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記憶喪失のわたしが契約悪魔と精霊を追う理由  作者: 黒月セリカ
第一部. 契約悪魔と精霊の交差点:忘却の契約と廻る歯車
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第35話. 咄嗟の変更



「いたぞ、あそこだ...ッ!」


一本道の通りを走り抜けると、二人の目線の先には、空中で焦点が合っていまま、どこか血走っているような鋭い目で辺りを見渡す彼の姿があった。


「...もしかして、あの人影を探している...とか...」


セシルは走りながらも冷静に状況を分析していたが、その隣で走るクロノスは、彼女の言葉を耳に入れつつも、一言も返さなかった。


クロノスの視線はひたすらに空を捉え、上空の彼の次の動きを見極めようとしていた。


その瞬間、上空の彼は突如として、通りの向こうの一点を射抜き、その身体がひゅっと流れるように揺れ、飛び去ろうとした。


「あっ、また移動しちゃう!!」


セシルは瞬時に剣を抜き、カチッと音を立ててウィップソードへと変形させた。


しかし、地に足のついた彼女の刃が、空を行く彼に届くはずもなく、ただ、その背を見上げ、武器を構えたまま見送ることしかできなかった。


そんなセシルは力なく立ち止まると、突如として、見覚えのある真紅の鎖が目の前から石畳を突き破るように飛び出し、同時にクロノスの怒声に近しい声が響いた。


「おい、止まれ!!()()()っ!!」


一瞬にして空を裂き、勢いよく伸びていく鎖に、セシルは焦ったように後ろに身を引いた。


ガシャッン!!


「ッ――。」


鎖がアキラの片足首を見事に捉えた瞬間、彼の体はわずかにぐらつき、空中でバランスを崩しかけた。


しかし、すぐさま冷たい殺気を帯びた視線をクロノスへと向けると、力強く体勢を立て直し、そのまま空中に留まった。


「や、やった!」


セシルは鞭の形になったウィップソードの刃を石畳に垂らしたまま、片手で小さくガッツポーズを取る。


そんな中、アキラは遠くを一瞬一瞥すると、鎖で掴まれた足を振りほどこうとていた。


それを見て、クロノスはセシルの横へと静かに歩み寄ると、鎖を断ち切らせまいと、さらに強く手を握った。


「無駄だ。これ以上、キツネとガチョウ(鬼ごっこ)をする暇もない」


彼の目は、決して彼を逃がすまいとする確固たる決意に満ちていた。


「...ちっ、小賢しい。」


鎖を解くことができないと悟った彼は、ボソリと小さく、低い声で呟くいた。


次の瞬間、まるで何の迷いもないかのように、花々で形成されたあの異形の腕を軽く振り上げた。


「っ、来るぞセシル!」


クロノスの鋭い声が響いた瞬間、セシルは地面に垂らしていた刃を素早く上空へと軽く振り上げる。


すぐさま鞭のように伸びていた刃を引き戻し、剣の形へと変形させた彼女は、流れるような動作で姿勢を低くし、次の攻撃に備えるように鋭く構えを取った。


だが――


二人が予想していたような、あの波のように押し寄せる花々の奔流は、いつまで経っても現れることはなかった。


代わりに、空中の彼の周囲に突如として現れたのは、クロノスが以前セシルに渡していた真紅の短剣と酷似した形状を持つ、しかしそれとは対照的な青白く発光する短剣の群れだった。


それも、一本や二本などという生易しい数ではない。


まるで空間そのものが彼の意志に応じて短剣を生み出しているかのように、無数の剣が静かに浮かび上がっていた。


(っ、青白い色......まさかっ、最初に攻撃された時、あの剣が...)


セシルは、腰に残る、わずかに柄の部分だけがかろうじて留まった、砕け散った真紅の短剣にそっと手を添えた。


彼女の脳裏に、最初に受けたあの一撃によりクロノスによって作り出された真紅の短剣が砕け散ったあの記憶が鮮明に蘇り、あの時の感覚が、今再び身体を蝕んでいくように背筋を強張らせていた。


「...っ、」


(...あんな数が、押し寄せるのね...)


