第1話 転移者様
「ああ転移者様は今日もお美しい!」
私の容姿が平凡なのは、私が一番よく知ってるよ。
「転移者様! この前贈ったドレスはお気に召しましたか!?」
プレゼントが多すぎて、まだ全部開封しきれてないからわかんない。
「転移者様はどのような宝石がお好きですか? まあ転移者様の輝きの前ではどのような宝石もかすんでしまいますでしょうが——」
そもそも別に宝石とか好きじゃない。
「そのようなお言葉をくださるなんて、転移者様はなんと慎み深くお優しい!」
私、ほぼしゃべってないよ。
「転移者様、観劇はお好きですか? どうか転移者様と共に時間を過ごす栄誉を——」
知らない人と見る劇とか、落ち着かなそうで嫌だな。
「えーと……」
私が口を開いた瞬間、別の声が重なった。
「なんと控えめなお方だ!」
違う、今のはただ話し始めようとしただけで——そう思ったけど、言葉は飲み込んだ。どうせ何を言っても、都合よく解釈されるだけだ。
王宮内でも奥まったところにあり、人通りは少ない場所にある一室。
そこに用意された私の部屋。そこには毎日のように多くの貴族たちが入れ代わり立ち代わり現れては、ご機嫌取りの言葉ばかりををひたすら繰り返していく。
重たいドレスの裾が足首にまとわりついて、長く立っているだけでじわじわと疲れてくる。香水の匂いがいくつも混ざり合って、少し息苦しかった。
彼らはいつも好き勝手にしゃべっていき、こちらが言葉を返す暇もないほどだ。雑に相槌を打つだけでいいから楽、と考えられたらよかったのかもしれない。でも相手は貴族だ。適当な態度を取って、後から何を言われるかわからない。
正直、かなり疲れる。
お世辞の内容は人それぞれだ。
だがそれらが一段落すると、まるで示し合わせたかのように、その後に続く言葉はいつも同じだった。
「転移者様! どうかそのスキルを私にお見せいただけませんか?」
期待に満ちた視線が、一斉にこちらへ向けられる。
その中に、ほんのわずかだけ——試すような、値踏みするような色が混じっていることに気づいて、私は余計に疲れを感じた。
——私にスキルなんてものはない!




