再会
114
塩村を出発したリース一行は、白岩谷に沿って北上し、妖精里を目指していた。
空駆けるプネウマに跨がったリースの左手側には、妖精里と輝く田畑が見え、右手側には黒森と遠くに丘の村が見えた。
前方には南部山脈が東西に広がっている。
(なんか来た!)
(リース、降りておいで)
フラウから念話が届くも、プネウマはトコトコと空の散歩を続け、近づいて来るものがはっきりと見え始めた。
見覚えのある梟の人形、その背中には栗色と紫の髪をした小さな頭が覗く。
「リザ!キャスー!」
世界樹まで一緒に旅したピクシー達と気付き、長い首に抱きついたリースは、パンパンと叩きながら前を指差す。
眠そうな目をしたプネウマはモゴモゴと口を動かし、プッと何かを吐くと黒い影の群れから何かが一つ落ちていった。
「リース!シャドウクロウの群れだ!降りてこーい!」
「リザ達です!リザ達が追われてる!」
プッププップと音をさせるプネウマのすぐ下、馬車からはカーマインが声を張り上げている。
影烏の群れは今にもリザ達に追い付きそうで、リースは魔爪杖を取り出して構えた。
「どけー!ばかー!」
「わぶっ!?」
急接近した梟の人形は、リースの顔面に直撃し仰け反った。
影烏の群れはあっという間に数を減らし、全て撃ち落とされていた。
「キャス!リザ!戻ってきたのね!」
「ぐえぇぇ」
「潰れる!離しなさいよ!」
「いだだた!?」
ピクシー達を受け止めたリースは、顔を押し付けて再会を喜んだが引っ掻かれた。
馬車は停まりフラウが振るう稲穂に気付いたプネウマは、ゆっくり降りていく。
「痛い痛い!何すんのよ!?」
「うるせー!ばか!」
「よくも置いていったわね!この嘘つき!」
赤くなった顔を押さえ、リザ達に髪を引っ張られるリースは、手を振りキャスを掴む。
「このぉ~…?キャス?少し大きくなった?」
「離せこのやろ~!」
「なによこいつ!あんた少し離れてただけで、もう新しい奴連れてるわけ!?」
背後のランタンから顔を出したヒノコがキョロキョロし、リザに笠を引っ張られて落ちていった。
騒ぐピクシー達を捕まえ、馬車の隣に降り立ったリースはアリエルに預ける。
落ち着かせる為に中州街で手に入れたお菓子を見せたが、いつまでもギャーギャー騒ぎ続けた。
「あんた最後まで面倒見てくれるんじゃなかったの!?何置いてってんのよ!しかも私達の荷物持ってくな!」
「リザ達が戻らなかったんじゃない!世界樹の妖精界に住み着いたんじゃないの?」
「ちっがうよ!わたしの進化に少し時間掛かっただけだろ!」
そう話すキャスは以前より一回りは大きく、栗色の巻き髪は長くなり前髪の一部が赤くなっていた。
結局リザ達は新しい服を着て、再度妖精界へ出向き、フェアリー達に認められたようだ。
だが目的は定住ではなく、始めからキャスの進化に必要な花を手に入れるつもりだったようで、戻ってみるとリース達はおらず、置いていかれたと怒っていた。
「なら一言いってよ、でも良くここまで無事来れたわね」
「なめんなよ~、とろいどっかの娘と違ってわたし達は何処へでも行けるんだい!」
「あー!?服がない!捨てたわね!」
「ちっ違うわよ、もう戻らないと思ってあげちゃった…ちょ!ごめんごめん!もぅやめてよ!」
リザ達は自分達が使っていた部屋に飛び込み、あれこれなくなってる物を確認しては、リースの頭に体当たりする。
その際キャスは金色の模様が竜に見える盾を使い、頬に体当たりされたリースは予想以上の威力によろけた。
フラウに摘ままれたキャスは大人しくなり、その間にエルゥスィスの本を使い調べてみると、金鱗樹の実の盾とわかった。
妖精界に育つ金色の鱗に覆われた樹は、特別な個体への進化素材になるらしい。
赤い髪は火属性の力を示し、羽根の付け根のフサフサした金色の綿毛は、空間へ干渉する力を秘める上位個体の証のようだ。
「だからあの実にこだわったのね…?」
ふとリースは左肩に下げていた鞄が、ゴソゴソと動いている事に気付く。
