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第4話 騎士の挨拶

 謁見が終わって、再び部屋へと案内される途中。

 長い廊下の窓から見える庭園が目に入った。花壇は色とりどりに咲き、噴水の水がオレンジ色の日の光に照らされてきらめいている。


 きれい……今更だけど、本当に異世界の王宮なんだな、ここ。


 案内されるままにぼんやりと廊下を歩き、最初に目覚めた部屋まで戻ると、部屋の前にいる騎士二人がこちらに気づいて近づいてきた。


「転移者様。ご挨拶をよろしいでしょうか」

「はい。大丈夫です……? あ、私は立花こころです。よろしくお願いします」


 返事はこれでいいのかな。なんかすごく上からな感じになっちゃった気がする。大丈夫かな。

 そんなことを考えて私が視線を彷徨わせる。その間に、二人の騎士は私の目の前で廊下に膝をついた。


「転移者様の護衛を担当いたします。第一騎士団のロックスと申します」

「同じく、ケインと申します」


 ひえ、こんな『挨拶』だとは思わなかった。私は思わず一歩後ずさって声をあげた。


「あああああの私そんな偉い人間じゃないので、そんな、膝をついての挨拶とか、そういうのはいらないです……どうか楽にしてください……」


 私が上ずった声で言うと、二人は礼を言って立ち上がった。二人ともかなり背が高いので、一気に私が見上げる形になる。


 ロックスと名乗った騎士が続けて頭を下げた。


「もう一人、ルークという者も転移者様の護衛を担当するのですが……申し訳ございません。本日は、辺境に現れた魔物の討伐に出ておりますので、ご挨拶はまたの機会とさせてください」

「ああいえ、気にしないでください。正直、私みたいなのに護衛とか必要なのかわからないんですけど……よろしくお願いします」


 別に今日いない人がいるくらいでそんなに謝らなくていいんだけど……そんなことより、もっと気になることがあった。


「あの……さっきちょっとお話にあったことですけど、魔物とかいるんですね」

「ええ。この国にも魔物はおりますよ。ですがご心配の必要はございません。王都全体を覆うように対魔物用の強力な結界が張られておりますので、どんな魔物であれ王都に、ましてやこの王宮に入ることなどできません」


 そう言ってロックスさんは目を細めた。


 そっか。ここには魔物は来ないのか……世界観的に魔物とかいそうだなぁとは思っていたけど、本当にいるとなると流石にちょっと怖い。でも入ってくることがないならよかった。

 私は騎士たちに気づかれないように、密かに胸をなでおろした。


 ……そういえば今更だけど、やっぱり名乗っても『転移者様』呼びは変わらないんだな。私は『様』とかつけられるような大した人間じゃないんだけどなぁ……



 部屋に戻ると、びっくりするほど豪華な夕食が運ばれてきた。料理の説明はよくわからなかったけど、おいしいということだけはよくわかったのでOKです。

 食べ終わったら、大きなお風呂で入浴。気持ちいいとかより、メイドさんに服を脱ぐところから全部やってもらうのが恥ずかしいという感情が勝っていた。次からは自分でやりたい……。


「今日は何が何だかわからない一日だったな……」


 柔らかいベッドに沈み込みながら考える。


 この王宮で暮らしていいのはありがたいけど、まさかこんな、貴族みたいな待遇だとは思わなかった。正直、庶民には荷が重い。わがままな話だけど、もうちょっとほどほどの待遇にしてもらえないものだろうか。明日になったら頼んでみようかな。


 それでも、


「……なんかみんな親切で、よかったなぁ……」


 そう呟いて、私は深い眠りに落ちた。


 ——それがどれだけ馬鹿げた幻想なのか、このときの私は何も知らなかった。

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