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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第一章 迷宮杯篇
55/169

要塞突入

54


レイジの目の前には、ファンタジー世界には不釣り合いな卵型タンクの列と、そこから伸びるパイプ、唸りを上げるボックスが無数にあった。


(なんだここ?こんな精密なタンクとかパイプってこの世界の文明レベルで出来る物なのか?それにしても…なんだかこの光景は見たことあるような…)


モルト達が建ち並ぶタンクにゆっくり近づくと、先頭のチェイスが警告を発する。


「――!?中に何かいる!」


卵型タンクの上部には丸窓が付いており、内部が覗けたのだが、黒い液体で満たされていて、よく見えなかった。

レイジが顔を近づけて睨むようにして覗き込むと、何かの肉片が泡と共に浮上してきた。


(――なっなんだ!?…ま、まさか…これって例のバイオなやつか!?)


昔見た映画を思い出し鳥肌が立つのを感じるレイジ。背後からフィーリアが声を掛けてくれたが、開けようとしているチェイスを見て慌てて止める。


「あっ開けちゃだめです!伝染する病気…あっ毒かも」

「伝染だと!?病気になる毒なのか!?」

「…レイジ君は何か心当たりがあるようだね」


モルトは目を細め、チェイスが焦った感じに聞いてくる。


(やっべ!迂闊すぎだろオレ!どうする――!)


とタンクの影から襲い掛かってくる人影を見て、反射的に手裏剣を投げつけると、黒外套の男が胸に受けて倒れた。


「一旦ここから離れろ!」


チェイスとモルトが狭いタンクの間で黒外套の襲撃を凌ぎ、レイジとフィーリアが外に出ると、タンクの列を左から回り込んでくる魔獣の姿が見えた。


デイズがいつの間にか階段近くまで戻っていて、すぐ側には三脚で自立する、大型バイクと対物ライフルを足したような物があった。


(あれが!…なんか違うぞ?銃口がない?)


ダイアウルフの群れが迫る中、デイズが魔銃に半身抱きつき照準を合わせて引き金を蹴る。光弾が撃ち出され一匹の頭を吹き飛ばした。


レイジが苦無と鞘を両手で構えると、フィーリアが横に並び、手をかざして何かを呟く。

突風が起こり恐狼達を巻き上げ地面へ叩きつけた。


「――今です!」


呆気にとられて見ていると、レイピアを抜き放ちとどめを刺しにいくフィーリア。慌てて追いかけ近くで身を起こした恐狼の頭を狙って蹴り上げる。

レイジの右足が頭を捉えると首が折れ、ニ匹目に飛び掛かって首を絞め上げれば、簡単にへし折た。

フィーリアはレイピアを片手に、数匹の恐狼の間を舞うようにして駆け抜け、瞬く間に倒していった。


(フラウさんみたいだ…)


デイズは立て続けに発砲して、迫る群れを近づく前に倒しきる。そこへ魔獣の群れとは反対側から冒険者達が合流すると、モルトに中央の黒い鉄板で補強された要塞が円形の建物である事、反対側の南口から魔獣が次々現れている事を伝えた。


「君は南を頼むよ。私達はあの水槽を避けて突っ切り、要塞に突破口を作る」


指示を受けたデイズは魔銃を軽々と担ぎ上げ、走っていく。

それを間近で見せられ驚愕するレイジを他所に、冒険者達は魔獣達が来た方向へ向かった。


チェイスを先頭にタンクの間を駆け抜けると、要塞の反対側では歓声があがり、雄叫びと共に黒い煙が立ち登る。

数人の黒外套の死体を越え要塞の壁に着くと、モルトが目線の高さで剣を構えて集中する。


「――ハッ!」


裂帛の声と共に突き出されたごく普通の剣は、ストンと刀身の根本まで埋まり、ゆっくりとずらし始めると青白い火花を散らしながら、鋼鉄製の板金を切り裂いていく。


(えー!!見たことあるよ!モルトさん!手を振ると敵が吹っ飛んだり言うこと聞くヤツじゃん!)


実際そんな力はないが知らないレイジは、口をあんぐりと開けて絶句する。そんな彼を面白そうに眺めるフィーリア。

板金ごと分厚い壁をアーチ状にくり抜くと、チェイスが素早く中へ入り確認する。


「――倉庫だな…奥から音がする」

「合図だしたら…とりあえず左回りにいこうか」


フィーリアが頭上に手をかざし光が放たれると、少しして強く輝いた。

小部屋には建材が無造作に積まれているだけで特にめぼしいものはなく、チェイスが扉を確認し勢いよく開け放って、モルトと共に飛び出していく。


扉の先は広い空間になっていて、物音の正体は死霊と化した闇ギルドの構成員らしき男と、その奥には無数のゴブリンやオークなどの魔物の死霊達がいた。


「――謀られたか!下がれ!」

「――私が!」


部屋の入口で死霊となった黒髪の構成員を蹴り倒すチェイス。前に出たフィーリアが光を放ち、ゴブリン数匹を灰にする。


「う~ん、一階部分は全て死霊かな?よく集めたもんだ。とりあえず減らしていくしかないね」


モルトとチェイスは狭い入口を利用し、ひたすら剣を振るう。剣により切られた死霊は黒い靄をだして灰になるが、フィーリアが時折放つ光は黒い靄を出さずに一気に数を減らした。


レイジがすぐ横で聞こえた音に振り返ると、建材が積まれた一角が崩れ、人や魔物の死霊が現れた。


(おいおいおい!まんまあの映画じゃねぇか!?こういうのはテレビの中だけで充分だっての!)


