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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第一章 迷宮杯篇
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予定

15



顔色が悪いフラウとレイジは、それぞれ割り当てられた部屋で休む事にした。

部屋が決まっていなかったレイジには、子供達が午前中に掃除を済ませた二階の物置部屋が用意されたが、奥行きはあれど大の字では寝られないほど横幅が狭かった。


しかし個室を用意してもらえただけ良かったと、皆にお礼を言い部屋へ入って横になる。

居間の奥。ルーティ達が寝泊まりをしていたところを覗けば、そこは部屋ではなく、大人二人が身を寄せあって横になれる程度のスペースしかなかったからだ。


(神様は名前がない訳じゃなく知ることができないだって?しかも伝えられないとか…みんなどうやって知ったんだよ?ていうか適当に新しく付ければいいじゃないか…あぁ力がどうのって。ファンタジー過ぎるだろ…)


狭い物置部屋で何度も寝返りをうちながら悩むレイジ。階下から聞こえる子供のようなモルトの笑い声に、モルトが五十代と言うルーティの話は偽りだと決めつける。


(ふぅ…とりあえず明日の勉強ってのは重要そうだ。後はルーティ達の言ってた心気ってやつか?適性がないだけで使えない訳じゃないだろ?モルトさんはこの都市一番の使い手だとすると、ここに居させてもらえると助かるな。けど生活の苦しい孤児院に居候ってのはどうなんだ…)


レイジはここにきてから恵んでもらってばかりいる事に心苦しさがあった。

異世界の金の稼ぎ方など、その手の小説でよくある冒険者稼業や知識チートくらいしか思い付かなかったが、残念なことに料理はできず石鹸だの酒だのを作る元手もない。


(当面は冒険者ギルドで薬草採取っていうのが定番だよな…)




二階でレイジがゴロゴロしている頃、フラウは当然の様に部屋へ連れ込んだリースと共にいた。


「フラウさん大丈夫ですか?どこか苦しいですか?」

「大丈夫だ」


ベッドの隣に腰掛けたリースが、俯くフラウの顔を心配そうに覗き込む。フラウは心配させまいと顔を上げ、その明るい赤髪を指で弄りながら先ほどの事を思い出していた。


(なぜ気付かなかった?モルトの言う通り、知識や情報には制限がかかっている。資格なきものに世界の真実を知られない為に。私の中途半端な知識もそれが原因なのだろう。何か…大切な事を忘れているような…)


されるがままのリースは少し赤い顔をしていて、時折黙り込んだままのフラウの様子をチラチラと見ている。そのうち背中や肩を撫で始めたフラウは悩み事などすっかり忘れ、目の前の少女の反応に夢中になっていた。


どこまで触れて良いものかを探る様な手に、次第にそわそわし始めるリース。ひんやりした指先が耳を掠めると、弾かれた様に立ち上がった。

ちょうどその時玄関の扉が開く音がして、孤児院の薄い壁越しにルーティの声がする。


「2人はどうしたの?」

「ちょっとした認識の変化でね。疲れてしまったようだよ」

「ルーティさん菓子パンありますよ。どうですか?」

「え?…私も買ってきたよ…」

「あっ…」

「夕食は菓子パンだねぇ!アハハハハッ!」


その話に大袈裟に喜ぶリースがチラリと振り返れば、無表情ながらどこか不満げなフラウが、所在なげに手を下ろした。




夕食を終えたレイジや子供達はお湯で身体を拭いさっぱりすると、湯冷めしないようそのまま藁のベッドに潜り込んだ。


「フラウさんの体調はどう?」

「わからない…あまり顔に出る人じゃないから」

「ごはんたべないからだよ」

「そうだね」


アニィが今朝の食事のことを指摘すると、リースは苦笑するしかなかった。




「モルトさん。3区の坑道迷宮が攻略されたとして、ギルドは迷宮杯の開催を宣言していました」


余り物の菓子パンをかじりながら、モルトに昼の一件を話すルーティとアレク。


「…なるほどね。北の森に魔獣が多く見られたのは、北に位置する3区の迷宮が攻略されたからか」

「3日後の迷宮杯までレイジ達を連れて冒険者ギルドの依頼をしようと思います。それと朝夕には顔を出しますね」

「迷惑をかけるね。けどあの男達は最近目撃されていないようだから大丈夫かもしれないよ」


孤児院に嫌がらせをしていた四人組は、フラウ達が迷宮区に来た日から姿を見せていなかった。


「あっルーティさん。僕もお手伝いしますよ」

「アレク?いいの?今なら迷宮杯の予行訓練とかで魔法使いは重宝されるわよ?」

「魔法薬の材料も採取したいので大丈夫です」


アレクは魔法学園の魔法士過程時代から魔法薬の調合で安定した稼ぎがあった。その上、魔法使いとしても優秀で、学園には彼の帰りを首を長くして待っている大魔導師がいるとルーティは聞いている。


「そう…ところでモルトさん。フラウをどう思いますか?」

「んん?フラウさんは美人だねぇ。お嫁さんに欲しいな」

「はい?違いますよっ!強さとかです。探索者ギルドの一件やあの装備からして普通じゃないですよね?」

「うーん…東の妖精里の先。エルフが住まう世界樹の森にはハイエルフが住んでいるそうだよ。そのハーフかもしれないね」

「僕は学士過程を終える前に、魔素儀式を受けに行った際お会いしました。と言っても遠目にですが…」

「ハイエルフとのハーフは聞いたことないけど、もしいるならばフラウさんのような感じなのかなぁ?」




翌日。冬の寒さが厳しい早朝にフラウは目を覚ました。窓に変化はなく朝日が差し込み始めている。

一瞥するだけで身支度を済ませ廊下へ出ると、子供達が外から入ってきた。


「おはようございます!お水汲んでありますよ」

「リー…ス…」


リースはそのまま居間へ行ってしまい、一人とぼとぼと玄関を出ていく。外にはモルトとレイジがいて、何事かを相談していた。


「モルトさん。オレこのまま居候は悪いので、冒険者ギルドの仕事をしようと思います。まだ全然戦えないんですけど鍛えてもらえないですか?」

「うーん協力してあげたいけど、今ちょっと忙しくてね。ギルドの訓練所にガルドって男がいるんだけど、一度会ってるよね?彼に頼んでみて。両ギルドで一番の戦闘教官だよ」

「うげっ、あの人ですか…」

「大丈夫大丈夫!一流の冒険者で今まで何人もの新人冒険者達を一人前にしてきた人だから。頑張って!」




フラウ達は朝食後勉強をし、午後一から冒険者ギルドの依頼をする事になった。

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