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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第二章 世界樹篇
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薬等級

108


「ご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

「あなた方は街の救世主なのですから。次回も四階でお泊まりください」


宿の支配人とマシュー代表に見送られ、昇降機を降りて馬車へ向かう。もうすぐ鐘三つになるが、急げば丘の村に間に合うと、西の渡し場から舟に乗った。


「おぉ、お帰り。東側でも騒動に巻き込まれたんだって?大変だったなぁ」


行きで舟に乗せてくれた老人と再会し、再び乗せてもらう事になった。

西の様子を伺えば、荒野で暴れていた怪物はあれ以来現れていないらしい。代わりに黒森周辺で魔物が姿を見せており、今朝方には白い巨人が西へ向かって行くのを見たと言う。


「あれは大丈夫。敵ではない」

「ん?そう…なのかい?」

「フラウさん?」


老人が怠けている部下を叱りに行くと、フラウはリースを傍に引き寄せる。


「聖霊達はそれぞれ重要な場所に、守護者を創作して配置していた。あの巨人もその内の一体だよ」

「じゃあ言う事を聞くのですか?」

「…どうだろう。あの個体の創作には他の…姉妹が関わっている。シャーリィが創作した守護者はなんと言うか…威圧感に欠けると言って、シアが勝手に手を加えたんだ」

「…?」


舟は西側の渡し場へ着き、オリヴィア達は馬車を降ろす作業を始める。カーマインは舟に揺られながらの煙管が気に入ったようで、満足気な顔をしていた。


渡し場には南へ向かう商人と護衛の冒険者達がおり、舟に同乗していた冒険者が薬を買い足そうと声を掛けていた。


「すまないねぇ。今は薬が不足していて、持ち合わせがあるのは四等のこれ一つだけなんだよ」

「えぇ!?なんでだよ?」

「どっかの商会が七等から四等に使う薬草を買い占めてるらしい。しかも妖精里にある薬草園が何者かに荒らされたそうだ。来季の出荷量は減るだろうね…」


冒険者はこの先薬が手に入らないかもしれない不安から、声を荒げて詰めより、護衛の冒険者と押し問答を始める。


「薬?あっ私も持ってないんだった…」

「冒険者になるつもりなら、最低でも五等級の薬は持っていろ」


呆れ顔のカーマインが放って寄越したガラスの小瓶を、リースは慌てて受け止める。片手に収まる程度のガラス瓶は、若干雑じり気があり曇っていた。

中には緑色した液体が入っていて、水より粘度があり飲みづらそうだった。


「うへぇ…」

「な、なぁ君!薬が余っていたら譲ってくれないか?」

「おいおい…慌てすぎだろう?まだ開拓地からの薬草や、個人の薬師達は持っているんじゃないのか?」

「そうじゃねぇんだよ。薬草栽培してる様な開拓地はどこも別の問題抱えてて取引に応じないらしい。だから薬師達は街の在庫に制限を掛けてるってよ」

「なんだと?」


男は鉄級昇格試験の必須課題である、二か国以上の国境まで到達する行き先に、自由民国を選んだ冒険者だった。

帰る途中に薬が切れてしまい、中州街で買おうとしたら高かったので、丘の村まで行こうとしたらしい。


「倍の金なんて払いたくねぇ…それ五等級の薬だろ?瓶の感じからして六区の婆さんの薬だな。今出せるのは銀貨四枚…駄目か?」

「――!お前レマニ婆さんの知り合いか?」

「あ?あぁ素材集めの依頼を受けた事がある」

「カーマインさん、譲りましょう?同じ迷宮都市の人なら助けてあげたいです」


そう言ってリースは薬を渡し、代金を受け取った。

カーマインも仕方なしと言う感じに手を振り、男は礼を言いながら商人達が向かった南へ去っていった。


「…なぜ南へ行く?」

「なぜでしょう?」


全員揃って男を見送った後、南部街道を西へ進む。




道中退屈なリースは、中州街でカーマインに買ってもらった万華鏡を取り出し、覗きながらクルクルと回して感嘆の声を上げていた。


その様子に見たいとせがむフラウだったが、直ぐに飽きると代わりに遠見の水晶鏡を渡そうとする。万華鏡を取り合い水晶鏡を押し付け合った二人はカーマインに怒鳴られ、リースとアリエルは場所を交代させられた。


