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第5話 貴族たちの動揺

『また転移者が現れた』


 王宮の使者から緊急の連絡を受け、私は仕事を放り出して王宮へと急いだ。


 バタバタと焦って扉を開けた王宮内で一番広い議場は、すでに多くの貴族たちで騒然としていた。

 それもそのはずだ。この国で転移者以上の大問題はない。


「また転移者が来てしまうなんて」

「これで一体何度目だ?」

「もう六度目だ。前の転移者が死んでからまだ半年しかたっていないというのに……」

「今度は一体どんなスキルが——」


 誰もがみな眉をひそめ、不安といら立ちが混ざったような面持ちでがやがやと話している。


 私も自分の席へとつくと、すぐに近くから話を振られた。


「グレイモア卿、あなたまで来られるとは」

「来るに決まっている。いまやこの国で、転移者の対処以上に重要な仕事なんてあるものか」


 自分で言っていてため息が出る。本当にどうして、こんなことになってしまったのか。



 この国に転移者が現れるのはこれが初めてではない。これまでに五回も、転移者はこの国に降り立っている。


 十年ほど前、一番最初にこの国に現れた転移者は二十歳前後の若い男だった。異界から来た奇妙な客人に、国は当初、警戒しつつも一定の歓迎を示した。

 しかしその転移者はこの世界の常識を超えるほどの、強大な魔力を持っていた。そしてその魔力のことを、転移者は『スキル』と呼んでいた。この世界に来る直前に神様に会って授かったのだと。

 『スキル』とは何なのか、どれだけ文献を漁っても分からなかった。ただ一つ確かなことは、転移者がいた世界の言葉であるらしいということだけだ。


 そして転移者は「この国の政治はおかしい! 間違っている!」などと言って突然怒り出したと思ったら、あっという間にこの王宮を含む王都の半分以上をその魔力でもってがれきの山にしてしまった。

 王を含む王族は奇跡的に全員無事だったとはいえ、思い出すだけで頭が痛くなる悪夢だ。多くの犠牲者が出て、壊れた街の復興には長い時間がかかった。

 もちろん罪人として捕まえようとした。しかいどんな騎士も魔法使いも転移者を倒すことはできなかった。結局、使用人が食事に毒を盛って暗殺することで、ようやく終わった。



 一人目の転移者がいなくなり、誰もが安堵していた。しかしそれから二年ほど経って、また同じように転移者が現れた。

 この転移者は非常に友好的な人物だった。そのため、一人目と同類とは限らないだろうと判断が下され、監視を多数つけつつも一応自由に行動させてやった。


 しかしこの転移者は異性を魅了するスキルを持っていた。多くの若い女性貴族、女性使用人が洗脳されて彼のもとに集まり、王宮はまるで後宮のようになってしまった。その中には未婚女性以外にも、夫のいる女性も多くおり、王都は大パニックに陥った。

 その後、こいつは一人でいる隙を狙って魔法で射殺された。この転移者が現れてから殺されるまでは短い期間ではあったが、それでも多くの者の心に傷を残し、また多くの家の結婚にも問題が出た。


 三人目以降も同じだ。何度転移者を殺しても、しばらく経つとまた次が現れる。そしてどいつもこいつも厄介な特殊能力——『スキル』を持っているのだから本当に手に負えない。どうして私たちが、この国がこんな目に合わなければいけないのだろう。


 ——いつかこの国は、本当に転移者によって滅ぼされてしまうのではないか。


 普段は抑え込んでいる不安が頭をよぎり、組んだ両手を強く握りしめた。そのとき、議場の扉が開いた。

 話しこんでいた貴族たちが一斉に扉の方に注目する。


 王とその側近たちは、静かになった議場に足を踏み入れ、それぞれの席に着いた。



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