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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第6章 それぞれの想い

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第5話 唐突なプロポーズ

「……はつ……こい……?」


 あまりにも意外な言葉に、私はあんぐりと口を開けてしまった。


「そうだ。君が私の、初恋の相手だよ。……リア」


 王子は優しく微笑み、私の頬へと、そっと手を伸ばす。

 だけど、私は反射的に片足を後ろへ引き、逃れるように顎を引いてしまった。


「……リア……」


 私の反応にショックを受けたように、一瞬手を震わせ、王子は力なく腕を下ろした。


「あ、あの……それで、それからどうしたんですか? すぐ自分の国に戻ったんですか?」


 気まずくて、王子の顔をまともに見られなかった私は、目を逸らしたまま、話の先を促した。


「え? あ、ああ――……うん。婚約者がどんな子か、自分の目で確認出来たからね。すぐに戻ったよ。そしてその足で、父上にお願いしに行った。『リナリア姫との婚姻のお話を、正式に進めていただきたいのですが』――とね」


「えっ?……それじゃ、婚約は……王子の意思で進められたんですか?」


「そうだよ。断ることも出来る話だったが、私は一目で君を気に入ってしまったのだからね。話を進めたいと望むのは、当然のことだろう?」

「でも……なのに、今度は自分の方から、婚約を破棄したんでしょう?」


 思わず、非難めいた視線を向けてしまった。

 王子は私を辛そうに見返して……軽く目をつむり、ため息を漏らした。


「勝手は承知している。……だが、ああするしかなかったんだ。私は、自分の気持ちを(いつわ)ってまで、リア――……いや、あの子と共に生きることは出来なかった」

「……『あの子』……」


「そう、『あの子』だ。……私が、次にリナリア姫に会えたのは、それから一年後のことだった。……前日は、また姫に会えるという喜びで、一日中落ち着かなかったよ。夜もろくに眠れなかった。……しかし、私の前に現れた少女は……既に、別人になっていた」


「えっ!? 別人だってわかったんですか!? 見てすぐに!?」


 興奮して、つい話に割り込んでしまった。

 王子は私を流し目で見てから、微かに苦笑した。


「いや。さすがに、目の前にいるのは、リナリア姫とは別人だなんてことは、思いもしなかったよ。……ただ、一年前目にしたあの子とは……外見以外、全てが変わってしまったようにしか、私には思えなかった。あの子の面影は、リア――……いや、サクラには、少しも感じられなかったからね」


「でも……初恋って言ったって、子供の頃の話なんでしょう? しかも、たった一回、ちらっと顔を見たってだけのことじゃないですか。ほんの一瞬、気になったってだけの女の子のことを……まさか、十年間も思い続けてたワケじゃないんでしょう? だったら、たとえ性格が変わっちゃったとしても、桜さんには、桜さんのいいところが、たくさんあったはずなんだし……。十年もあれば、そのぅ……」


「『十年もあれば』? ……『十年もあれば』、生まれて初めて心奪われた人を忘れ――目の前にいる少女を、好きになることが出来たのではないか。……君は、そう言いたいのかい?」


「えっ?……え、ええ……」


 王子の瞳が冷たく光り、私を見据える。


 その視線はあまりにも鋭くて、激しくて……。

 目を逸らしたいと思っても、何故か、逸らすことが出来なかった。


 私は王子の瞳にとらわれたまま、胸の中心辺りに置いていた手を、ギュッと握った。


「私だって、出来ることならそうしたかった。目の前にいる少女を……いつ頃からか、私を(した)うようになり……まるで、私だけが救いだとでも言うような、すがるような目で見上げて来る彼女を――……一生、守ってあげることが出来たらと……そうしなければいけないと、ずっと己に言い聞かせて来た」


 視線の激しさは、次第に弱まって行って……。

 王子は、私からそっと視線を外すと、辛そうに眉根を寄せ、うつむいた。


「……だが、やはり無理だった。私は、一生自分を――彼女を――そして、周囲の者達を騙し、己の心をごまかして生きて行くことなど……出来はしなかったんだ」

「……王子……」


「昨夜、君に出会って――……いや、再会することが出来て、私はつくづく思い知った。……恋とは、しようと思ってするものではない。したいと思えば、叶えられるものでもない。恋とは……恋とは、気付かぬうちに始まって、追い求めずにはいられないもの。……常に、対象に向けて駆けてゆく心なのだと。……リア」

「――は、はいっ?」


「私は、君が好きだ。初めて出会った時から……。君がリアだとわかる前から、ずっと……ずっと君に、惹かれ続けている」

「……そ、そんな……」


「リア。改めてお願いするよ。……今すぐにとは言わない。だが、近い将来……数年先でもいい。私の伴侶(はんりょ)となって……一生、側にいてくれないか?」

「……ふぇ――っ!?」



 ……っとぉ――。……変な声出ちゃった。


 ……って、いやいやっ、そんなことはどーでもよくてッ!



 今、この人……何て言った?

 たしか、『伴侶』だとか、『一生、側にいてくれ』……なんてことを、言ってた気がする……けど……。



「……え。……え……え、えぇええええーーーーーーッ!?」


 私は心底びっくりして、ずささささっと後ずさってしまった。



 ……なっ、なな、な――っ!

 何言ってんのいきなりっ!?


 ……こ、これって……これって、つまり……つまり、早い話が……。


 ぷ――っ、ぷろぽおず……ってヤツぅううッ!?

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