第6話 王の決意
「陛下、そろそろ移動いたしましょう」
「わかっておるわ」
転移者との謁見が終わると、私はさっさと玉座から立ち上がり、側近たちを連れて早歩きで議場へと向かった。
側近が扉を開ければ、議場は静まり返ると同時に、貴族たちが一斉に立ち上がった。
私は貴族たちにさっさと座るように促し、前置きもなく本題に入った。
「皆知っての通り、また転移者が現れた。だが皆で協力し、落ち着いて対処すれば、必ず被害は抑えられるはずだ。その証拠に前回と前々回は一人の死者も出すことなく解決できている。そして、先ほど転移者と謁見した。今回の転移者はまるで詐欺師のようなやつで、『元の世界に帰りたい』などと見え透いた嘘を抜かしていた」
思わずため息が漏れた。
貴族たちは口々に嘲り笑う。
「今更そんな嘘に騙されるものがいるものか。転移者がみなこの国を乱すことに喜びを感じていることは、とっくに周知の事実だ」
「我らが何も知らないと思ってぬけぬけと……」
「たとえ詐欺師でもそこまで低能であれば、前回と同じようにあっさりと片付くかもしれませんな。前回など転移者が阿呆だったおかげで、現れた初日に片が付いたのだから」
緊張した空気から打って変わって楽観論が議場を占める。
そんな中で、私は努めて緊張した面持ちを崩さずに続けた。
「しかし問題もある。スキルについて尋ねたが、『そんなものはない』としらを切られた。これまでのように積極的にスキルをひけらかしてきた者たちとは違い、困ったことに少々小賢しい転移者のようだ」
再び議場はざわつきだした。
「それでは、どんなスキルを持っているか不明ということですか!?」
「これまでに作成した転移者対策用のマニュアルも、すべてスキルの内容が分かっている前提のものです! スキルがわからなくては対策のしようがありません!」
「もしまた王都を破壊されたら……いや、王宮を狙われでもしたら、今度こそこの国は……!」
私は片手をあげて貴族たちを制した。
「わかっておる。だからこれより、此度の転移者のスキルの解明が、国政の何よりの急務となる。ひとまずは今までどおり、転移者が望むがままの贅沢をさせて、適当におだててスキルを見せるように仕向けていくつもりだが……それ以外にも案のある者は遠慮なく言え」
パラパラと出る意見。
もちろん今すぐ問題を解決できる策などあるはずもないが、普段は敵対し、すぐにいがみ合う家門どうしですら、互いに意見を出し合い建設的に議論している。
転移者がそれだけの災厄であることの裏返しと言ってしまえばそれまでだが、この差し迫った状況では心強いことだ。
そう。私たちは二度と被害を繰り返さないように、協力してあの災厄を打ち倒さなければならない。
それが私の、この国の王としての使命なのだ。
一様に真剣な表情で活気ある議論を繰り広げる貴族たち。それを見て、私は決意を新たにした。




