死後の世界に拒まれた者
拙い文章ではありますが、ちょくちょく更新していきたいと思います。読んでいただければ幸いです。
ここは生と死の間に位置する場所。
頭上には空が広がり、足元は水鏡のようにその空を写している。そのせいか、足元にも空が広がっているように見える。
その空しかない空間に、いくつもの扉が浮いている。
死んだ体から離れた人の魂が通ってゆく扉。
死んだ人の次の行き先へとつながる、旅立ちの扉。
そんな場所に、彼は立っていた。
木で造られた古ぼけた扉。
青いペンキの塗られた扉。
取手に精緻な飾りが施された扉。
それぞれの扉にそれぞれの行き先がある。
それがどんな行き先かは、わからない。
こんなにもたくさんの扉があるのに、彼の前には1つの扉も開いてはいない。
「ああ、そうか…僕には行く所がないのか。」
そう、彼にはゆくところがないのだ。
どの行き先も、彼を受け入れてはくれないのだ。
彼にはわかっていた。
そのとき、不意に彼の体を支えていた何かが消え失せ、彼の体は落ちていった。体といっても、実体の体は死んでいて、魂だけなのだが。
彼は落ちていった。
元いた場所へと。
彼を拒む世界へと。
彼にはわかっていた。
なぜ、自分には行き先がないのか。
送り返された世界で、彼を拒む世界で、自分はどんな存在になるのか。
Phantom―――――
それは、人には見ることの出来ない、
触れることも出来ない、
生きた、亡霊。
これからも更新していきたいと思います。読んでいただければ幸いです。