stage5 ランク
「・・・人の兄さんに何しようとしてくれてんですか、このエセ魔術師!!」
新一の目の前に突如現れ、炎弾から救ってくれたのは妹の実帆だった。
新一はまだ今起きた状況が飲み込めていなかった。
「え・・・いや・・実帆・・・・お前・・何で・・・」
声を出すのがやっと。そんな状況だった彼は
この程度の言葉ぐらいしかかけることもできなかった。
徐々に鮮明になっていく頭の中で一番初めに浮かんだのは、
実の妹の言葉だった。『・・・このエセ魔術師!』と、確かに彼女は言っていた。
すると、その青年が不意に高笑いをし始めた。
「あはははは!これは運がいい!まさかこのタイミングでランクSの
『能力創造』に会えるとは!」
ランクとは同じ能力でも効果範囲、発動速度等に差があるためにつけられたもので
上から順にA→B→C→D→E→Fと表される。
その中でもランクSとは今までに確認されてない能力を使える人間が現れた際に
つけられる呼称で、俗に言う貴重能力である。
実帆は青年の反応から考えていた1つの可能性に確信を抱いた。
「やっぱりあんたたちの狙いは・・・」
言葉は青年の笑みを含む言葉によってかき消される。
「さぁて?なんでしょうねぇ?
まぁ今日は一度身を引かせていただきますよ。
そこの能力者のランクは精々B止まりみたいですし」
青年は先ほどまで自分が狙っていた能力者を指差して言った。
「身を引かせる余裕を・・・与えると思うな!」
実帆が腕を振るうと公園の噴水から水が波のような形状を取り
青年の方へ向かっていった。
「ほほぅ。この短時間に私の弱点が水だと判断したわけですか・・・」
青年は微笑を崩さないまま波の方を見ながらこう続けた。
「まぁそのおかげで私は逃げやすくなるですけどねぇ?」
その瞬間、青年の形をした人形達が波のほうへと向かう。
人形は波にぶつかるたびに白い湯気を出しながら消えていき、
確実に波の規模を減らしていった。
そう、青年の人形の属性は炎。
水に当たることでその水を水蒸気に変え、
あたりに霧のようなものを発生させたのである。
「なっ・・・!」
実帆が気づいたときにはもう遅かった。
霧が晴れたときにはその場に青年はいなかった。