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転生聖霊物語  作者: けんろぅ
第二章 世界樹篇
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管理者のお仕事

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コーラストスに案内され、辿り着いた世界樹の中心。

フラウは目の前に立つ、緑のワンピースを着て緑髪に緑の瞳をした少女と見つめ合っていた。


「お久しぶりなの。シャーリィ」

「フィリス・フェリス…フィリスでいいか?私はフラウだ。待っているのは大精霊と聞いていたが…」

「そうなの〜あなたはフラウ。白の聖霊にして転生者。彼女には別の用事をお願いしたの」


緑髪の少女は笑いながら身体を揺らしている。

広い空間には他に何もなく、天井は吹き抜けで遥か先まで明るい。


「あなたが転生してから大変だったの。精霊達の還る場所、白の領域管理は常にギリギリの状況なの」

「私は…それより彼女は何をしている?」


フラウは自身の中でそわそわしている存在に、落ち着かないでいた。


「ふふふ…あなたになんて謝ろうか悩んでいるの。昔から考えてばかりでなかなか行動に移さない子だったの~」


そう言うとフィリスはフラウに近づき手を差し出す。

するとフラウのお腹辺りから急に白い手が現れ、フィリスに引かれて白い少女が現れた。


「シャーリィはちゃんと謝るの。話が進まないの~」

「…フラウ。あなたに負担を掛けてしまい、ごめんなさい」

「白の…シャーリィか。私を生み出した?」

「そう。私は青の聖霊イリスの協力を得て転生した。転生により様々な問題を解決する為に。なりより…あの子を。リースを助けたかった」


フィリスの隣に立つ白の聖霊シャーリィは、フラウと身長が違うだけで顔は瓜りつだった。

白のワンピース姿は小人里でリースと共にいた姿で、フラウにはリースとスノウの両者からの記憶がある。


「本来、転生は力と記憶を全て引き継ぐの~。ただしそれは同格の存在としての転生時に限るの」

「私達のような特別な存在が、世界に介入すると世界を歪めてしまうのよ。だからリースを助ける為に、私は人に転生する決意をした。その際私の、白の聖霊の因子を色濃く受けた娘をイリスが見つけてきてくれてたのだけど、私の全てを引き継ぐ事は出来なかった」

「格の違い…魂の格を高めればいいのか?」


シャーリィは少し表情を曇らせてから頷く。


「シャーリィはあなたと同化するはずだったの。けど今のあなた達は一割も同化できていない。あなたが格を積んで同化が進めば、あなたもシャーリィも一つとなってちゃんとした転生になるの」

「魔神と対峙した時、恐怖から私は私を否定してあなたから離れようとした。その結果あなたの存在は希薄になり消滅の危機を招いてしまった…」

「…今も逃げ出したいか?」

「私は…怖いのよ…けどあの子は戦うわ。だから私も戦う。今度こそ…」


拳を握り涙を流すシャーリィに代わりフィリスがこの世界の成り立ちと、世界が抱える問題について話し始めた。




五人の聖霊達が親神様と呼ぶ五柱神は、箱船に乗って現れ世界を創造した。

そして五色聖霊はその分身体であり、世界を管理する役目があった。

エルダーと呼ばれる古代種達を外から眺め、時に間接的に介入した。

そこへ異世界からやって来た者達がいた。彼らは最初こそ世界に従順だったが、徐々に傍若無人になり、世界を汚し始めた。

親神様が残した創生樹を破壊した事により、赤の聖霊エレナが直接介入して世界が歪んでしまった。

そして怒りと憎しみに呑まれたエレナが帰還した親神様達と共倒れになってしまう。生き残った侵略者達は偽りの神格を用いて、地下に潜伏している事を聞いた。


「――残る侵略者は三匹なの。迷宮都市の龍人魔神と魔の森の獣頭魔神、大陸北東の魔境に異形魔神なの。この悪い子達が親神様と共に散ってしまった箱船を狙っているの」

「あなたには魂の格を積んでもらい、力を取り戻したら魔神の討伐に乗り出してほしいの。私達が一つになれば対抗することができるわ」

「わかった。私も約束したからな…守ると」


フィリスは満面の笑みを浮かべるとウンウン頷き、次の問題について話す。


「エレナと船から放たれた力がぶつかって、この世界は歪みに敏感になってるの。あったものがなくなったり、なかったものが現れたりするのはそのせいなの。これを見てほしいの」


フィリスが手を振ると何もない空間に窓ができ、そこに映し出されたものに、フラウの形の良い眉が僅かに動く。


「空に…陸?」

「異世界より転移してきた大陸が浮いているの。今から十二年前に世界樹南の腐森。今は腐敗湿地って呼ばれている地域の上空にあるの。この大陸にある星神国は、旅立った親神様達が創造した世界から来た可能性があるの」


