第2話 神様との対話
「神様っ! ありがとう、また会ってくれて! この前、あんな形でお別れすることになっちゃったから、もう二度と会いたくない! とか思われてたら、どーしよーかと思ったよ!」
開口一番にお礼を言うと、神様はビックリしたように私を見た後、ぷいっと横を向いてしまった。
「べ、べつに……。二度と会わないなんて、オレは一言も言ってないだろ!」
「……うん。それはそうなんだけど……。だって、この前はすっごく怒ってたから……」
「お、怒ったワケじゃない! おまえと話すのに飽きたから、戻してやっただけだ!」
「え、そうなの?……なーんだ。よかったぁ~。怒ってたワケじゃなかったんだ?」
ホッとして、笑みがこぼれる。
神様は心なしか頬を染め、
「お……おぅ……。怒ってたワケじゃ、ない……」
もごもごと、同じ言葉を繰り返した。
「そっ、それで? おまえは今日、何しに来たんだよ? 話がある――とかって、言ってたみたいだが」
神様は、何故かそわそわした様子で、私の顔をちらちらと窺っている。
妙な態度は気になったけど、あえて無視して、本題に入ることにした。
だって、また神様の機嫌を損ねるようなこと言っちゃったら、話が最後まで終わらないうちに、
『もう帰れッ!!』
……ってことに、なっちゃうかもしれないし。
とにかく、先手必勝よ!
この勝負には、絶対負けられないんだから!
「そうなの! あのねっ。私がここに来たワケは……神様と関係したところで、私の未来が二つに分かれるって、お父様に聞いたからなの!」
「……おとう……さま?……って、ああ……。あいつのことか……」
「うん。お父様がね、私に関する未来の夢……予知夢ってものを見ちゃったんだって。それでね、その未来は二つあって、私がどちらかを選ぶことで、起こる出来事が違って来るんだって。その二つの選択肢が示されるところが、どうやら、神様と関係してるみたいで……。だからね。神様に会いに来れば、何かわかるかもしれないって思って」
「二つの、未来……?」
眉間にしわを寄せて、神様がつぶやく。
えぇ~……っと……。
……だ、ダイジョーブかな?
神様も、ピンと来てない感じだけど……。
私は不安を抱えつつ、神様の次の言葉を待った。
「……それで? オレと会えば、その……せんたくし、ってヤツが示されるって、あいつが言ったのか?」
「え?……あぁ、ううん。そこまでは……。確か、神様と再び会う時が、選択の時だ……なんてことは、言ってたけど」
「それって、オレと会う日に、選択することになる……ってだけの話じゃないのか? 直接、オレと関係あるワケじゃないんじゃ……?」
「えっ。……あ、でも。選択は、神様と関係したところに現れるらしい――とも言ってたよ?」
「だから、オレと関係したとこってだけで、オレがそのせんたくしってヤツを、直接示すワケじゃないんだろ?」
「……あ……うん。それは、そーかもしれない……けど……」
「だったら、オレ自身には、何の関係もないんじゃないか? オレが、責任感じなきゃいけないよーなことじゃ、ないよな?」
「う……うん。……そー……だね。……そー、かも……」
「あー、よかった! まーたオレのせいだとかって、文句言われたくないもんな。それ聞いて安心したー」
……なによ。
この前のこと、『怒ったワケじゃない』とか言ってたけど、ちゃっかり根に持ってたんじゃない……。
心でつぶやきながらも、なるべく、顔には出さないようにして、
「えー……っと。その話は、まあ……ちょこっと横に置いといて。神様の話したいことを、たっくさん話そーよ!」
「……オレの? 話したい……こと?」
「うん。せっかくまた、こーして会えたんだし。私の選択に、直接、神様が関係ないんだとしても……このまま『はい、そーですか』って向こうに戻ったんじゃ、あんまり素っ気ないじゃない? だから、神様の方で、何か話したいことがあるなら言って? 何でも聞くから」
「オレの……話したい、こと……」
もう一度声に出し、神様は沈黙しながら、なにやら考え込んでいた。
しばらくしてから、顔を上げると、
「話したいことってゆーかさ。実はオレ、おまえらに、お別れ言わなきゃいけないんだ」
神様はすごく真剣な顔をして、予想外の言葉を発した。
「……え?……お別れ……?」
口にした瞬間、どくんと心臓が跳ね上がった。
『終焉の時が近付いている』ってゆー、お父様の言葉が、頭をよぎってしまったから……。
「お別れって……それ、どーゆー意味? 神様、どっか行っちゃうの?」
神様は、自分に死期が近付いてるってこと、知ってるんだろうか?
ヒヤヒヤしながら訊ねると、
「ああ、行く。行くって決めた。オレ……桜に会いに行く!」
今度は、すごく清々しい顔をして、神様は、キッパリした口調で宣言した。