「薬にも色々あるが統一された規格がある」


カーマインはばつの悪そうな顔しているリースに、薬の基本的な等級を教える。


通常、薬草のみで調合された薬は六等級から始まり五等級までとなっている。


六等級は擦り傷や打撲等の初歩的な怪我に効き、一般生活の中で使われる程度、初心者薬師のお試し等で作られる。


五等級は軽傷、爪で裂かれたり、棍棒で殴られたりした場合に有効で駆け出し冒険者必須の薬になる。


四等級は重傷、身体内部にまで至る深手や一部毒の回復にも役立ち、Dランクから所持する者が増える。


三等級は魔力を帯びた薬草が加わり、重傷に加え一部魔法的症状にも効く。


錬金術や創作魔法等、特殊な魔法の力が加わった物が二等から一等に入る。


二等級は重傷に魔法的症状、様々な毒や一部病にも効果があり、よく貴族社会で流通している。


一等級は二等に欠損の繋ぎ合わせ、僅かに欠損回復もする、滅多にお目にかかれない薬。


特等級はあらゆる怪我や病を癒し、欠損を元通りにする。

暴竜のブレスをまともに受けた勇者が、死の間際に飲み、五体満足に炎の中から飛び出したと言う逸話がある。

伝説的な薬であり、近年では魔の森の西側を統べる領主が、調合に成功したと言う噂が流れ、老賢者会の魔法薬専門の老賢者が数日間、領主に対する暴言を吐き続けたと言う。


「…まぁこの辺りが基本だ。他にも四等級以下でも魔法が加えられている物があったり、三等級でも安く売られ、効果が薄い物もあるから、なるべく規格で決められた薬を買うようにしろ?」

「はい…火傷や病、毒によく効く薬は何等級ですか?」

「それら特殊な薬は全部五等以上になるな。他の効果と合わせていない方が効き目が強い。稀に何にでも効くと言いながら売り付けてくる者がいるが、気を付けろよ?」




荒野を移動中、度々魔獣の襲撃を受けた。

ほとんどは雑種狼系だが、一匹だけエメラルドウルフが現れ、アリエルの弓矢の前に倒れた。


しかしオリヴィア達は苦い記憶が甦り、近づくことを躊躇う。するとフラウは馬車の屋根に逆上がりして飛び移り、ぴょんと飛び跳ねた。


そしてエメラルドウルフに近づいた時、唐突に死骸は消失し、空中で何かを蹴ると馬車まで舞い戻ってきた。


「お、お見事です…聖霊様」

「ふ…」


会心の出来だったのか、フラウにしては珍しくドヤ顔を見せるも、リースは先程から付かず離れずついてくる、頭に火が着いた化け茸を眺めていた。


フラウ曰く、化け茸も赤の聖霊が作り出した守護者らしいが、姉妹の手が加えられている為、その性格は変わっているらしい。リースが声を掛けても近づいても逃げていき、気が付くとこちらを見つめていた。


(なにがしたいのよ…)

(遊んでいるつもりかもな)

「ひゃあ!?な、なんですか!?勝手に入って来ないでください!」

「――ぐふっ!」

「聖霊様!?」


御者席で手綱を握るカーマインは、胸を押さえて苦しむフラウの姿にアホらしいと半眼になり、西へ馬車を進める。


「待て、誰か来たぞ?」


夕日を背に向かいからは、ボロボロな二人の冒険者が現れていた。

一人は全身傷だらけな上に左腕を失っていて、もう一人は足を引き摺っている。


「止まれ!どうしたんだ!?」

「…見りゃわかんだろっ!」

「やめろ!傷口が開くぞ」


カーマインの呼び止める声に、片腕の男は怒鳴り返す。

しかし覇気もなくよろめく相方を、足を怪我した男が支えるが、共に倒れてしまった。


「無理だ。そんな状態では中州街に着く前にウルフの餌だぞ。ここからなら丘の村が近いだろうに」

「駄目だ!あの村はもう助からないっ!」

「なにっ!?なにがあった!」

「異形の魔虫だ!バケモンが黒森から現れて、村から救援依頼が来た。だけど俺らカッパーランクのパーティ八人がかりでも傷一つ付けられなかった!」


サナティナが治療をし、多少落ち着きを取り戻した片腕の男が話す。

六日前、丘の村から夜中に魔物退治の依頼を付けた使いカラスが来て、翌日には中州街から迷宮都市へ帰るパーティが出発した。

しかし三日前に村から来た使いの者の話では、冒険者パーティは現れず、村長と村人多数が死傷したらしい。


その話を聞いたアリエルと、オリヴィアは思わず顔を見合わせる。


そしてその使いは、異形の魔虫退治を依頼しに来たと言う。

誰も受けなかったが、夜中に突然、病に臥せっていた代表が指示を出し、中州街お抱えの冒険者だった彼らが出発した。

昨夜、その異形と川原で出合い戦うも、魔虫の硬い甲殻の前に武器は砕け、仲間の断末魔を背に逃げてきたと言う。


フラウが腕を直してやると男は号泣し、折れたダマスカス鋼の欠片をアリエルに渡して相方と共に中州街へ帰っていった。


「ダマスカス鋼の剣が折れた…む?多少ですが…削ってはいたようです」

「――!異世界の…」

「え?なにか?」


フラウはそれっきり黙りこみ、再び馬車は前に進む。




それからは急いだ甲斐もあり、日が沈む前には丘の村へ着くことができた。

村は酷い荒れようで、東門はひしゃげたままに北側の塀は一部倒壊して、応急処置がされた跡があった。


「やはりあの少年…早まった事を」

「え?…フラウさん?」


暗い雰囲気の丘の村、その上空を見つめるフラウの顔はいつになく険しいものだった。

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