鞄の口からは太い足が覗いていて、開けてみるとまん丸太った金髪のフェアリーがいた。
口の周りを汚したフェアリーはリースと目が合うも、蜜柑のお菓子を勝手に食べ続けていた。
「あー!私の…じゃなくて何このフェアリー?」
「知らなーい」
「勝手についてきたのよ、私達には関係ないわ」
いつの間にランタンの使い方を覚えたのか、リザ達は牧場設定にすると、何処から取って来たのか赤い種や青苔の塊、苔むした石ころをばら蒔いている。
「フラウさん、このフェアリー…」
太ったフェアリーは、はち切れんばかりのワンピースを着ていて裸足だった。
以前聞いたフェアリーは相手を服装で評価すると言う話を思いだし、リースは追い出されたのではと心配した。
「追い出されたりはしないよ、ただ居心地は良くなかったろう…珍しい事だ、フェアリーに限らず妖精種は体型があまり変わらないのだが…」
と話すフラウはリザ達が散らかした中から石ころを摘まみ出すと、何やら見つめている。
(お前は何者だ?異界の者である事はわかっているぞ?)
(―――、―――――)
「動いた?ゴーレムか?」
カーマインが見つめる中、手のひらの上をコロコロ転がる石は、唐突に蜘蛛の姿となり歩き回った。
「…どうやら異界の者のようだな、保護してほしいと…まぁいいか」
「…?なんだかわからないものを連れていて大丈夫なのか?」
「今、この世界はわからないものだらけだ、全てに警戒し敵対していては始まらない」
食べかすをボロボロ溢すフェアリーを摘まみ出し、牧場へ入れて名前を聞き出すリース。
ティニーとだけ答えたフェアリーは、散らばっていた木の皮に飛び付く。
その皮を頭にかぶると、フラウから石を取り返そうとウロウロ飛び回るキャスを指差した。
「え?何?」
「キャスのように進化したいのだろうか?私達妖精種も加護や環境により、体質が変わる者が稀にいるが…」
しかし訝しげな表情をフラウに向ける。
「しかし素材を集めての進化は聞かないですね…そもそも妖魔がそうやって進化したと言う話も私は初耳です」
「少数派だろう、魔神の支配を受けていた頃は手っ取り早く戦力を増す為に、格の上昇による通常の進化を促していたようだ、しかし支配から逃れた妖魔の中には、特別な素材を得て進化する事を望む者もいるだろう」
フラウが放った石を慌てて受け止めたキャスは、小声で文句を言いながら牧場の片隅に置く。
そしてティニーが木の皮を被っている事に気付くと、取り返そうと掴み合いになった。
そのケチっぷりに、一行は騒がしいピクシー達が帰って来た事を再認識し、笑顔になった。
プネウマが食事を終えるのを待って、移動を再開する。
待ってる間に牧場の整理をしていたリースは、散らかった種や苔玉を庭園に移すのに苦労していた。
そこで石ころを庭園に移し、棒でつついて働かせる事にした。
牧場には木の皮が並べられ、リザ達は天日干しにしたいようだ。
庭園では赤い種が植えられ、井戸の近くには青苔玉に水をやるイシグモの姿があった。
「ちょっと!それ抜いちゃだめよ?」
「知ってるよ!うるさいなぁ!」
「あはははっ!アルラウネがいるよ、ほらっほらっ!」
「やめなよ、嫌がってるでしょ?」
リザ達はやりたい放題で、どうやって移動しているのか、各部屋を渡り歩いては騒いでいる。
少し前に再会を喜んでいたリースは、複雑な気分になっていた。
山吹色に輝く田畑の間を抜け、妖精里の入口が見えてきた。
「……あーー!!」
「どうした!?」
突然リースが叫び、カーマイン達が驚く。
フラウは昼下がりの暖かな馬車内で寝ていて、叫び声に飛び起きた。
「ヒノコ!ヒノコがいません!」
「…そう言えば?」
プネウマに跨がったリースは辺りを見回したが見つからず、街道を少し戻ると、力尽きたヒノコが転がっていた。
「ごめーん!」
駆け寄るプネウマはわざとなのか、ヒノコを踏みつけ二つに分裂させると真新しい、綺麗な方を咥えて引き返す。
