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2025年 オススメ短編

婚約破棄されたので、ちゃぶ台をひっくり返しましたわ(お父さまが)

作者: 多田 笑
掲載日:2025/08/10

少しでも笑っていただけたら嬉しいです。


尚、この作品には、茨木様、和様からいただいたネタが含まれています。また、タイトルは二角ゆう様からアイディアをいただきました。


※卜部ひびき様の作品と似ているネタが含まれていますが、正式に使用許可をいただいています。


皆様、ありがとうございます!

「セリーナ・ショーワード、君との婚約を破棄する!」


 きらびやかな王宮主催の舞踏会の真っ只中。

 わたくしの婚約者である侯爵家嫡男、オスカー・レイワール様が高らかに宣言なさいました。


「……理由をお聞かせ願えますか?」


 涙を堪え、わたくしは静かに尋ねました。


「君の家が貧乏すぎるからだ! それに──この世界観なのに、ダイニングルームが畳にちゃぶ台……正座しながら食事をとるなど、あり得ない! 価値観が違いすぎる!」


 えっ、そうなの?

 うちって……おかしいの?


「それにだ。君の家で開かれたあの……パーティー? いや、パーティーじゃない。晩御飯! 茶碗によそわれた白いご飯、梅干し……ナイフもフォークもなく、箸! どれもこれも、この世界観には存在しない!」


 この世界観には……ない?

 じゃあ、なぜ我が家にはあるの?


「お言葉ですが、オスカー様。ここは現実世界とは違う異世界──何でもありではございませんの?」


「何でもありではない! 先人が築いてきた世界観を、そう簡単に壊してはいかん!」


 そ、そうなんですのね……


 華やかな衣装の中世ヨーロッパ貴族が、畳の上の座布団に正座して、ちゃぶ台を囲む──。


 確かに、あの光景は……シュール。

 シュール過ぎますわ!

 


「それに……」


 ま、まだあるんですの?

 そんなに不満が溜まっていらしたのね……。


 わたくしにとっては、あれは人生最高の晩餐でしたのに。


 オスカー様がお帰りの際、なかなか立ち上がれなかったのは──正座で足がしびれていたからかしら? てっきり、感動で立てなかったのだとばかり……。


「僕がナイフとフォークを要求したら、君のお父上がギロリと睨み、『そんなものはない!』と一喝しただろう! 褒められて育ってきた僕には、あんな怖い人と付き合うなど無理だ!」


 そ、そうでしたの!?


 やっぱり、お父さまは怖かったのね……。

 わたくしは幼い頃から叱られ、注意され、厳しく育てられましたけれど……他のご家庭は違うのかしら?


「というわけで、僕は価値観が近いリリザ嬢と婚約することにした」


 リリザさん……確か、リリザ・ヘイセーイ伯爵令嬢。男爵家の我が家からすれば、確かに格上ですわ。


 そう言い残し、オスカー様は颯爽と去って行きました。



 悲しみに暮れながら帰宅し、婚約破棄のことをお父さまに報告すると──


「……許さん! オスカーめ!!」


 普段は寡黙なお父さまが、この時ばかりは怒声をあげました。


 そして──


 ガッシャーン!!


 ちゃぶ台が、宙を舞いました……!

 割れる茶碗、飛び散る醤油、きらめく汗──そして、ときめくわたくしの心。


 あれ?

 そういえば、“調味料のさしすせそ”って、なんでしたかしら?


 さ:砂糖醤油

 し:醤油

 す:酢醤油

 せ:せうゆ

 そ:ソイソース


 ……全部、醤油やないか~~い!!


 ──はっ!?


 そんなくだらないことを考えている間に、お父さまは外へ飛び出しておりました。


 追いかけなくては!!


 玄関を飛び出すと、遠くに小さく見えるお父さまの背中。


 サンダルで猛ダッシュするお父さま。

 ドレスのスカートをたくし上げながら走るわたくし。


 ──そして、そのさらに前方を全力で駆ける犬。


 ……まずいですわ。

 これではまるで、お父さまが犬を追いかけているように見えます。


「助太刀いたす!!」


 突然、わたくしの横から黒装束の忍者が飛び出しました。彼は驚くほどの俊足でお父さまを追い抜き、先頭を走る犬をひょいと捕まえます。


「やりましたぞ!」


 誇らしげに犬を掲げる忍者。


 しかし、わたくしとお父さまは、その横を無言で通り過ぎました。


 ぽかんとする忍者。


 やはり、お父さまが逃げた犬を追っているように見えたのですわね……。


 その優しさだけ、受け取っておきます。

 ……堪忍じゃ。



 そんなこんなで、わたくしたちはレイワール侯爵邸に到着しました。


 ピンポーン、ピンポーン。


 ……え、ピンポーン?

 この世界観にインターフォン?


 そう突っ込みを入れる間もなく、メイドの女性が出てきました。


「申し訳ありません!!」


 突然、全力で謝るメイドさん。


 驚くわたくしとお父さま。

 そして──忍者……忍者!?


 いつの間についてきたの!?

 さすが忍者! 全く気づきませんでしたわ……。


「どうしたでござる?」


 メイドさんに尋ねる忍者。

 ……なぜあなたがメインキャラみたいな顔をしているの?


「え、近隣にお住まいの方では?」


 そう聞かれ、首を振る忍者。


「そうですか……てっきり、私は近隣の方からの騒音クレームかと……」


「騒音クレームって……貴族の邸宅から一番近い住宅でも、そこそこ距離ありますわよ」


「そうなんですが……“口からビーム”でも出しているんじゃないかって……」


 く、口からビーム? いやいや、ビームって……もう世界観がめちゃくちゃですわ……。


 驚く忍者とお父さま。そして──犬……犬!?

あの犬ですわね。忍者が連れてきたのかしら……。


 ついに屋敷内へ入るわたくしたち。



 その後は──



 ※ここからはダイジェストでお送りします。


・ 口からミサイルを出すオスカー様 → お父さまがちゃぶ台返しで撃破!

・一人称が「わらわ」のリリザ嬢 → ラスボスとして登場。

・忍者と犬(忍者いわく“ケルベロス”だが普通の柴犬)が、リリザ嬢の“口からメテオ”にやられる。

・お父さまの“ちゃぶ台返しリフレクション”でメテオを反射し、リリザ嬢を見事撃破!


 こうして、わたくしたちは宿敵レイワール一味を倒したのです……。



 けれども──


「大変でござる! 拙者の故郷で“口からフレア”使いが現れたでござる!」


 ……なぜか、一緒に住んでいる忍者が、そう報告してきました。


 わたくしたちの戦いは、これからも続く──。




 何……この話……?

 やっぱり……作者の頭がおかしいですわ!

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
お腹痛いです(笑) 突き抜けたシュール! 破天荒! ギャグコメディのお手本のようです。 御名のルビが グリズリー になっておられた事も含め、楽しませて頂きありがとうございます。 二角ゆう様に御作品を…
カオスに次ぐカオスで面白かったです! ちゃぶ台が異世界に、という発想はなかったです……
アイデア採用ありがとうございま〜す! なんか同じネタ考えてた作家さんがいらしたようで、まったく存じ上げませんでした! 九州に旅行に行ったとき、鮨屋で出てきたお醤油が甘くて驚いた思い出があります こ…
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