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第8話 敵意の人

 貴族たちとの挨拶が終わり、来た時とは逆方向に廊下を進む。大したことは何もしてないのに、なんだかもうへろへろだ。


 そろそろ部屋が見えるというころ、部屋の前にいつも通りのロックスさんと一緒に、もう一人見慣れない騎士がいることに気づいた。


 すぐに私に気づいたロックスさんが声をかけてきた。


「転移者様、ご挨拶をしておりませんでした護衛の騎士が、辺境より戻ってまいりました。ただいまよろしいでしょうか」

「あ、はい大丈夫です」


 ……大丈夫……なんだけど、この騎士の人、なんかすごくにらんでない? どう考えても気のせいじゃないよね。どうしよう……といっても、できることなんて何も無いけど。

 とりあえず怖いので、視線を逸らしておいた。


 騎士が何も言わないことに気づいて、ロックスさんが小突いて挨拶を促すと、小さく舌打ちが聞こえた。

 思わず肩が小さく跳ねる。


「……ルークです」


 騎士はこちらを見ずに、低い声で小さくそう言った。

 私は半ば反射的に言葉を返す。


「ルークさんですね。よろしくお願いします」

「……」


 無視された。

 えぇ……さっきから何なんだろう。なんか嫌われるようなことしたかなぁ。初対面だよね? さっきの今で、一体私の何が気に食わなかったんだ……それとも私が忘れてるだけで、もしかして会ったことある? いや、そんなはずは……

 とりあえずこの世界に来てからの短い記憶を掘り返してみたけれど、もちろん思い当たるものは特にない。


 広い廊下に重い沈黙が流れる。


 会話がなくなって数秒(体感は数十分だったけど)が経ったとき、ソフィアさんが「転移者様、部屋に戻りましょう」と声をかけてくれた。

 本当に助かった。あれ以上会話を続けるコミュ力は私には無いよ……



 貴族たちとの会話もルークさんの挨拶も、そんなに長い時間ではなかったはずなのに、ものすごく疲れた。さっき起きたばかりのような気もするけど、何もする気が起きない……さっさと着替えて今日はもう部屋でごろごろしようかな。


 そう思い、重たくて動きにくいドレスから夜間着に着替えようとしたけど、一人では脱げなくて、結局着るときと同じようにソフィアさんに手伝ってもらった。一人でも脱ぎ着できる服がほしいなぁ。今度ソフィアさんに聞いてみようかな。


 やっと着替えが終わって、広いベッドに戻ってごろごろと転がる。

 柔らかくてつやつやしたシーツを何の気もなしに触っていたとき、私はとんでもなく重要なことに気づいたのだった。

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