あんまりな行動にリースは振り返ると、ボロボロな方は僅かに火を燃え上がらせて消えていった。
(な、なんて悲しい火なの…)
里は未だにお祭り騒ぎで、リースより背の低い、しかしがっしりしたドワーフの姿が目立つ。
狭い通りを進んでいくと、広場の入口には張り紙がされていた。
「え~と…自由民国発、大衆娯楽のサーカス団ジパング到来、北の広場で開催中…か」
「サーカスですか♪見たいです!フラウさ~ん」
「よしいこう」
「聖霊様…まずは里長に合い、薬草園の話を聞きに行きませんか?」
サーカスは鐘七つからで、フラウ達は三手に別れ行動する事にした。
オリヴィア、オルティス兄妹は馬車で拠点に向かい、エルトゥスはサーカス会場へ入場券を買いに向かった。
里長の家に向かう途中、広場の一角では騒ぎが起きていた。
近くの人とドワーフが話し声が聞こえる。
「またやっとるよ、帝国のもんはほんと困ったもんだ」
「相手は…やっぱ獣人か、連合領内でよくやるぜ」
騒ぎの中心では武装した集団同士が睨み合い、一触即発な雰囲気となっていた。
一方は帝国印の馬車に乗る商人と、周りを囲うのは赤い蠍の印を装備の何処かに必ず持つ、傭兵団レッドテイルの者達。
方やがっしりとした体格の獣人達だ。
獣人達の先頭には兎獣人の女性が腕を押さえて震えており、熊獣人の大男が今にも暴れだしそうにしている。
「だから何度も言ってんだろ?そいつが馬車の前に飛び出したから、咄嗟に引っ張って助けてやったんだよ」
「ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞ!こっちはしっかり見てんだよ!てめぇらが嫌がる彼女を連れてこうとしてんのはよ!」
「いい加減にしろ?公衆の面前でこれ以上変な言いがかりを付けるなら、容赦はしない」
一番体格がいい、斧を背負った全身鎧の大男が凄むと、辺りは一気に引いていき空間ができる。
商人はどこか楽しげに眺めていて、止める気はないようだ。
怯えるリースを抱き寄せるフラウも止めるつもりはなく、いざとなれば格の違いでこの場の皆を気絶させてやろうと考えていた。
そこへ三メートルを越える、オーガ並に背が高い集団が現れる。
皆頭巾を被り厚着をしていて、覗く手足は異様に細かった。
両者の間に入ると長い腕を伸ばし、瞬く間に傭兵団も獣人達も押さえつけ、里の西へ連れていってしまった。
「ワーカーですね、里の中であれに抵抗できる者はいません」
「どうしてですか?」
「あれは天敵誓だよ、人や獣人に対して絶大な力を振るう事ができる代わりに、他の種にはとことん弱くなる誓いを立てた者達だ」
里長の家に着くと、中から怒った商人が出てくる。
胸には何処かの山と渦巻く風の印があり、カーマインが双子国だと言う。
「まったく!話が違うじゃないか!あぁどうしたものかっ!」
そのまま行ってしまい、フラウは気にも止めずリースの背中を押して家に入る。
「――お見苦しいところを…申し訳ございません、実は皆様が旅立たれてからすぐ薬草園が何者かに荒らされ続けております、さらに貴重な薬草がある倉に空き巣が入っているようで…先程の商人は国からの使いで、金華草を受け取りに来た者です」
代金を受け取ってしまっているようで、このまま渡せないと倍の違約金を支払わなければならないようだ。
「薬草園に不安を抱えたまま通過する事はできないな…わかった、今夜見張ってみよう」
「ありがとうございます!このお礼は必ず!」
「賊に心当たりはないのか?」
「…薬草園が荒らされた日に里へ入った団体は帝国商人と傭兵団、サーカス団に獣人冒険者達です」
「あいつらか…」
カーマインは先程広場であった出来事を話すと、里長はやっと追い出せたかと溜息をついた。
しかし事件の翌日に寄せられた目撃情報は獣人からで、サーカス団の一人が薬草園周辺を彷徨いていたと言う。
「ふ~む…今夜サーカスを見に行く予定だ、その獣人と疑いのある者の名を教えてくれ」
