表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第一章 迷宮杯篇
23/169

変化

22


結局レイジは一晩中目を覚まさなかった。

翌朝には自身の脚で孤児院へ帰り、モルトや子供達に心配をかけたことを謝罪する。その顔は無茶をする前とどこか違っていて、清々しくまっすぐ前を見ていた。


モルトはおかえりとしか声を掛けず、朝からプンプンしながら訪れたルーティも、レイジと面と向かって会うと頭を軽くはたくだけだった。


リースにはわからなかったが、いつも興味なさそうにしていたフラウの、レイジを見る目が少し変わったように感じていた。




(変な夢を見たけど、結局何も変わった感じはしないな。まぁここがそんな優しい世界だとはもう思ってないけど)


レイジは部屋で身体の状態を確かめている。魔法のおかげで、骨折した右手首や打撲は完治していた。

気を失っていた間の事はルーティ達から伝えられ、ギルドで自分を負かした獣人の男に助けられたと聞いていた。


「迷宮杯かぁ…やめよう。オレはオレにできることからしよう」


顔を両手で叩き気合いを入れると、身支度をして部屋を後にした。




ルーティはアレクやモルトと居間で話し合っていた。


「レイジが助かったのは、本当に運が良かっただけ。このままではいつか死ぬわ」

「訓練所で聞いたところ、教官は指導を断ったみたいです」

「うーん、彼が断ったとなると…レイジ君の何かが指導をするに値しなかったんだろうね。たとえ素質のないものでも見捨てるようなことはしない人だから」


そこへレイジが二階から降りて来る。全員から注目されたが、以前のように狼狽えることもなく、姿勢を正すと敬礼をした。


「訓練所まで行ってきます!」


モルト達が微妙な表情を浮かべてお互いを窺い合う中、レイジは笑いながら続ける。


「もう無茶はしませんって!」

「アハハッ、わかった。いってらっしゃい」

「信用できないわ!私もついてく!」

「じゃあレイジ君がちゃんと訓練所に着いたのを確認したら、予定通り迷宮杯に参加しにいきましょう。レイジ君はいいんだね?」

「あぁ、オレはいかない」

「まぁ後から追いかけて来るのもいいよ」


迷宮杯に細かいルールはなく、誰でも参加できた。

開催期限も特になく、四区の場合も魔物が狩り尽くされたと判断されるまで続いていた。


今回ルーティとアレク、フラウが参加予定だった。

最初フラウは興味がなく行かないと言っていたが、リースがルーティ達を助けてほしいと頼み込み、渋々了承したのだ。


(私が離れていれば、ここへ氷の精霊が現れる事はないか…)




フラウ達一行が中央区へ着くと、街は大賑わいだった。

普段見ない芸を披露するものや、遠い国の名産品を売る者、ちょっと贅沢な食材を使った屋台等様々だ。


「迷宮杯の開催式はお昼頃からよ。それと第三迷宮の最深部までは数日かかるわ」

「前半はみんな迷宮の変化などを確認する為、日帰りで潜るはずです」

「迷宮内で泊まるのか?」

「そうよ。大丈夫、三区にいる知り合いも一緒に潜るから準備は任せてあるわ」


(うおぉ行きてぇ…いやいやだめだ。もう迷うもんか…うぅ)


冒険者ギルドと探索者ギルドの間にある訓練所に着くと、ガルドは獣人と話をしていた。


「―――ほぅ…」

「ガルドさ…ガルド教官!お願いがあり来ました!」

「…なんだ?」

「間抜けがきたにゃ~♪」

「おいシャケ、やめろって」

「もう一度…手合わせしてください!」


ガルドはてっきり指導を望みに来たと思っていたのか、多少驚いた様子を見せる。


「…いいだろう、好きな得物を使え」


訓練所の一角で対峙するレイジとガルド。

ガルドは以前と変わらず木剣だったが、レイジは木製の短剣を手に取っていた。


「お前は槍を使うんじゃなかったのか?」

「オレは武器を使ったことがほとんどないです。今は手元にある短剣を使い慣れるまで他は使いません」

「…まぁいい。こい!」


レイジは脚を肩幅に拡げ腰を落として構える。

右手には逆手に持った短剣、左手は少し前に出した。


「……フゥーー…」

(もうオレはオレに期待しない。無い物ねだりはしない。目を逸らさない。逃げ道はないんだ。この手の届く範囲がオレの世界、オレの現実だ!)


深く息を吐き、吸うと顎を引く。その様子を黙って見ていたガルドは内心動揺していた。


(…この変化はなんだ?素人がたった数日でこれほど変われるものか?)


レイジは大きく踏み出すのではなく、地を滑るように踏み出して、ガルドの動きに速やかに反応する。

ガルドが右下から斬り上げると、目を見開きしっかりと捉え続け、右手に持った短剣を胸の前で構える。木剣を受ける間際、身体ごと捻り左へ受け流した。


「っ!」

「おぉ?」


ライガ達が驚く声にも反応しないで、外へ払った右手の短剣でガルドの顔を殴るように突き出した。


「…悪くはない」


ガルドは木剣の根本で短剣を受け止めると、一歩前へ踏み出して体ごと当てにいく。レイジはすぐに身を引き、その動きの中でガルドの右腕を掴み引っ張る。


「むっ」

「うぐっ」


ガルドは右脇腹に迫る短剣を、体格差に物を言わせて捻って避けると、木剣をレイジの首元に当て軽く引き下がった。


「…明日から二の鐘がなる前にここにこい!」

「は…はい!よろしくお願いします!」


ルーティ達は満足そうに頷き、ライガ達もどこか嬉しげだ。


「…つまんにゃいにゃ」

「おまっ、性格悪くなってるぞ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