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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第一章 迷宮杯篇
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ギルド登録

11


中央区へ入ってまず驚く事は、整然とした街並みだ。

七区の舗装されていない曲がりくねった道とは違い、平らな敷石が引き詰められた大通りは、馬車が余裕をもって通れるほどの道幅があり、左右に街路樹と街灯まで備えられている。

見える限りの建物も、木組みの二階建てや石造りの建物まであり、別の街のようだ。

そして落ち葉やゴミ等は一切見られず、ついさっきまで誰かが清掃でもしていたかのようだった。


行き交う人々の装いは、七区の人がボロい麻服だったのに対し、真新しい綿の服や羊毛、革の服が多い。

道端の屋台では革製の装備を着た冒険者風の男達が、焼肉をパンで挟んだ軽食を購入している。屋台のおじさんもぽっちゃりしていて顔色も良く、客を呼び込む声には張りがあった。


そういった点から中央区に住む人々の豊かさが伺え、誰もが小綺麗で健康的な者達で賑わっていた。


「ぜんっぜん違うな!ゴミ1つないし…なんで?」


レイジがルーティに質問すると、その横のロサナが答える。


「市長から各孤児院へゴミ掃除の仕事が優先的に出されていて、希望する子供達が朝早くに掃除しているの。僅かでも稼ぎがあるのとないのでは違うから…建物などの違いは市の方針で、迷宮区は…過去に起きた事件からあまり力を入れていないのよ」

「事件?」


ルーティがロサナの様子を窺い、彼女は何でもないといった風に首を振ると話し始めた。


昔、七つある迷宮の内、四つ目の迷宮で沢山の人が亡くなる事件――迷宮異変と呼ばれる出来事があった。

迷宮は螺旋迷宮と呼ばれ、出現する魔物は弱く数が少なかったので、潜っても一日の稼ぎが七つの迷宮の中で一番少なかった。

その為探索者達にとって人気のない迷宮となり、必然的に潜る人も少なくなった。


ある日、大地が激しく揺れ迷宮の入口からは夥しい数の魔物が溢れだした。

前例のない出来事に少なくない数の犠牲者が出て、ロサナの父親も生活弱者への巡回治療中に巻き込まれたそうだ。


その後、探索者達は当時の市長の号令の元に猛然と攻略に乗り出し、螺旋迷宮からは迷宮核が取り外されて完全攻略宣言がなされた。

そして裕福な人々が住まう中央と各迷宮の間には強固な壁が建設され、異変により失われる可能性が高い迷宮周辺より、迷宮のない中央の発展を優先するようになったという。


「あ~…すみません」

「いえ。もう昔のことですし、迷宮の傍らで生きる者としての心構えはしています」


気まずい空気に頭を下げるレイジ。その肩を力強く叩き前を指差すルーティ。


「レイジ、フラウ、着いたよ!」


大通りを真っ直ぐ進むと、突き当たりには三階建ての建物が見えてくる。建物は赤いレンガを積み上げたもので、二階から上の窓には高級な窓ガラスが使用されていた。

馬車は厳つい男達が出入りしている正面を避けて裏へ回り、開けた場所に出る。石畳の上には何体かの魔獣が解体されて仕分けられていた。


「うへー気色悪い…」

「コダルさん、ここで大丈夫です。ありがとうございました」

「いえいえ。私の方こそ案内してもらい助かりましたよ。またどこかでお会いしましょう」


ギルドの職員が魔狼を降ろすとコダルは荷馬車と共に人の波の中へと消えていった。

ルーティは職員に解体と売却、受け取りをモルトにと伝えると、皆を連れて表へ回る。


「次は登録ね。そう言えば有料だけど、今回はリースを助けてくれたお礼に払わせて」


ギルドの中へ入るとなぜか大賑わいだった。


「おい!聞いたか!?三区が攻略されたってよ!」

「あぁ!今朝知らせが来たらしいな!噂通りなら例の新参パーティか?」

「そんなことより今回もやるんだろ?俺は絶対参加するぞ!」

「まだ早ぇよ…けど忙しくなるな」


大勢の冒険者がギルドホールに集まり噂話をしている。受付前はごった返していて職員は右へ左へ走り回っていた。


「攻略された!?三区っていうと…北ね」

「なになに!?攻略って?ダンジョンコア取れたの?」

「男女…?レイジさんの言ってることはわかりませんが…おそらく第三迷宮区にある坑道迷宮から迷宮核が取り外されたようですね」

「四区に続く快挙ね。それより今のうちに登録しましょ」


ほとんどの冒険者達はギルドの中央から右側にある酒場で騒ぎ、フラウ達に注意を向ける者はいない。入口から左の壁には掲示板があり、様々な依頼が書かれた紙が張り出されている。正面には受付窓口が四ヶ所あり、美しい女性達が不自然なほどニコニコしながら周囲を窺っていた。

