第3話 人生初、謁見
金色の王冠に深紅のマント。まさに絵に描いたような王様だと思った。
その脇には側近らしき人が何人か立っている。
私は促されるままに広間をまっすぐ進み、王様の前に立つ。
自分の心臓がバクバクと音を立てるのがはっきりと聞こえた。
こういうときって、どうしたらいいんだろう。王様に謁見したときのマナーなんて普通に知らないよ。私から何か挨拶とかしなきゃいけないのかな。ソフィアさんも事前に教えてくれればいいのに。
私が一人でおろおろしていると、王様が先に口を開いた。
「遠き異界の来訪者よ、よくぞ参られた。わしはこのダリオス王国の国王、ガルドマンだ」
……異界。まったく認めたくはないけど、そろそろ現実逃避も限界かもしれない。
「わ、私は立花こころと申します。……あの、すみません。私、本当に何にもわかってなくて。ここは、どこなんでしょうか?」
王様は私の質問に慣れた様子で答えた。
「ああ。ここはお主のいた世界ではない。お主たちの言う言葉では『異世界』というのだったか? そういう場所だ」
お主《《たち》》……?
「え、私以外にも同じような人がいるんですか? どうすれば元の世界に帰れるんでしょうか。私、帰りたいんですけど」
「帰りたい……?」
王様は私の言葉に首を傾げた。
そんなに変なことを言っただろうか。私も思わず首を傾げる。
「ふむ。元の世界に帰る方法は……我らにも分からぬ。だが、今まで現れた転移者たちは皆、この世界でしばらく過ごした後に自然と帰っていった。きっとお主もそうなるであろう」
王様はさほど興味もなさそうに、ひげをいじっていた。
なんだ。少し経てば帰れるのか。……それならギリ許容範囲かなぁ。まあ許容できなくても、自分から帰る方法なんて知らないんだけどね。
安堵と諦めが混ざったようなため息が出た。
「帰れるまで、この王宮で安全に暮らせるよう手配する。生活の心配はせずともよいぞ」
「何から何まで……本当にありがとうございます」
私は深く頭を下げた。
至れり尽くせりだ。このまま放り出されたら絶対に生きていけない自信があったから助かった。
異世界の人の優しさに私が感激していると、王様の近くから別の声が降ってきた。側近の人かな。
「ところで、何か力に目覚めた感覚などはありませんか? もしよろしければ、転移者様のその偉大なお力をお見せいただきたいのですが」
「力?って……え、魔法とかってことですか? いや、ないと思いますけど……」
私は何となく手を握ったり開いたりしてみたけど、全く分からなかった。
「……そうですか」
この世界って魔法とかあるんだろうか。もしなかったら私、だいぶ的外れなこと言ったけど。
それにしても、この人は王様の側近なんだろうに、ただの小娘相手にずいぶんへりくだった物言いをするんだなぁ。
それ以上は特に何か聞かれることもなく、人生初の謁見はあっさりと終わった。