フィリスが言うには星神国には五柱神に関わる逸話があり、世界を管理していた三女神は、酷似した神格を持っているらしい。

その世界も異形の侵略を受けて、三女神の力により一部の大陸を転移させた。

その後、大陸を維持する為に力を使っている女神達は深い眠りについているようだ。

その為星神国は今、一万人近い命が狭い大陸内でひしめき合っているという。


「天人達があちらの代表と話し合い、受け入れる準備を進めているの。あなたもさっき会ったでしょう?」

「あぁ、彼女か」


世界樹の幹に辿り着いた際にすれ違った、エルフのようでいて精霊のような女性を思い出すフラウ。

フィリスはウンウン頷きながらも顔を曇らせ話を続ける。


「だけど問題は沢山あるの~」


星神国を受け入れるにはまず浮遊大陸内にいる、一緒に転移してきた異形を駆逐する必要があった。

これは星神国側が総力をあげて取り組んでいるらしく、解決の目処か立っているらしい。


二つ目に星神国は転移先と争いにならないよう大陸を浮遊させている。この問題を解決し三女神を解放したいという。その為には大陸を降ろせる場所の確保が必要になる。


三つ目が一番の問題で、大陸をどのように移動させるかまったくあてがなかった。


「けどあなた達が来て問題解決の糸口ができたの。一緒にいた古代シュメル人の末裔。その証を色濃く顕したシャルロット・リリー・アルタイル。彼女の中には星神国の、元の世界に生きていた王女の魂が眠っているの」

「あの少女に?」

「星神国側の交渉人の話では、彼女はこちらに来てからずっと探し物をしているの。星の力を秘めた祭具と星にまつわる遺跡の場所を探してるの」

「それが浮遊大陸移動の鍵か」


フラウにもシャルロットの姿がダブって見えた事があり、何かあるとは思っていた。


「彼女の協力を得られれば良いのだけど…難しい話なの」

「なぜ?同じ世界に生きた者達なのだろう?」

「彼女の国は異形の侵攻を真っ先に受けて、大量の異形がいたようなの…つまり転移時に置いていかれたの」

「…なるほど」


見捨てられた国の王女に、逃げた国の為に力を貸せと説得するのは気が重かった。


「色々と山積みだな…」

「まずはなによりフラウの魂の格を高める必要があるの。格とは簡単に言えば知識と経験、力なの!」

「中州街でリースが出会った者も複数の神格を得た土地神よ。迷宮主から始まり他所の地へ渡れる程の力を得ていた」

「敵なのか?」

「表向きは世界協定の一員なの。表向きは!」

「皆そう。外から来た者達…彼ら彼女らは自分達の世界を失って深い悲しみと怒りに囚われている。この世界に居場所を得られないなら、壊して自分達の世界に作り替えたいと考えてるわ」


フィリスはウンウン頷き自分からは以上だと言い、シャーリィが転生する際誓った事を話した。


「フラウ。私は転生するにあたって残してきた者達にある約束をした。あなたも最近した約束よ。覚えている?」

「もちろんだ。契約しているクリスタリアにも話したが、私は精霊達を見捨てない」

「そう…今精霊達は非常に危機的な状況にある。魔神が放つ負の魔力により変質する精霊が後を絶たないわ」

「エルフ達も苦労してるの」

「私は精霊達の新たな可能性…私と同じ、転生による道を考えているわ。その可能性の一端が図らずも目の前に現れた」

「星神国の…彼女達か?」


シャーリィの考えによれば星神国の者と会い誕生の秘密を知れば、蝕まれた精霊達を救えるかもしれないと言う。


「あなたに頼みたい事は大きく分けて三つ。三魔神の討伐、星神国の入植、精霊達の救済よ」

「…どこまでできるかわからないが…全力を尽くそう」

「あなた一人に全てを押し付けたりはしない。私はもちろん、彼女も、イリスやシアも力になってくれる」

「そうそう!シアは今、彼女の領域に世界に仇なす魔神達を封じているの。けどその隙を突かれて七つ首の龍人魔神によって世界から遠ざけられている。迷宮都市の七つの迷宮は魔神の前線基地なの。全部ぶっ潰して殴り込み、彼女を開放するの!」

「フィリス。言葉遣いが汚いわ…」


一通り話終えたフィリスが急に辺りをキョロキョロしだし、別の窓を作って世界樹の北の様子を見せてくる。そこには魔の森から押し寄せてくる魔獣の群れが映っていた。


「フラウ!出番なの!やっちまえなの!」

「わかった。また何かあれば教えてくれ」

「もちろんなの。細かい事はそこの引きこもりに聞くの」

「ッ!?引きこもりじゃありません~!」


シャーリィはブツブツ言いながらフラウに抱きつくと一つとなり、フラウはフィリスが開いた窓から外へ飛び出していった。

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