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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第12話 先生の意見

 お父様の話を聞いてから、神様のところへ行くのが怖くなっちゃったな……。

 ずっと、もう一度会いに行ってみようって、思ってたのに……。



 だって、次に神様に会う時が、二つの選択を迫られる時だなんて……。

 どんな選択だかわからないけど、どっちにしろ、神様のところに行ったとたん、運命は動き出しちゃう……ってことなんだよね?


 どっちの未来に進んでも、私の身近な人が危険にさらされる。しかも、絶対に避けられない。


 そんなこと知っちゃったら、もう……体も心もすくんじゃって、どうしていいのかわからないよ。



 第一、危険って、どの程度のものなの?

 ……まさか、生死に関わる……ってほどのことじゃないよね?


 お父様は、私が泣くことになる――って言ってたから、かすり傷を負う程度の危険じゃないんだろうし……。



 ……ダメだ。

 やっぱり怖い。


 私、ホントに……どーしたらいーんだろう?



「おい、どうした? 気分でも悪いのか?」

「……えっ?」


 ハッとして顔を上げると、珍しく、先生が心配そうに覗き込んでいた。


「あ……。すみません。勉強中、でしたよね……」

「いつもであれば、顔を洗って出直して来い――とでも言うところだが。顔色が悪いぞ? 気分が優れないのであれば、続きは明日にしてもいいが――」


「いえ、大丈夫です。……ちょっと、考え事ってゆーか……悩み事があるだけですから」

「悩み事? 元護衛君と、隣国の王子のことか?」


「『元護衛君』って……。もー。ちゃんと名前で呼んであげてくださいよ。……二人のことも、もちろんありますけど……。今は、別のことで悩んでます」


「ほう? 君が、色恋のこと以外で悩んでいるとは、珍しいな。聞いてやるから、話してみたまえ」



 ……なんか、すっごく失礼なこと言われてる気がするけど……。

 今は、言い返す気にもなれないや……。



「あくまで『もしも』の話として、考えて欲しいんですけど……。先生は、ある予知夢の持ち主から、『二つの未来が示される夢を見た。どちらの未来に進んでも、身近な人が危険にさらされる。しかも、絶対に避けられない。その選択が示される場所は、どこどこだ』って言われたら、どーしますか? 選択を示されるってゆー場所へ、すぐに向かうことが出来ますか?」


「なに? 二つの未来だと?」


「そーです。どっちかの未来が、自分の選択によって、確実に起こるんです。どっちに進んだとしても、身近な人に危険なことが起こる……。それがわかってて、選択が示される場所へ行けますか? 怖いって思いませんか?」


「……これはまた……予想外だったな。君のことだから、もっとバカバカしいことで悩んでいるのかと思っていたが」

「……先生……」



 またしても、すっごく失礼なこと言われてるけど……(さっきと)以下同文。



「それで? その二つの未来とやらで、それぞれ何が起こるか――誰に危険が及ぶのかまで、わかっているのか?」


「……いえ、全然。ただ、絶対避けられない選択肢が二つあって……そのどちらかを選ぶかによって、未来が変わる。誰かまではわからないけど、身近な人に危険なことが起こる……ってことだけが、確実なんです」


「ならば、さっさと選択が示される場所とやらへ、行けばよいではないか」


「えっ?……だ、だって、身近な人が危険にさらされるんですよ? どっちの未来でも、確実に、ですよ? さっさとなんて、そんな簡単には……。先生は、怖くないんですか?」


「怖いか怖くないかと訊かれても、確実に起こる未来なのだろう? 変えられないのであれば、さっさと行ってさっさと起こしてしまった方が、より建設的ではないか。悩むだけ無駄だろう? 変えられないのだから」


「そっ――れは、そーなんです……けど……」



 頭ではわかってるけど……。

 でも、やっぱり怖いんだもん!



「『一人でその場所へ行くのが怖い』と言うのなら、ついて行ってやらんこともないが?」


 先生の口から出た言葉に、きょとんとする。


「……はい?……あの……私、たとえ話をしたつもりだったんですけど……。なんで、まるでホントのことみたいに……なっちゃってるんですか?」

「悩み事があると言って、話し始めたのは君ではないか。今のがその、悩み事というものなのだろう?」


「……いや、だから。悩んでるのは事実ですけど、今のはたとえばな――」

「ふざけるな! あのようにややこしいたとえ話、君に作れるはずがなかろう?――まったく。私をバカにするのも、たいがいにして欲しいものだな」



 え……っ?


 ……えー……っと。

 先生の今の言い方だと……バカにされてるのは、むしろ、こっちの方じゃ……?



 ――なんで私、怒られなきゃなんないんだろ?



「確かに、今の話は、作り話のような内容ではあるが……。だからこそ、真実味があるというものだ。……君は、人の意見を聞きたいと思った時に、わざわざややこしい話をでっちあげるかね? そんな面倒なことはしないだろう?」


「う――っ。……そ、それは……」


「君の相談事が、信じられんような内容だったとしても……君が、思い詰めた顔で話し始めた時点で、真実だということは間違いない。君は本当に、二つの未来の選択を迫られているのだ。そうだな?」


「う……うぅ……」



 ……ここで、『はい。そうです』って、気軽に返事しちゃっていいものかどうか……。


 だって、どっちかの未来で、危険な目に遭うのが……もしも、先生だったりしたら……。



「余計な気を回すな。たとえ、君が選んだ選択先の未来で、危険に遭遇(そうぐう)するのがこの私だったとしても……君には一切、関係のないことだ。何故なら、その未来とやらを、君は知らんのだからな。そもそも、文句をつける筋合いがない」


「先生……」


「さっさと、その場所とやらへ行って来たまえ。ここで、何日もぐずぐずされていては、勉強どころではなくなり、かえって迷惑というものだ。君が選んだ未来とやらで、危険に遭うのが、私以外の身近な人間だったとしたら、その時は……(なぐさ)めの言葉ひとつくらいは言ってやる。危険というものが、思いのほか大きく、その者の命に関わるようなものだったとしたら、気が済むまで、悲しみに付き合ってやろう。……もう迷うな。君が望むのであれば、今からでも一緒に行き――全て、この目で見届けてやる」


 先生の手が、ぎこちなく私の頭上に置かれ……ぎこちなく、数回撫でる。

 相変わらずの、不器用な優しさに……思わず胸が熱くなり、涙が滲みそうになった。


「おい。泣くのだけは勘弁してもらうぞ。……私は涙は嫌いだ」

「あははっ。私だって嫌いです」


 先生の気持ちに感謝しつつも、照れ臭くて、口には出せなかったけど……。

 私は、目元をゴシゴシこすりながら、心の中で、そっと『ありがとう』とつぶやいた。

第11章はここまでとなります。

お読みくださり、ありがとうございました!


いよいよ、次が最終章です。

もう少しだけ、お付き合くださいませ。

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