驚愕と警戒を滲ませる二人の視線の先で、空中の彼は意外な動きを見せた。


召喚された無数の短剣は、まるで意志を持つかのように静止したまま、一向に二人へと襲いかかる気配を見せないでいた。


それどころか、彼自身がその短剣の一本をゆっくりと手に取ったのだ。


「おい、何をしようとしているんだ!!」


痺れを切らしたクロノスが声を張り上げるが、その問いに対し、空中の彼は何の反応も示さなかった。


彼はただ肩を軽くすくめるような仕草をすると、手に取った短剣をまるで迷いなく、足首に絡みつく鎖から逃れる為か、自らの太ももへと刃を突き立て、切り落とそうとした。


「っ嘘!まさか、自分の足を切り落とし――」


その意図を察したセシルは、息を呑みながら口元を覆っていた。


だが、空中の彼が自分を突き立てようとするよりも早く、隣のクロノスが歯を食いしばり、勢いよく腕を振り下ろした。


「それ以上、好きにはさせないぞ!落ちやがれっ!」


次の瞬間、上空の彼の足首を捕らえたまま、一気に地面へと引きずり落とされた。


ドシャァァァァン!!!


轟音と共に、彼の身体が石畳に叩きつけられる。衝撃の余波で石畳は砕け、破片と砂埃が激しく舞い上がった。


飛び散る石片を避けるように、クロノスとセシルはそれぞれとっさに腕で顔を覆いながら、細めた目の隙間から、砂埃の向こうを睨みつけた。


やがて――揺らり、と、舞い上がる砂埃の影が、ゆっくりと立ち上がった。


無言のまま身体を起こすと、肩に積もった砂埃を手で払い落とした彼は、あたかも何事もなかったかのような動作を見せた。


その淡々とした様子を目の当たりにし、セシルは手に持つ剣を強く握りしめる。


「あれほどの衝撃を受けているはずなのに、普通にしていられるなんて……」


一方、クロノスは不安を滲ませた声でセシルに小さく囁いた。


「......あれの囮なんてできるのか?」


すると、その言葉にセシルは一瞬だけ、まるで挑戦的な笑みを浮かべると、静かに首を縦に振った。


「いえ、今更怖気づいている暇なんてありませんよ!」


「...そうか」


その言葉に、クロノスは一瞬驚きながらも、安堵の表情を浮かべ、軽く頷き返すと、二人は、再び前方へと意識を向けた。


視線の先には落下の衝撃で口の中を切ったのか、アキラは指先で軽く口元を拭っていた。


その顔は、まるでマスカレードマスクをつけたように、青白く大きな花で覆われている為、目元による表情の変化は読み取れない。


だが、彼の視線は、確かにセシルとクロノスをじろりと射抜いており、同時に、周囲の空気が一変した。


(うっ、空気がますます酷く...)


召喚された青白い短剣が、まるで主の意志を受けたかのように震え、脈打っており、そして、空間そのものが、ゆらりと歪み始めていた。


セシルは、痛みを感じる腕を一瞥しつつ、なおも警戒を怠らずアキラの動きを見つめていた。


「......。」


すると、彼は宙に浮く短剣のうちの一本を掴み取ると、今までのように宙を漂うのではなく、しっかりと地面を踏みしめ、一歩ずつこちらへと歩を進め始めた。


まるで、今までの間接的な攻撃を捨て、今度こそ自らの手で確実に仕留めようとするかのように。



――来るッ!!



