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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第6章 それぞれの想い

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第7話 不機嫌な騎士見習い

「えっと……。それでね、カイルさん。カイルさんに伝えなきゃいけないこと、なんだけど……」

「はい」


「その……伝えなきゃいけないことが、ホントにいっぱいあってね。えー……っと……長くなりそうだから、とりあえず顔上げて?」

「――はい」


 カイルさんはゆっくりと顔を上げた。

 相変わらずの綺麗なコバルトグリーンの瞳が、まっすぐに私を捉える。

 思わず見惚れてしまいそうになったけど、慌てて目をそらし、


「それで……。それから、そのぉ~……」


 私はちらっと、横目で王子を窺った。


「あの……王子?」


「――ん? なんだい、リア?」

「え~と……。カイルさんと、二人だけで話したいことがあるんです。……席、外してもらえませんか?」


「えっ?」


 そんなことを言われるとは、少しも思っていなかったのか、王子は驚いたように目を見張った。

 いつもキリリとしてる形の良い眉が、ちょっとだけハの字に近付く。


「……しかし、二人きりというのは――」


 王子に何か言われる前に、


「お願いします!」


 大声で伝え、私は思いきり頭を下げた。



 ……カイルさんは、桜さんのことが好きだったんだもん。


 なのに、彼女はもう、この世界には戻って来られないんだって知ったら、すごくショックだと思う。

 もしかしたら、取り乱しちゃうことだって、あるかも知れない。


 そんなとこ、王子には見られたくないだろうし……王子の前では、本音で話しにくいと思うんだよね。


 だから……。



「お願いしますっ!」


 大きな声で、もう一度。

 受け入れてもらえるまで、頭は上げないつもりだった。


 すると。

 頭上で、王子が深々とため息をついて。


「……わかった。君にそこまでされてしまったら、無下には出来ないからね」

「ありがとうございますっ!」


 勢いよく上半身を上げ、私は満面の笑みを浮かべる。


「ただし……」


 王子はそっと、私の耳元に顔を寄せると、


「私が、君に求婚している最中だったことを、忘れないで欲しい。……後でまた、私のために時間を作ってもらうよ。いいね?」


 ささやくと、私の頬に素早くキスをした。


「な――っ!……な……な~~~っ!」


 びっくりして、金魚みたいに口をパクパクする私に、王子はにこりと笑い掛け、軽くウィンクする。


「アルフレドと、少し時間を潰して来るよ。それまでに、話を終わらせておいてくれ。――カイル、リアを頼む」

「――は!」


 カイルさんに一声掛け、ひらりと馬のアルフレドに飛び乗ると、王子は颯爽(さっそう)と、何処(いずこ)かへと駆けて行ってしまった。

 私は両手で頬を押さえ、呆気(あっけ)に取られたまま、遠ざかって行く王子の背中を見送る。



 ……な……なんなの、あの人?

 いっつも突然、変なことして来るんだから――!


 ……それに、ウィンクって……。


 実際にウィンクする人なんて、生まれて初めて見た気がする……。(……あれ? 前にも見たっけ?……でもどっちにしろ、キザな人ってことには変わりないよね……)



「ギルフォード様と、ずいぶん親しくなられたのですね」

「……え?」


 気が付くと、カイルさんが私の横にいて、すごく厳しい顔つきで、私をじっと見つめていた。

 なんだか、非難しているような……すごく冷たい眼差しで。



 カイル……さん?

 もしかして、怒ってる――?


 ……でも、どうして……。



「しっ、親しいなんて、そんな――! 王子が、やたらと私の反応面白がって、からかって来るってゆーか……。とっ、とにかく、べつに親しくなんかないですよ! 会ってから二日目ですよ? そんな早く、親しくなれるワケないじゃないですか!」



 ……ん?

 会ってから二日――?


 ……そっか。

 考えてみたら、王子と知り合ってから、まだその程度しか経ってないんだ。


 この国に来てからだって、二日しか経ってない――ってことだよね?

 たった二日の間に、いろんなことがあったもんだから、なんだか信じらんないけど。


 ……そっか。まだ二日。……二日かぁ……。



「婚約というのはどういうことなのですか? 姫様は、ギルフォード王子に、婚約解消されたはずでは――?」

「え?……あ、あぁ、そのこと……。それはほらっ、なんてゆーか、えっと……」


「サクラ様が姫様の代役をしている間に、王子の気が変わった――ということなのですか? 本物の姫様ではないあなたに、恋をしてしまったと?」

「……へ?……カイル……さん?」


「それでは、姫様が戻った時に、また……また姫様が、傷付くことになるのではありませんか? 姫様とあなたの違いに、王子が気付いたら……再度、婚約解消ということになるのでは?」

「――え? また姫様が傷付くって……それはないですよ。だって姫様は――」



 ――っと。

 カイルさんに、まだ何も話してないんだから、通じるワケないんだった。



「えっと……だからね? まずは落ち着いて、私の話を聞いてもらいたいんです。これから話すことは、きっと……きっとカイルさんを、悲しませてしまうことになると思うけど……。でも、聞いて欲しい。聞いてもらわなきゃいけないの」


「サクラ様……?」



 桜さんを好きなカイルさんに。

 実は、桜さんはこの世界の人じゃなくて……私の方が、この世界の人間なんだってことを。


 そして、もしかしたらもう二度と……桜さんには会えないかも知れない、ってことを。



 伝えなきゃいけないのは、辛い。

 辛いけど……でも言わなきゃ。


 だって、一番辛いのは……カイルさんなんだから。

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