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第9話 仕事がしたい

「あのー」

「はい、何かご用でしょうか? 転移者様」

「何か仕事をさせてもらえませんか?」

「はい?」


 疲れてひたすらゴロゴロしていた昨日。

 私はとっても重要なことに思い至ったのだ。


 ——私の今の状態って、国賓っていうよりただのニートでは……? そして私のこの超贅沢な待遇に使われているお金って、全部税金だよね!? これはとってもよくないのでは!?


 昨日の貴族たちの様子を見れば、私がこれだけ贅沢を許されている理由もわかるというものだ。

 多分だけど、今までの転移者たちがみんな何かしらの『スキル』って呼ばれる能力を持っていて、それを使ってこの国に貢献してきたからこその待遇だよね……? じゃあ何のスキルもない私はただの穀潰しじゃん!


 スキルのない私にこの待遇に見合うような仕事ができるとは思えないけど……それでも、とりあえず何か仕事をさせてもらおう。何もしないよりはましだろう。多分。


「……というわけなので、何でもいいので仕事はないでしょうか……」

「その必要はないかと存じますが……」


 ソフィアさんも私がスキルを持っていると勘違いしているのか、困ったように首を傾げた。


「そこを何とか、お願いします……」

「……上の者に確認してまいります」

「ありがとうございます! お願いします!」


 これで脱・穀潰しだ! と思ったのに、


「転移者様にそのようなことをしてもらうわけには! 転移者様はここにいてくださるだけで十分でございます!」


 ソフィアさんが部屋を出て行ってしばらくして、文官さんなのかな? 偉い感じの人が青い顔をしてすっ飛んできた。そして思い切り渋られている。これでは私の脱・穀潰し計画が……


「さすがに何もせずにここに置いてもらうのは……何か私でもできるような仕事はありませんか? 機密とかの問題で難しいのかもしれませんが……本当に掃除でもなんでもやりますので……」


 私は頭を下げた。文官さんがおろおろしているのが顔を上げなくてもわかったが、脱・穀潰し計画のため、私はここで引くわけにはいかないのだ。


「……では、簡単な書類をお持ちしますので、確認をお願いしてもよろしいでしょうか……」


 文官さんは渋々、本当に渋々といった様子でそういった。

 私はガバッと勢いよく頭を上げた。


「はい! ありがとうございます! 頑張ります!」


 ……と言ったのはよかったのだが。

 文官さんに渡された書類には、全く見たこともない文字がずらりと並んでいた。


「よ、読めない……」

「え」


 文官さんは固まった。心なしか文官さんの視線が冷たい気がする。

 そうだよね! 自分で言い出したのにね! ごめんなさい!


 なんで話し言葉は日本語なのに、文字は全然違うの!?

 まずは文字の読み方から教えてほしい……と言いたいけど、それじゃあ余計に向こうの手間を取らせちゃうよね……


「あの、せっかく持ってきてもらったのにごめんなさい。こちらの世界の文字は読めないみたいです……すみませんが、文字が読めなくてもできるお仕事はありませんか? 掃除とか……」


 申し訳ないが、別の仕事を振ってもらおう。


「……では、庭園の掃除などはいかがでしょうか」


 文官さんが眉間にしわを寄せながらも絞り出してくれた。


「掃除やります! やらせてください!」

「では、庭園にご案内を——」


 そんなわけで、私は他のメイドさんたちにまざって庭園の掃除をすることになったのだった。


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