セシルがクロノスの前に静かに出た瞬間、アキラは突如として足取りを鋭く変え、一瞬で二人の元へと突撃してきた。


「クロノスさん、援護を――!」


「あぁ!」


クロノスの叫びに応じ、セシルは即座に手の中の剣を変形させ、刃がまるで生き物のようにうねり、鋭く伸びると、鞭の形状を成したウィップソードとなった。


その瞬間、彼女の目にはただひとつの目標が映っていた。


「クロノスが近づける為にアキラの隙を作る」それが、今の彼女に課せられた役目だった。


しかし、アキラはそれを許さないように、彼の背後で宙に浮かんでいた無数の短剣が、一斉に閃光を放ちながら、まるで意志を持ったかのように、セシルの動きを先読みし、彼女の進路を塞ぐように殺到してきた。


シュンっ シュンっ 


「っ、こんなもの!!!」


セシルは即座にウィップソードを鞭のごとくしなやかにしならせ、空間を斬るように振り抜いた。


ガキンッ ガキン キーンっ


次々と襲いかかる短剣を、彼女は飛んでくる短剣を僅かに体に掠らせながらも、勢いよく叩き落としていった。


しかし、アキラが召喚した青白い短剣の数は圧倒的で、斬り捨てたかと思えば新たな短剣が次々と生み出され、無限のように降り注いでくる。


(...っ多い...ッ)


目の前を埋め尽くす青白い短剣、金属音が響き渡る中、光の雨が降るかのごとく無数の刃を叩き落とす度に周囲に火花を飛び散らせていた。


その中で、クロノスの真紅の鎖がセシルの周囲を守るように走り、短剣を弾きながら掻き消していっていた。


(よし、次の一撃をっ!)


そんな強い思いと共に、セシルは足を止め、冷静さを取り戻すために、深く息を吸った。


だが、その一瞬の隙を、アキラは見逃さなかった。


「油断している場合ではないだろ。」


「ぇッ!」


影のように飛び交う短剣の間を縫うように、音もなく迫ると、すでに短剣を逆手に持ち、狙い澄ました一撃を繰り出していた。


「なっ、早っ!」


セシルは驚愕しながらも、即座にウィップソードの刃を瞬時に直剣へと変形させ、両手で構えた。しかし、その瞬間。


「下がれセシル!!」


クロノスの鋭い声が耳に届いたことで、その声が警鐘となった。


セシルの目が、アキラの短剣の異常な速さを捉え、ウィップソードの刃が完全に戻るよりも先に、短剣が目の前まで迫っていた。


(っまず――)


鋭く突き出された短剣に、セシルは反射的に動こうとするも、避けるにはあまりに時間が足りず、背筋を凍りつかせた。


ガキンッ!!


次の瞬間、鋭い衝撃音とともに、火花が散り、同時に、青白い光と赤黒い輝きが絡み合い、爆ぜるように光を放っていた。


「ぐっ...」


「......ちっ。」


アキラの短剣は、セシルが持つ真紅の短剣――いや、もはや柄の部分だけが残った残骸の、ガード部分とグリップの隙間で刃を挟み込むように、ギリギリのところで受け止められていた。


(あっぶな...ギリギリ...)


あと少しでもズレていたら、自分の指ごと短剣が裂かれていたことだろう、と内心冷や汗が流れていた。


それと、同時に今、この瞬間、背後ではクロノスが自身の掌からアキラに力を注ぎこむ為に、確実にこちらへと向かっているはず。ならば――


(今は、耐えるしかっ...!)


セシルは歯を食いしばりながら、アキラの短剣を押さえつけるように力を込めた。


そして、もう片方の手で、ようやく元の形へと戻った直剣を滑らせるように握りしめた。


(クロノスさんが来るまでの辛抱よっ...!)


自らを鼓舞するように心の中でそう叫びながら、セシルは僅かに汗ばむ手で短剣を握りしめたまま、必死にアキラの一撃を受け止め続けていた。


しかし、短剣を受け止めてから、ほんの数秒しか経っていないはずなのに、まるで時間が引き延ばされたかのように、その瞬間が異様に長く感じられた。


そのとき、不意にアキラがゆっくりと、まるで何かを慈しむかのように、紫色の花々が絡み合っている、あの彼の異形の腕をセシルの方へと伸ばしてきた。


「ぇ、ひゃっ...!」


短剣を受け止めることに集中していたセシルは、その異様な光景に一瞬息を呑み、咄嗟に顔を引きらせ、ほんのわずかに体を引こうとした。


しかし、相手の動きを制限し、クロノスが隙を突くための時間を稼ぐ――それが自分の役目だった。


(下手に触られたら...でも、今は...!)