床に散った建材を拾っては投げ、拾っては投げる。

崩れた壁の奥のゴブリンが吹き飛び、潰れて重なっていくと、隙間が狭まり死霊達が入ってこれなくなった。


「いいぞ~レイジ君。その調子だ」


と、モルトが言うが反対側の壁も崩れだし、慌てて外まで避難する。


「壁が脆くしてあるのか?その割には外壁はしっかりしていたが…」


外壁のアーチ状の入口で再び数を減らす作業に掛かる。




少しすると死霊の波が収まり、最後の一匹をチェイスが青い光を帯びた剣で斬り倒す。その後、内部で大きな音がしている事に気付いた。


「今度は大物か…いこう」


モルト達に斬られた死霊はいつの間にか全て灰になったようで、床に積もったそれらを見たレイジは鳥肌が立つ。

倉庫の先は通路があり円形の中庭に繋がっていて、左右には多数の崩れた壁があった。

全て滅茶苦茶に汚れていて、悪臭を放っている。


「…本来は中庭に侵入した者が罠を発動させるはずだったようだな」


鼻を覆い調べて回るチェイス。中庭には美しかっただろう芝生があるが、今は踏み荒らされ赤黒く汚れている。中心には墓標のような黒い石碑があったが、モルト達は一瞥しただけで他を調べに行ってしまった。


そんな彼らを不審に思いながらもレイジは碑石を見て驚く。


(――な、なんで日本語…ここに罪を記す?異界の地に流れ着き、宛もなくさ迷い歩いた私、伊ヶ崎八雲は邪悪な思想を持つ者達に捕まり人の道を違えた。死霊を使った禁忌の力の復活に加担し、この地に非人道的な施設を築く。大勢の被検体を使った効率的な瘴石精練…管を張り巡らせた転化実験…腐液抽出…遠心分離…段階濃縮…あぁ…なんてこった…)


レイジは力なく膝をつき、うなだれる。


「レイジさん!?大丈夫ですか?」


(日本人が加担してた…現代知識が悪用された…なんて言っても伝わらない。一定年代からの日本に関する大半の事が禁啓言語だ。これ見ても読めねぇからモルトさん達は…なんで闇ギルドの奴らは――?)


モルト達が向かった先では争うような音がし始め、正面入口の方角では冒険者達が迫る気配がする。

石碑の下の方に視線がいくと、走り書きの日本語があり、レイジは目を見開いた。


「――大丈夫だ。オレはちょっと行くところができたから、また後で」

「え!?いけません!1人で行っては!」


レイジは走り出し、モルト達とは逆に中庭を出て進むと小さな扉があった。中は薄暗く、急な階段が続いている。


「待ってくだ――!」


階段を飛び降りて下ると、急に病院の廊下のような場所に出る。天井や壁、床は白く清潔で明るい。

しかし何かがすえたような匂いと、左右の部屋の入口にはしっかりとした鉄格子が嵌まり、ここが病院として存在している訳ではないとわかる。


中を覗くと家具らしき物は何もなく、汚れた箱とボロ布だけがあった。

一つ一つ確認していくとフィーリアが追い付いてきて、肩を掴まれるのと、その存在を目にしたのはちょうど同じタイミングだった。


「レイジさ――」


フィーリアも気づいたのか、途中で言葉を止め中を見て驚いている。


そこには黒髪の青年が全裸で倒れていた。


痩せ細った身体には真新しい傷や古い傷があり、浅い呼吸を繰り返している。


「誘拐された人でしょうか?助けましょう」

「た、たす…けて…」


横の檻からも女性の声がして、フィーリアが檻の鍵を探すが見つからなかった。


「壊せるか?たぶん鍵はここを管理してる奴が持ってる」

「はい、なんと――」

「だれかいるのぉ?」


一番奥の手術室を思わせる入口から女の声がする。

その声はひどく、ガマガエルを連想させるもので、短い言葉からは言い知れない邪悪な気配がした。


レイジが分厚い扉を開けて中へ入ると、より一層、血の匂いが増し、部屋の中央には手術台があった。


台の上には千切ってバラバラにされたと思われる、真っ赤に染まった女の死体があった。


横にはオークのような体格の白衣を着た醜い女がいて、手に持った大きなペンチからは血が滴っている。


「あ、あぁ…」


フィーリアが顔を青くして目の前の凄惨な光景に恐怖する。


「お前達は誰だい?新しい患者かしら?グブブッ♪まぁ!綺麗な子!それに黒髪黒目…素敵だわぁ。あの男にも飽きてきたのよね。すぐ果ててしまうのよ?」

「黙れ豚が!聞きたいことがあったが…殺してやる!」


レイジが飛び掛かろうと一歩踏み出すと、女がすぐ横の壁にあったスイッチを入れる。すると奥の扉から出てきたのは黒光りする金属人形で、身長百七十くらいの細めの身体をしていた。


「自動人形!?」


フィーリアが今までにない驚愕の表情を見せる。

レイジは焦った様子の彼女と、黒鉄の人形を交互に見比べ覚悟を決める。

少しずつ下がり共闘する振りして、フィーリアを部屋の外へ突き飛ばした。


「――な、なにを!?レイジさん!だめです!」

「フィーリア!その2人を頼んだぞ!」


扉についていた鍵を掛けて前を見ると、自動人形がガクガクしながら近づいてくる。


「あらぁ?あなた1人でこれを相手にするのぉ?旧文明の遺産、古代人の叡知の結晶よ?グブブブ♪まぁいいわ。殺さないよう痛めつけなさい」


レイジは苦無を握り、鞘を構える。


(もうオレの勝手な行動で誰かを巻き込まない!死ぬならオレ一人だ!だがこいつは必ず殺す!)


自動人形は鋭く尖った指先を胸の前に構え、レイジに迫る。

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