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第7話 落胆と二日目

「……まぶし……」


 カーテンの隙間から差し込んだ朝日で目が覚めた。

 視界に入ったのは、昨日眠りについた時と同じ、天蓋付きのふかふかベッドだ。

 目が覚めたら私の部屋にもどっていないかな、なんて内心期待していたんだけど、そんなことはなかった。起きたばかりだけど思わずため息をついてしまう。


 さて、とりあえず……とりあえず私はどうしたらいいんだろう。

 いつまでもベッドの上で途方に暮れているわけにもいかないので、昨日言われた通りに、サイドテーブルの上に置いてある小さなベルを鳴らした。すると一秒も経たないうちに部屋のドアが開いて、ソフィアさんが入ってきた。ずっと部屋の前にいたのだろうか。


「おはようございます、転移者様。お呼びでしょうか」

「お、おはようございます。あの、朝からすみません。私が昨日着てた服ってどこにあるんでしょうか……」


 ソフィアさんはほんの少し目を見開いたが、すぐに元の笑顔に戻った。


「……服はこちらのクローゼットの中からお好きなものをお選びください」


 そう言って、部屋の隅にある大きなクローゼットを開く。その中には所狭しと色とりどりの豪華なドレスが並んでいた。


 ……これを着ろと?


 私がその光景に絶句していると、ソフィアさんが何を思ったのかさらにとんでもないことを言った。


「もしお気に召すものがなければ新たに購入いたしますので——」

「いやいやいやいや、そういうわけではないんですけど、あの私、本当に昨日ここに来たときに着ていたもので大丈夫なんですが……」


 私がそういうと、ソフィアさんは眉をハの字にした。

 あああごめんなさい。困らせたいわけではなかったんですけど。


「……こちらの文化とかの問題で難しいようであれば、この中で一番シンプルなのを選んでいただけるとありがたいです……」


 結局、クローゼットの中では一番シンプルな、それでも私の価値観では十分すぎるほどにきらびやかな深緑のドレスを着ることになったのだった。

 昨日も似たようなドレスを着て、動きづらいことは知っていたけど、やっぱりすごく動きづらい……これは大変だ……


「本日は転移者様と、王都にいる貴族の代表者様方とのお顔合わせがございます。これから広間に向かいましょう」

「え゛」


 何で!?

 一応王宮のお客さんってことになってるっぽいから、国賓みたいな扱いなのかな……? いや、ただの女子高生が国賓って……なんかすごいことになっちゃってるな。まあそれは異世界に来てる時点で今更か……



 私が広間に到着したときには、すでに多くの貴族が集まっていた。

 貴族たちはみな四方の壁際に立っていて、正面の少し高くなっている席には、なんと昨日会った王様もいた。


 私はどこに行けばいいのか、とキョロキョロしていると、広間のど真ん中の誰もいないスペースに案内された。いじめかな?


 そして四方からグサグサと視線が刺さりながらも、私は名前を名乗るだけの簡単なあいさつをする。それだけでもノミの心臓を持つ私は震えあがっているのに、貴族たちは間髪入れず、口々にスキルを見せてくれと言い始めた。


「今までの転移者様にも、この場にてその類まれなスキルをお見せいただいたのです」

「此度の転移者様はどのようなスキルをお持ちなのでしょう。これまでの転移者様以上に素晴らしいスキルを拝見できるのではないかと、われわれ一同非常に楽しみにしておりました」


 なんだか大変なことになっている。まさかそんなにスキルを期待されているとは思わなかった。

 みんなすごい笑顔でプレッシャーをかけてくるんだけど、そう言われましても……


「あの、昨日王様にもお伝えしたんですけど、私はスキルとかは無いんです」

「どうかそうおっしゃらず! 口外するなとおっしゃるならばそのようにいたしますゆえ、どうかそのお力をお見せいただきたい!」

「いや、ですから……今までの人は何か能力とかがあったのかもしれないですけど、私は本当に——」

「貴族たちもこう言っているゆえ、どうかお願いできないだろうか」


 王様にまで頼まれてしまった。「力とか何にも無い」って昨日も言ったじゃん! 信じてなかったのか!

 私が悪いわけじゃないはずなのに、ここまでくるとなんだか申し訳なくなってくる。


「……ごめんなさい。本当に何にもないんです……」


 思わずうつむいてしまう。

 広間のどこかから、小さなため息が聞こえた気がした。思わず肩をすくめる。


 どこか冷ややかになった空気は戻らないまま、その場はなんとなくお開きになる。

 王様の「もう戻ってよいぞ」の言葉で、追い出されるように私も広間を後にした。

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