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第2章:教室の狐

親愛なる読者の皆様

この章では、新任教師のヒカルが直面した実際の試練と、謎めいた狐との出会いについて描かれています。学校という日常的な場所で起こる超常現象と、教育に携わる人々の不安が交錯する物語です。

なぜなら、教師は尊い職業である一方で、しばしば大きな試練に直面するからです。しかし、誰かの助けがあれば、どんな試練も乗り越えることができるからです。


朝が明けた。いつもと同じように、ヒカルは学校へ向かって歩いていた。まだ時間が早いため、廊下も教室も静まり返っていた。


その日は空が暗く、不気味な空気が漂っていた。ヒカルは、あの「何か」にまた出くわすかもしれないと思い、少し身震いした。


「キツネ……か?」彼は顎に手を当ててつぶやいた。「キツネなんて伝説の存在だろ……なんで学校にいるんだ?」


「幽霊って、人の少ないところが好きなのよ」甲高い女性の声が、彼の耳元でささやいた。


「またお前か!」ヒカルは慌てて振り返ったが、誰の姿もなかった。


そのとき、火の玉が蛇のように校庭を走り抜けるのが見えた。


「こんなの、慣れっこになんてなれない!」叫んで、教室へと駆け出した。


二階に着いたヒカルは、深呼吸して落ち着こうとした。そして、2-Bの教室の前で立ち止まり、手にしたプリントをぎゅっと握りしめた。


「副校長から、今日のこのクラスの代講を頼まれたんだ……」と恐る恐る呟いた。中学校の授業なんて、一度もやったことがなかった。


思わずため息をついた。


「何をビビってるんだ?なんでいつも最悪の事態を想像するんだ?もっと前向きに行こう!」


教室に入ると、案の定、そこはまさにカオスだった。生徒たちは立ち上がり、走り回り、水の入ったペットボトルで遊び、スマホを見ながら笑っていた。


「くそ……」ヒカルは不安そうに教室を見渡したが、背筋を伸ばして前に出た。


「よし、みんな席について。授業を始めるぞ」黒板に「世界史」とマーカーで書き、「ノートを出して、今から書くことを写してくれ」と言った。


だが、その声はまるで誰にも届いていないかのようだった。


ヒカルはスマホに夢中な生徒たちのグループに近づいた。


「おい、スマホはしまえ。しまわないなら没収するぞ」


「先生にそんな権利ないよ。そんなことしたら訴えるからね」と男子生徒が顔を上げて言い放ち、またスマホに戻った。


その言葉にヒカルは黒板の前まで下がった。


「……じゃあ、授業を始めようか」彼はプロジェクターをつけようとしたが、電源が入らなかった。「プロジェクターが故障……?」


生徒たちは顔を見合わせてクスクス笑った。教師には理解できない何かが、そこにあった。


その笑い声に混じって、ヒカルの視線は黒板の上――天井のすぐ下に浮かぶ、よく知るキツネの仮面を捉えた。


「なっ……なんだ、あれは?」呟くと、それはふっと姿を消した。


「ええと……今日はアメリカの独立について話すつもりだったんだ」マーカーを手にして黒板に書いた。「プロジェクターが使えないから、黒板でやるぞ」


生徒たちはまた笑った。ヒカルは天井を見上げ、プロジェクターが壊れていないことに気づいた。


「アメリカの独立……それからメキシコの独立、そして次はチリ……」そう言って黒板に書き続けたが、教室の騒がしさは変わらなかった。


「どうしてこんな悲しいことを続けてるの?」あの声がまた耳元で囁いた。


「……それが、生きていくためだからだ」ヒカルは心の中で呟いた。「頼むよ、キツネさん……今はやめてくれ」


彼は再び生徒たちを見回した。


「では、この年表を写してくれ。その間に、プロジェクターの故障を確認してくる」


ヒカルは椅子を持ち出して、プロジェクターの電源を調べた。


「……見てみろよ。コンセントが抜けてただけだ」ケーブルを差し込んだ。


「くそっ、くだらねぇ授業だな……」スマホの生徒が不満そうにぼやいた。「前の先生は好きなときにスマホ使わせてくれたのに」


ヒカルは言葉に詰まり、その生徒を見返した。


「前の先生は面白かったのに、今度はこんなオタクかよ」生徒は大声で文句を言った。


ヒカルはその言葉にうつむいた。黙っていられない……何か言わなければ……だが、口元が震え、言葉が出てこなかった。


その瞬間、生徒のスマホが宙を飛び、壁に叩きつけられた。


「くそっ、俺のスマホ!」生徒はバッテリーを拾って、慌てて駆け寄った。


生徒たちはその光景に驚いていた。


「なんでスマホ投げたの?」と誰かが聞いた。


「俺がやるわけないだろ!」と、生徒は言いながらスマホを直した。


「きっと学校の幽霊の女の子だよ!」


ヒカルは周りを見渡し、誰にも気づかれないうちに、再び天井に浮かぶキツネの仮面を見た。




追伸

この章を書く際、私は教室の不穏な雰囲気と、新米教師の不安感を表現することに重点を置いた。キツネを単なる超自然的な存在としてではなく、主人公の内面の声を表現する存在として描きたかったのだ。

次の章もお楽しみに!

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