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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第8章 相対の夜、別離の朝

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第2話 震える手

「姫様! 姫様、お起きくださいませ。そろそろ、ご夕食のお時間ですぞ」



 ……ん……?

 誰か、呼んでる……?


 夕食……って……。



「姫様っ!」


 まだぼうっとする頭を、ゆるゆると横に向ける。


「ん……。あー……おはよ、セバスチャン」

「な――っ! お、おはよーではございません! 夕食でございますっ!」


「……夕、食……?」



 ああ……そっか。

 部屋に戻ってから、ベッドに倒れ込んで……。


 なーんか、いろいろ……二日間のこと、思い出したりしてて……。


 ……んで、いつの間にか――眠り込んじゃってた、ワケか……。



 むくりと起き上がり、ゴシゴシと瞼をこする。


「ごめんねぇセバスチャン。眠っちゃってた、みたい……」

「それは拝見すればわかりますが……。様々なことがございましたからなぁ、お疲れなのでしょう」


 起き上がろうとする私の背を優しく支えながら、セバスチャンは(いた)わるように声を掛けてくれる。


「うん。だいぶ疲れたよ。……あ。でも、セバスチャンも疲れてたんじゃ……。もう大丈夫なの?」

「は、はい……。お恥ずかしいところをお見せしてしまいまして、申し訳ございませんでした」


 恥ずかしそうに視線を逸らし、やたらと目を(またた)いてるセバスチャンをぼーっと眺めてたら……何故だか、唐突に抱きつきたくなって来た。

 寝ぼけ(まなこ)で、ぎゅむむっと、首元(?)に抱きついてみる。


「ピギャ…ッ!? ひっ、ひひ……っ、姫様っ!?」


 当然のことながら、セバスチャンはびっくりしたように、翼をバサバサさせた。


「姫様っ、い――っ、いかがなされましたっ?……姫様っ? 姫様ーーーっ!?」

「……ごめん、セバスチャン。もう少し、このまま……」


「ピャ?……姫、様……?」



 ……あー……、あったかい。

 ふわふわもふもふで……気持ちいーなぁ……。


 こーしてると、どーしてだかホッとする……。



「……えへっ。ごめんね? セバスチャンの顔見たら、なんか急に……。あはははっ」


 体を離したとたん、妙に照れ臭くなって……その恥ずかしさを振り払うように笑った。


「はぁ……?」


 セバスチャンは不思議そうに首をかしげてたけど、すぐに気を取り直したみたいで、


「さあさあ、ご夕食でございますぞ! じきにアンナとエレンが参りますので、お早くお支度願いますっ」


 翼をバッサバッサさせて()かした。




 アンナさんとエレンさんが、テーブルセッティングしてくれている間。

 私は椅子に座りながら、ちらちらとドアの方に目をやり、()()()()を気にしていた。



 『あること』。

 王子がそろそろ、この部屋に来るんじゃないか――ということ。



 ……だって。

 昨夜も今朝も、一緒にここで食べたんだし。


 夕食だって、一緒に……。



「どうかなさいましたか、姫様? 何やら、落ち着かぬご様子ですが……」

「えっ!?……あ、うっ、ううんっ?……何でもないよっ?」


「……さようでございますか? ならば、よろしいのですが……」


 セバスチャンは、イマイチ納得行かない――って感じで見てたけど、へららっと笑ってごまかす。



 ……王子、さっき怒ってたみたいだったし……。

 今日は、一緒に食べないの……かな?


 明日帰るって言ってたのに……。

 このまま、気まずい状態のまま、お別れすることになっちゃったら……ヤダ、な……。



「ね――、ねえ、セバスチャン? 今日は、その……王子は、一緒じゃないの?」

「――は? ギルフォード様でございますか? ギルフォード様は、本日は、お一人でお召し上がりになりたいと申されましたので、客間の方に、ご用意させておりますが?」


「そっ、そーなんだ?……そっか。やっぱり……そーゆーこと、なんだ……」



 そういうこともあるかもって、予想してたはずなのに。

 何故だか、胸がズキズキと痛んだ。



 ……王子、やっぱり怒ってるんだ。

 私の顔見て食事するのが、嫌なんだ。

 だから一人で……。


 でも、そうしたら――。



「姫様っ? どうなされましたっ?」

「――え、何……? どうかしたの、セバスチャン?」


「どうかしたの、ではございません! お顔の色が優れませぬ上に、お手が震えていらっしゃいますぞっ?」

「……え? 震え……?」


 下を向いて確かめると、セバスチャンが言うように、膝の上に置かれた私の手は、小刻(こきざ)みに震えていた。


「……あれ?……何、これ?」


 両手を僅かに上げ、呆然と見つめる。


「お……おかしいな。どうして、こんな……。震えが……止まらない……」



 ……やだ。なんで――?

 どーして私、こんな……いきなり……。



「姫様!」

「――っ!」


 声のした方へ目を向けると、そこにはエレンさんがいて……。

 私の両手を自分の両手で優しく包み込んで、目が合うと、穏やかに微笑んだ。


「姫様。どうか、落ち着いてくださいませ。……何の問題もございません。問題ございませんから――」

「……エレン、さん――?」


 エレンさんは私の両手を柔らかく握ったまま、その場で両膝をついて私を見上げた。

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