獣人は猫獣人の男でエメランと言い、今も里にいるそうだ。
サーカス団の方はアキヒトと言うヤマト人らしい。
広場まで戻ると賑わいは増していて、疲れたフラウ達は拠点に戻ろうと酒場となっている店先を横切る。
すると、樽をテーブル代わりにドワーフと酒を飲み交わす男が声を掛けてきた。
「ん?おぉ、あんたらあの時の!」
「…あぁ、レマニ婆さんの知り合いか」
「あぁそうだ、俺はハーベイ、迷宮都市六区出身のEランク冒険者だ、南から回ってきた俺より遅く着いたのか?」
ハーベイは二日前には着いていたと言い、その健脚ぶりに皆驚いた。
笑う男はその種明かしだと、赤い種を見せてきた。
「あの後商人の後をつけていってな、骸森の村までいったんだよ、そしたら驚いたぜ、色んな魔法薬の材料が揃ってたんだよ!この獅子の種を安く買えてさ、昼夜壁前を全力疾走してあっという間よ、赤蟻も置いてきぼりさ!」
「骸森に魔法薬?…」
(あっ…これリザ達が拾ってきたのと一緒?)
アリエルは困惑したような顔をし、カーマインは男の飲み仲間らしきドワーフが話す事に笑っていた。
「こやつ実は冒険者ギルドの課題を、自由民国と南大壁国で終えようと考え、南を通ってきたんじゃよ、馬鹿な男め、受付で南大壁国への道は数に入れないと言っておったじゃろうに」
「ちくしょう…国同士が仲悪いからってそんなのありかよ…」
やけ酒煽り出したハーベイと別れ、拠点に戻る。
エルトゥスはしっかり人数分買えた様で、早めの夕食を済ませ、北広場のサーカス会場へ向かった。
大きなテントが二つ並ぶ広場には、沢山の人や獣人、ドワーフ等が列を作って並んでいた。
「……えっ?レイジさん?レイジさん!」
「どうしたんだリース?」
「今レイジさんがそこを通りましたよ?」
「あの黒髪の青年が…いないようだが?」
フラウも見回すが人種は少なく、黒髪はいなかった。
入場券を係りに渡し入る際、ランタン内のリザ達に気付き、急に怒られた。
従魔にも追加料金が必要らしく、これからリースと楽しもうと考えていたフラウは、鬱陶しそうにバラバラと銀貨をテーブルに撒き、リースの手を引き入っていった。
「フラウさん…ああいうのは良くないです、助かりましたけど」
「そうか…悪かったリース」
「私に謝られても…あ、わぁ~!」
テントの入口は暗かったが、少し進むと眩しい程の照明魔道具が、天井から吊るされていた。
中央の台をぐるっと囲うように階段の様な席が並ぶ。
前列はだいぶ埋まっていたが、フラウ達は入口近くの一番後ろ、空いている席に座った。
「もっと前じゃなくて良かったのですか?」
「心配ない」
フラウはリースの目元を軽く触り光ると、不思議と中央の台が拡大されて見えた。
「わ~すごい便利ですね!」
「こんな魔法簡単だ、リースも習えばできる」
フラウに対抗してか、カーマインも同じようにして視力を上げていた。
微妙な空気になりそうになるとリザ達が騒ぎ、カーマインが渋々魔法を掛けていく。
ティニーは夕食後間もないのに、お腹が空いたと鞄を漁り始め、仕方なくお菓子を食べさせた。
少しして会場の席は埋まり、照明が一瞬暗くなると、中央の円形台には変わった衣装に身を包んだ曲芸師達が現れていた。
腹に響く大きな音が鳴り響き、パンと光が瞬くと目まぐるしく人が動き回る。
ある者はエイプを連れて現れると様々な芸をさせ、ある者は見上げる程の高さまで、固定されていない梯子を登ると、危なっかしく動き回った。
その中でも複数の炎の輪が竜の首を模して並べられた場面では、仮面をした青年か現れ、勢いよく炎の輪に飛び込んだ。
恐怖から目を閉じかけたリースが見たものは、曲がりくねりながら天井近くまで続く、炎の筒の中を飛ぶように進む青年の姿だった。
「飛んでる!?」
「あ、あぁおかしいな…魔力の気配が…」
(リース、さっきレイジを見掛けたと言っていたが、あの男かもしれないな)
(え?どうしてですか?)
