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小悪党、未来の嫁を拾う。  作者: かがみスイッチ
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自己紹介をしよう。

描くの楽しいーー!!でも誤字脱字怖いーーー!!


「まずは、アナタの事を教えてくれないかしら、私はまだアナタの事何も知らないわ、何でこんなところにいるの?」


言葉に出来ぬ満足感に浸っていた俺は、彼女に聞かれて思い出す。


「ああ、忘れてた、確かにそうだな、俺の名前はトート、歳は二十歳、ここから南のゲパン領出身だ、この山奥にいる理由だが山の麓のワンカ領で領主を騙して金を謀り、それがバレて追われ、急いでこの山の先の港町まで逃げていたんだ」


普通に喋れてただろうか、彼女はこんな小悪党嫌いだろうか、卑屈な考えがよぎって、思わず彼女のリアクションが気になる。


「あら、悪い人なのね…、私の名前はシシィ、シシィ・リンデン、十七歳よ、ワンカ領出身で母がリンデン家の出身よ、そして龍神様に寵児にして頂いたわ。」


気にした素振りは無さそうで顔には出さぬが安心する、彼女も自分の事を話してくれたので、疑問に思っていた事を聞いてみた。


「気になっていたんだが寵児ってどういった物なんだ?噂でしか聞いた事ない上、その噂もてんでバラバラだ」


「アナタの聞いた事がある噂ってどう言ったものなの?」


「大抵は又聞きばかりだな、知り合いの友達が寵児で選ばれた瞬間に身長が2メートルになり人並外れた力を得たとか、別の奴が言ってたのは寵児に選ばれて夢で恐ろしい顔をした龍神様に怒られたとかだな」


「割と本当の事が伝えられてるのね…力を与えられる事と夢で龍神様に会えるのは本当よ、残念ながら身長は伸びないし龍神様の顔は怖くないわ。」


確かに彼女の身長は横に並ぶと思っていたより低かった、150センチ半ばといったところだろう、しかし、あの戦いの最中では俺は見上げるほど強大に彼女を見ていた。

喋り方や歳に不相応な、落ち着き払った立ち振る舞い、常ならぬ様の彼女に、より魅了されてしまいそうになる、とりあえず思考を現実へ戻し、平静を装い答えた。


「そうなのか、武を司る神だからそれは恐ろしい顔をしてると思ってたな。」


「フフフ、寧ろ優しい顔つきよ、ただ龍神様の纏う厳かな雰囲気は神様と呼ばれるに相応しい物ね」


「なるほど、その龍神様に夢で会って、力を与えられたと、与えられた者が寵児である訳か」


「ええそうよ、ただ神様も何柱かいらっしゃるから寵児の力の種類も何種類かあるわ、私が会ったのは武を司る龍神様、だからこの武力を与えられたのよ」


そう言うと彼女は静かに剣を抜き、軽く一振りした、それだけで目の前の木が音を立てて倒れてしまう、恐ろしく早い太刀筋は俺には見えなかったが、切り口の綺麗さでその技術の高さが伺える。


「…そんなナマクラでよく切れるな、それに俺には剣先が消えたように見えた、全く、凄い速さだ。」


「フフフ、龍神様に夢で長い時間教えて頂いたのよ。」


「夢で?」


「えぇ、現実で肉体に力を与えられる前日の夢で、力を得た後と同じ膂力の状態になるの、その夢には剣以外何もないのよ、そんな中で、数百年分、文字通り夢中で剣のことだけを考え自分を鍛えるの。」


想像したら異様な光景だった、ただの少女が剣を片手に数百年の修行、そんなものを聞くと強さへの渇望よりも恐ろしさの方が勝ってしまう。


「そりゃあ、凄いが俺なら精神が持たんな。」


「当たり前ね、私だって夢から覚めた時には、性格も喋り方も顔付きも変わってたから、私が別人になったかと周りが騒いでいたわ。

……夢の中では龍神様以外に話す相手も居ないわ、それなのに顔を見せにくるのは数十年に一度、そして終わりの見えない程遠い剣の道、一人で、しかも我流だから必死で相手を想像して、それを倒して、また作りそして倒す、これが夢での日常よ。」


彼女はどこか懐かしみ、その懐かしさを楽しむ様な目をして遠くを眺めていた。

俺はその顔だけでただ生きている者には理解出来ない事なのだと悟った、幾重にも現れる壁を乗り越えてこっちへ戻ってきたのだろう、最早常人の想像の域を超えた彼女へどう言った言葉で返せばいいか分からず冗談に逃げてしまう。


「なんというか…思ったよりも夢の無い話だな」


「プフフッ、上手いって褒めてあげる?」


こちらを上目遣いで悪戯っ子の様に見つめるまるで年相応に見える表情に心臓が跳ねるのが分かった、見つめ続けたい気持ちを抑え、答えた。


「いや、いい…なんか納得した。」


「納得?」


「ああ、見た目の年齢と振る舞いが釣り合い取れなくて疑問だったんだ、数百年の修行をしたと聞いて、納得いった」


「そう………まぁいいわ、ある程度アナタの事も知れたし、それで今向かってる港町ってのはどんな所なの?」


謎の間が気にはなるがとりあえず話す。


「…?…ああ、目的地は、ここから3日程東に行った先にある、この山の麓のマインという街だ、デカい港があって他国からの貿易で賑わってる、遠方の国の食材に料理や服がそこには全て集まる、この国でも五指に入る都会だろうな」


「都会なんて初めてだわ、楽しみね」


シシィは港町の風景を想像してか楽しそうに笑っていた

…だがその前に言いにくいがこれは言わないといけない…


「……楽しみな所申し訳ないが残念な知らせがある」


「何?道に迷ったの?」


「いいや、方角も太陽でわかるし方位磁針も壊れちゃいない、第一、道なんてありゃしないだろ。」


「それもそうね、なら何故そんな顔をしてるのかしら」


「…食料が足りない。」


明らかにシシィの動きが止まる、顔をこちらに向けた時にはそれはもうなんとも言えない表情をしていた。


「それは…その…何故無いの?」


「元々俺一人分すら無かったんだ、さっきも言ったが急いで逃げてたから準備の時間が無かったんだよ、今あるのはギリギリ二人の一食分くらいだ。」


「アナタ一人だと、どうするつもりだったのかしら?…仕方がないわ、私が狩ってくるわよ」


「すまん、あんな啖呵を切っておいて申し訳ない。」


「全くね、でも許すわ、武力で切り抜けられない所はアナタに任せるしか無いのだし、先に私の仕事が来ただけよ。」


「ありがとう、助かるよ。」


そうして俺たちは夕暮れまで山奥を進んで行った。




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