恐怖と冷静さの狭間で一瞬の逡巡しゅんじゅんが生まれたが、それでもセシルは決意を固めた。


(ううん、わたしはッ――)


迷いを振り切るように、彼女の瞳に再び鋭い光が宿らせると、即座に手の中の元の剣の形となっているウィップソードを持ち直し、手首を軸に素早く捻るように振り抜いた。


シュンッ


瞬間、手首の細やかな動きに呼応するように、剣の刃が鞭のように変形し、しなやかに伸びる。そして――


キーンッッ!!


鋭い音を響かせながら、しなった刃が下からすくい上げるようにアキラの短剣を打ち払った。


「ッ!!。」


突然の衝撃を受けたアキラは、予想外の一撃に僅かに体勢を崩し、口元に驚愕の色を滲ませていた。


しかし、セシルはそんな彼に構うことなく、柄の部分だけが残った真紅の短剣を力強く振り上げた。


「こ、れ、で、も...喰っらえっー!」


勢いのまま、もはやそれは短剣というより、まるで拳そのものを叩きつけるかのような凄まじい一撃で彼女は短剣を振り下ろした。


ガツンッッ!!


ぶつかり合う鋼の音が鳴り響く中、セシルの短剣は勢いよく振るわれ、アキラの花々で形成された異形の腕に深々と突き刺さった。


刃が埋め込まれた部分から、紫色の花弁の隙間を縫うように、じわじわと赤黒い光が滲み出しており、まるで、闇が花弁を侵食するかのように広がり、蠢くように脈打ちながらさらに濃さを増していった。


やがて、その光は腕全体に波紋のように広がり始め、まるで内部から膨れ上がるように、花々の表面を這うようにゆっくりと広がり――


「......なっ、きゃっーー、!」


辺りに漂っていた歪んだ空気が、一瞬にして収束したかと思うと、次の瞬間―― 爆発的な衝撃がその場を支配した。


ドォォォンッッ!!!


契約悪魔の力とアキラの力が激突し、空間そのものが震えるほどの強烈な爆風が巻き起こり、その衝撃波は四方八方へと広がり、瓦礫や砂埃を巻き上げながら、通り全体を飲み込んでいった。


その余波はセシルにも容赦なく襲いかかると、そのまま 凄まじい勢いで吹き飛ばされた彼女の視界は、一瞬にしてぐるぐると回転した。


(まずっ...このままじゃ――!)


爆発の衝撃で体勢を崩したまま、セシルは鋭く迫るアキラの気配を感じ取るが、それよりも先に脳裏をよぎったのは、自分の体が爆風に巻き上げられ、無防備なまま石畳の道へと叩きつけられる未来だった。


もしまともに着地できなければ、大怪我は免れない。だが、受け身を取る間もなく、 容赦のない風圧が体をさらに浮き上がらせていく。


その時――


「一旦、引くぞ!」


突如、背後から強い腕が伸び、彼女の体をしっかりと抱え込まれた。


(ぇっ!?)


驚く間もなく、視界が一気に流れると、次に目に入ったのは、セシルをしっかりと支えるクロノスの顔だった。


彼は迫り来る爆発の余波をものともせず、瞬時に周囲を見渡すと、素早く脇の建物へと真紅の鎖を撃ち込み、そして、その鎖を柱のように利用し、一気に爆風から距離を取った。


セシルは、その間も衝撃の余韻に呑まれながらも、クロノスの腕の中で、わずかに息を呑み、胸の奥をざわつかせていた。


(......わたし、囮役を買って出たのに)


本来ならば、自分がクロノスを動きやすくするために立ち回るはずだった。けれど、アキラの異形の腕が眼前に迫った瞬間、わずかに怯んでしまった。


結果として、大怪我をしては元も子もないと感じ、咄嗟に持っていた 真紅の短剣を叩き込むことで応戦してしまった。



――でも...もっと覚悟を決めていれば? もっと時間を稼ぐように冷静に動いていれば、クロノスさんがアキラさんに触れるチャンスがあったのでは...?