会場は割れんばかりの拍手が起き、何人かは残念そうに肩を落としていた。
あっという間に一時間が過ぎていたらしく、皆幸せそうな顔して帰っていく。
カーマインが出し物の内容が書かれた紙を見つけてきて驚いている。
「ほぅ…あの台、魔力霧散の魔導装置らしいぞ?あれは浮遊や飛行系の魔法ではなかったのか」
「…この最後のタネ明かしができたら白金貨とはなんだ?」
「幾つもの家具を重ねていった男のは大金貨?魔法でないなら…力技だろう?」
入口は混み合いすぐには出れそうにない。
カーマイン達はなかなか楽しめた様で、あれこれと話し合っている。
フラウはリースの手を取ると、あの仮面の男に会いに行こうと言い裏手に引かれていった。
「もぅ、アリエルさん達に断ってこないでいいんですか?」
「大丈夫、それより…ここかな?」
「こ、ここは関係者以外立ち入り禁止だぜ?」
と、背後から声を掛けられ振り返った。
仮面はしていなかったが、青みを帯びた黒髪の青年が若干逃げ腰でいた。
その顔は何処かレイジに似ていて、キョロキョロと世話しなく動く瞳は黒かった。
「あっえぇと、さっきはすごかったです!すごくドキドキしました!」
「へ?…あぁ、ありがとう、ははっ♪タネはわかったとかじゃないの?」
虚をつかれたような顔した青年は笑い、控え室らしき部屋に入ると招いてくれた。
「わかってる、その力、異能だろう?」
「――!…驚いた、マジかよ…なんでわかったの?」
「お前が異世界の者だと言う事も知っている」
「――!?ちょちょっとタイム!え?なに?誰かの刺客なの?待って!俺は関係ないって!」
急に取り乱した男――アキヒトはフラウが別件で来たと話すと、ホッとした顔をした。
「夜の薬草園で何をしていた?」
「あぁそれね、とりあえず言わせて…それでも俺はやってない!…コホン、あぁ一度言ってみたかったんだよね」
「リース、ワーカーを呼んできてくれ」
「待った待った!冗談だよ…やだなぁ、あの日は飛行能力の訓練をしてただけだよ、長旅の後にいきなり本番じゃ怖いからね」
アキヒトは薬草園の犯人ではないと言い、他に怪しい者はいたかと聞かれれば誰もいなかったと、自信をもって言い切った。
「俺の索敵に引っ掛からないなんて滅多にないよ?、さっきはお姉さんがわからなかったけど…リースちゃんだっけ?君が近付いて来たから隠れてたんだ…獣人の男は俺があの場にいたと証言しているんでしょ?逆にお前はいなかったと言ってやりたいね」
(時々わからないから話についていけないわ…)
「そうか…エメランと言う男が怪しいな…わかった、すまなかったな急に来て、主によろしく言っといてくれ」
「――いっ!?いやいやいや…勘弁してくださいよ…ほんと巻き込まないで…」
帰り道、道に迷ったフラウの手を引き会場に戻る際、アキヒトとどんな話をしていたか質問するも、笑うだけだった。
(自由民国の迷宮主…たしかナナシンと言ったか…西側へ進出する気か?何が狙いなんだ?)