フラウ達は一番左の窓口へ向かうと、受付嬢は作業を止めて深々と頭を下げる。


「ようこそ♪冒険者ギルドへ♪どのようなご用件でしょうか?」


何が気になったのか、フラウは身を乗り出して受付嬢の目を見つめる。すると受付嬢は明らかに動揺し始め、額からは玉のような汗が流れ落ちた。

受付カウンターの右端にいた冒険者風の男が僅かに反応し、受付嬢達が一斉に緊張した固い表情になる。


「フラウ?ちょっとなにしてるの?座って。私が話すから」

「…わかった」


ルーティは気付かずそのまま登録の手続きをお願いすると、受付嬢は若干安堵しつつ対応を始めた。


「でっでは…お二人の氏名確認の為に髪か血をいただきます。当ギルドにある魔道具は迷宮産でして、複数の鑑定機能があります。髪から名前と年齢、種族がわかり、こちらの針を使い血を採取した場合には、さらに適性も確認できます」

「へぇ…」


受付嬢がどこか誇らしげに話す中、レイジの目は泳ぎそのまま前髪を指で摘まむ。


「あんた男でしょ!?髪で済まそうとか女々しいことしないの!」

「やめっ!?いてぇって!」


とルーティに手を押さえつけられ、ブスリと刺された。


「フラウ…は大丈夫ね」


フラウは左手人差し指に針を刺し、滲む血玉を銀色の薄い板に付ける。


(私が人なら…わかるはず…)

「お預かりいたします」


受付嬢は奥のテーブルにある、ミシンのような金属箱に銀の板を挿していく。装置の裏側で何かを操作すると受付に戻ってきた。


「結果が出るまで少々お待ちください。よろしかったら冒険者ギルドのご説明をしましょうか?」

「私はいいから二人に話してあげて」


そう言ってルーティは酒場の方へ向かい、カウンター端にいた男と言葉を交わす。フラウとレイジは結果が出るまで受付嬢の話を聞く事にした。


冒険者の役割は、開拓者に先んじて未踏の地を訪れる事にあるらしい。その地の脅威を打ち払い、謎を解き明かし、財宝を手にする。まさに冒険が仕事である。


「ふおおぉぉ!冒険!財宝!」

「はい!誰も見たことない世界です!お宝です!」


レイジは誰が見てもわかるほど興奮している。受付嬢は反応の薄い、というより興味がなさそうなフラウを諦め、レイジに調子を合わせる。


冒険者の中にはその腕を買われ、依頼を受ける者もいる。しかし能力が折り合わずトラブルに見舞われる事が多かった。そこで代わりにギルドが依頼を受け、適切な冒険者に割り振っていく事で、円滑な交流をしてきたという。


依頼は多岐にわたり、魔物の討伐、荷馬車や要人の護衛、荷物の配達など重要なものもあるが、家畜の見張り、トイレ掃除、草むしりなどもするようだ。


しばらくして受付嬢は装置を確認しにいく。問題なく登録できたようで、磨き上げられた艶のある木製カードを渡された。


フラウは一呼吸置いてギルドカードに視線を落とす。


フラウ・スノーホワイト――ウッドランク

妖精種(超越種)・20歳(0歳)・精霊魔法(創生)


(!…これは隠蔽されているのか…だがやはり…)


そこへルーティが戻ってきてカードを覗き込む。


「どう?…あ!やっぱりハーフなんだね。納得」

「へ?フラウさん人じゃないの?」

「妖精種のエルフとの間にはハーフが生まれるのよ。ハーフの外見は母体に寄るの。フラウってちょっと人種にしては綺麗過ぎでしょ?」

「エルフ!エルフがいる!」

「うっさい!あんたはどうなの!」


レイジ・キムラ――ウッドランク

人間・18歳・なし


「…人間って?」

「はっ?なし?…ウソだろ!?」


受付嬢は一切表情を変えずニコニコしていた。

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