に寝よう。いや今夜からは緒に――)

(――え!?そ、それはちょっと…)

(嫌?…マール達とは寝てるじゃないか)

(違いますよ!部屋は一緒ですが――)

(…私のこと嫌い?)

(どうしてそうなるんですか…)




冒険者ギルドに着くと酒場の方では五人の男達が号泣し、それをつまみに他の冒険者達が盛り上がっていた。

その様子を手すりにもたれ掛かりながら見て笑っている、黒髪の青年と女性がいた。


「レイジ?レイジ~!」

「へ?ぎゃあぁぁ!」


背後から飛び掛かってきたシャケによって、背骨を軋ませるレイジ。ルーティ達も近づいていくと、左手がない事に気付く。


「あんたその手…」

「うぅ?あ、帰ってきてたのか!じゃあ到達したってのルーティさん達か」

「それより手がないにゃ!」

「あ、あぁ…ちっとな…」


ルーティ達が悲しむ中、モルトが訳を話し盛大に叱られるレイジ。

その横ではヴィヴィが驚いた顔してフィーリアと何事かを話している。そこへギルド二階からギルドマスターのグラントと用心棒のチェイス、市長のトリスが降りてくると、モルトを見つけて話し掛ける。


「モルトさん、ロメロですが…」

「やっぱりそうなるか~」


フラウは進まなくなった皆に不満を募らせ、リースに幼い頃の話をせがんだ。


(フラウさん。レイジさん気になりませんか?左手を失ってしまったんです…私のせいで…)

(レイジ?…リースのせいじゃない。弱いくせに無謀な事するからわる――)

(――な、なにを言ってるですか!?どうしてそんな事…前はもっと人の痛みをわかってくれたじゃないですか!)

(…わかってる。私ほどわかってる者はいない)


そう言うと皆に囲まれていたレイジに近づき左腕を掴む。


「へ?どうし――!?」


フィーリアと話をしていたヴィヴィが、慌てて止めようとするが間に合わず――


「あ?あぁ!?あぁぁー!?」


――レイジは目の前で自身の左手が急速に再生されていくのを見た。


それは恐ろしいもので骨が復元していくと、後から細胞がブクブクと泡立ち、血管が伸び、神経が繋がっていく。その様はダイレクトに脳に伝わり、言い知れぬ感覚を覚えた。


「う!?おぇぇぇぇ!」


それを間近で見たリオは吐いてしまい、アニィも気絶してしまう。他の子も衝撃的な光景に固まり顔を青くした。


酒場はシンと静まり返り、モルトやルーティ達が慌てて子供らの介抱をする。フラウが手を離すとレイジは受け身も取らずに後ろへ倒れた。


「は?――ぐっふ!?…あ?あれ?」

「レイジさん!?大丈夫ですか?無理に立たないでください」

「…やってしまったわね」


「フ、フラウさん!?なにを…」

(…?直した。これで大丈――)

「バカーー!」


リースは叫ぶと耳飾りを外してフラウに叩きつけた。

そのまま起き上がろうともがくレイジの様子を見に行ってしまう。

ひどく動揺した様子のフラウは、リースの肩に触れるも拒絶された。


「…!まっ待っ――!?」


ヴィヴィが異常に気付き止めようとするが、腰に下げていた抜き身の短剣が粉々に砕け散る。そこへ外から自警団員の男が飛び込んできて叫んだ。


「市長!大変です!西の高級宿街で帝国の上級貴族の方が殺害されました!」

「――な、何だって!?」

「犯人のバーバラという女奴隷は死亡!黒髪の男が女から奪った剣を手に、四区の内郭門を突破し逃亡しました!」


「「――!!」」


その時、フラウは糸が切れたように倒れ、レイジが目を見開き、報告を聞いたヴィヴィが驚愕する。


外はいつの間にか暗くなり、嫌な風が吹き始めていた。

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