婚約破棄されたので、ちゃぶ台をひっくり返しましたわ(お父さまが)
少しでも笑っていただけたら嬉しいです。
尚、この作品には、茨木様、和様からいただいたネタが含まれています。また、タイトルは二角ゆう様からアイディアをいただきました。
※卜部ひびき様の作品と似ているネタが含まれていますが、正式に使用許可をいただいています。
皆様、ありがとうございます!
「セリーナ・ショーワード、君との婚約を破棄する!」
きらびやかな王宮主催の舞踏会の真っ只中。
わたくしの婚約者である侯爵家嫡男、オスカー・レイワール様が高らかに宣言なさいました。
「……理由をお聞かせ願えますか?」
涙を堪え、わたくしは静かに尋ねました。
「君の家が貧乏すぎるからだ! それに──この世界観なのに、ダイニングルームが畳にちゃぶ台……正座しながら食事をとるなど、あり得ない! 価値観が違いすぎる!」
えっ、そうなの?
うちって……おかしいの?
「それにだ。君の家で開かれたあの……パーティー? いや、パーティーじゃない。晩御飯! 茶碗によそわれた白いご飯、梅干し……ナイフもフォークもなく、箸! どれもこれも、この世界観には存在しない!」
この世界観には……ない?
じゃあ、なぜ我が家にはあるの?
「お言葉ですが、オスカー様。ここは現実世界とは違う異世界──何でもありではございませんの?」
「何でもありではない! 先人が築いてきた世界観を、そう簡単に壊してはいかん!」
そ、そうなんですのね……
華やかな衣装の中世ヨーロッパ貴族が、畳の上の座布団に正座して、ちゃぶ台を囲む──。
確かに、あの光景は……シュール。
シュール過ぎますわ!
「それに……」
ま、まだあるんですの?
そんなに不満が溜まっていらしたのね……。
わたくしにとっては、あれは人生最高の晩餐でしたのに。
オスカー様がお帰りの際、なかなか立ち上がれなかったのは──正座で足がしびれていたからかしら? てっきり、感動で立てなかったのだとばかり……。
「僕がナイフとフォークを要求したら、君のお父上がギロリと睨み、『そんなものはない!』と一喝しただろう! 褒められて育ってきた僕には、あんな怖い人と付き合うなど無理だ!」
そ、そうでしたの!?
やっぱり、お父さまは怖かったのね……。
わたくしは幼い頃から叱られ、注意され、厳しく育てられましたけれど……他のご家庭は違うのかしら?
「というわけで、僕は価値観が近いリリザ嬢と婚約することにした」
リリザさん……確か、リリザ・ヘイセーイ伯爵令嬢。男爵家の我が家からすれば、確かに格上ですわ。
そう言い残し、オスカー様は颯爽と去って行きました。
◇
悲しみに暮れながら帰宅し、婚約破棄のことをお父さまに報告すると──
「……許さん! オスカーめ!!」
普段は寡黙なお父さまが、この時ばかりは怒声をあげました。
そして──
ガッシャーン!!
ちゃぶ台が、宙を舞いました……!
割れる茶碗、飛び散る醤油、きらめく汗──そして、ときめくわたくしの心。
あれ?
そういえば、“調味料のさしすせそ”って、なんでしたかしら?
さ:砂糖醤油
し:醤油
す:酢醤油
せ:せうゆ
そ:ソイソース
……全部、醤油やないか~~い!!
──はっ!?
そんなくだらないことを考えている間に、お父さまは外へ飛び出しておりました。
追いかけなくては!!
玄関を飛び出すと、遠くに小さく見えるお父さまの背中。
サンダルで猛ダッシュするお父さま。
ドレスのスカートをたくし上げながら走るわたくし。
──そして、そのさらに前方を全力で駆ける犬。
……まずいですわ。
これではまるで、お父さまが犬を追いかけているように見えます。
「助太刀いたす!!」
突然、わたくしの横から黒装束の忍者が飛び出しました。彼は驚くほどの俊足でお父さまを追い抜き、先頭を走る犬をひょいと捕まえます。
「やりましたぞ!」
誇らしげに犬を掲げる忍者。
しかし、わたくしとお父さまは、その横を無言で通り過ぎました。
ぽかんとする忍者。
やはり、お父さまが逃げた犬を追っているように見えたのですわね……。
その優しさだけ、受け取っておきます。
……堪忍じゃ。
◇
そんなこんなで、わたくしたちはレイワール侯爵邸に到着しました。
ピンポーン、ピンポーン。
……え、ピンポーン?
この世界観にインターフォン?
そう突っ込みを入れる間もなく、メイドの女性が出てきました。
「申し訳ありません!!」
突然、全力で謝るメイドさん。
驚くわたくしとお父さま。
そして──忍者……忍者!?
いつの間についてきたの!?
さすが忍者! 全く気づきませんでしたわ……。
「どうしたでござる?」
メイドさんに尋ねる忍者。
……なぜあなたがメインキャラみたいな顔をしているの?
「え、近隣にお住まいの方では?」
そう聞かれ、首を振る忍者。
「そうですか……てっきり、私は近隣の方からの騒音クレームかと……」
「騒音クレームって……貴族の邸宅から一番近い住宅でも、そこそこ距離ありますわよ」
「そうなんですが……“口からビーム”でも出しているんじゃないかって……」
く、口からビーム? いやいや、ビームって……もう世界観がめちゃくちゃですわ……。
驚く忍者とお父さま。そして──犬……犬!?
あの犬ですわね。忍者が連れてきたのかしら……。
ついに屋敷内へ入るわたくしたち。
その後は──
※ここからはダイジェストでお送りします。
・ 口からミサイルを出すオスカー様 → お父さまがちゃぶ台返しで撃破!
・一人称が「妾」のリリザ嬢 → ラスボスとして登場。
・忍者と犬(忍者いわく“ケルベロス”だが普通の柴犬)が、リリザ嬢の“口からメテオ”にやられる。
・お父さまの“ちゃぶ台返しリフレクション”でメテオを反射し、リリザ嬢を見事撃破!
こうして、わたくしたちは宿敵レイワール一味を倒したのです……。
けれども──
「大変でござる! 拙者の故郷で“口からフレア”使いが現れたでござる!」
……なぜか、一緒に住んでいる忍者が、そう報告してきました。
わたくしたちの戦いは、これからも続く──。
何……この話……?
やっぱり……作者の頭がおかしいですわ!
最後までお読みいただきありがとうございます。
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