そんな後悔が押し寄せ、セシルは何も言えぬまま、 唇を噛みしめた。その時、不意に 優しい声がかかった。


「......良い判断だったぞ」


不意に投げかけられた言葉に、セシルは驚いて顔を上げた。


そこにいたクロノスは、まるで当然のことのように彼女を支え、安全な位置まで運び終えると、そっと地面へと降ろすと、何の前触れもなく、ぽん、と優しく頭を撫でた。


「...ごめんなさい、わたしがもう少し冷静に動いていれば...」


「ふっ、いいから、あれを見ろ」


クロノスは先ほどまでの張り詰めた表情とは打って変わり、どこか楽しげな笑みを浮かべながら、通りの先を指差すした。


そして、もう片方の手をセシルの頭に添え、そのまま強引に視線の向きを変えさせようとした。


「ちょ、いっ...だたたたたっ!」


思いがけない荒技に、セシルは思わず顔をしかめ、 じと目でクロノスを睨みつけていた。


それでもクロノスは意に介さず、まるで「いいから見てみろ」と言わんばかりに手の力を緩める気配はなかった。


「もぅ、危うく首が折れるところだったんですけど......って、...ん...?」


渋々、クロノスの指し示す方向へと視線を向けたセシルは、一瞬、目の前の光景に息を呑んだ。


建物の一部が崩れ落ち、地面には瓦礫が散乱している。火の手が上がった場所からは煙が立ち上り、空気は焼け焦げた臭いで満たされていた。そんな荒廃した景色の中で、 アキラは初めて動きを止めていた。


真正面から突撃してきていた男が、今はわずかに膝を折り、地面に片手をついている。その姿が、先ほどまでの狂気的なまでの勢いと比べて、明らかに異質だった。


そして、あの花々で形成された彼の異形の腕が、もう片方の腕で強く押さえ込まれていた。


(えっ、...)


よく見ると、 藤色と紫色に咲き誇っていた花の一部が、枯れ始め、黒ずんでいた。


まるで何かに侵されているかのように、その部分だけが異常なまでに萎れ、生命を失い、しかし、同時にその隙間からはまた新たな花が芽吹こうとしているのが見える。


「クロノスさん、あれ...!」


慌ててクロノスの顔を見上げると、彼は「気づいたか?」と言いたげな表情を浮かべながら、一歩前へと進み出た。


「俺が作り出した武器を叩き込んだことで、ああなったんだろう? つまり――俺の力は、奴に対して十分に有効ってことだ」


セシルはその言葉に 息を呑み、ゆっくりと頷いた。 確かに、クロノスの力が込められた短剣がアキラの異形の腕に変化をもたらしていた。


それはつまり、契約悪魔であるクロノスの力が、アキラの異形に対して十分に対抗し得るということだ。


「なら――俺が前に出る。ついてこい、次の作戦に移るぞ!」


クロノスは短くそう告げると、セシルに一瞬視線を送っただけで、迷うことなくアキラへと向かって駆け出した。


「え、ちょ、えぇぇ!!‟次の作戦”って何ですか!?」


突然の展開に、セシルは慌てて声を上げたが、クロノスは一切振り返ることなく突き進んでいた。


(うぅん、クロノスさんなら、何か考えがある...なら、行くしか――!)


セシルは瞬時に迷いを振り払い、表情を引き締めると、 腰の鞘に収まった剣へと視線を落とし、その存在を確かめるように軽く柄を握った。


そして、一歩を踏み出すと、そのままクロノスの背中を追うように、 しっかりと前を向き、駆け出した。

第一部の最終話が本格的に結末が決まったので、予定よりかなり早く投稿させていただきました!!

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