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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第8話 国王様の昔語り

 昔。

 もう、どのくらい昔かは忘れてしまったらしいけど、神様の言うように、お父様(正しくは初代国王)は、神様と同じような存在――双子の片割れみたいな存在だったらしい。


 長い時間、二人きりで、あの桜の木の中で……ただ日々を見送るように、静かに過ごしていた。



 でも、ある時。

 初代国王――神様の片割れは、そんな日々に耐えられなくなって、以前から気になっていた、人間の側に行きたいと、密かに思うようになった。


 双子の片割れのような存在は、神様にそのことを告げ、外に出て行こうとしたんだけど。

 神様も言ってたように、彼は大反対だったから、ケンカみたいになってしまった。


 ケンカしては出て行き、また戻って来てはケンカして、また出て行き……。

 そういうことを何度か繰り返して、とうとう、初代国王(神様の片割れ)は出会ってしまったんだ。運命の人、二人に。



 運命の人。


 一人は、もちろん、初代国王が恋をした女性。

 もう一人は、()()()()()()となった人間。



 その器となった人には、もともと、特殊な能力がそなわっていたらしい。

 自分の器となる人を探していた神様の片割れが、器となった人と出会った時。

 彼はすでに、瀕死(ひんし)の状態だったそうだ。


 言い方は悪いけど、チャンスと思った神様の片割れは、彼に取引を持ち掛けた。

 『私に、その体を共有することを許すなら、おまえの命を救ってやろう』と。



 取引は成立し、神様の片割れは、人間の体を得ることが出来た。

 もともと能力者だった人間の力と、己の力も相まって、更に強大な力を得た神様の片割れは、当時、荒れに荒れていた、この国の英雄として活躍し……。


 結果、初代国王の座を手に入れた神様の片割れは、恋した女性を妻に(めと)り、ザックス王国の始祖となったのであった。



 ……とゆーのが、お父様がした昔語りのあらすじだ。



 でも、その話の中には、私が一番知りたかったことは出て来なかったから、思い切って、訊ねてみることにした。


「あの……つまり、初代国王様と、神様の片割れさんが同化した存在が、えっと……この国を(おこ)したってことなんですよね? 神様が言うには、初代国王様は、人間の器を交換しながら生きてるってことでした。だから、今の国王様も初代の国王様も、中身は同じだって。……でも、あの……ホントにそんなこと――」



 あり得るんですか?



 訊ねたかったけど、口には出来なかった。



 だってそんな……器を交換なんて、そんなこと……。



 お父様は小さくため息をつくと、少しの間、空を(あお)いでから、私に向き直った。


「そこがあの者の、困ったところなのだ。……あれは少し、思い違いをしている」

「思い違い?」


「そうだ。あの者は、私の中に、今でも己の片割れが存在していると思っているようだが……それは違う。私は、私でしかあり得んのだ。私は――いや、代々の王は、初代国王の記憶と、ほんの少しの能力を、受け継ぎ受け継ぎしながら、生きて来たに過ぎん。あの者の片割れなど、とうの昔に――初代国王が亡くなったと同時に、この世から消滅してしまっているのだよ」


「え……? 記憶と、少しの能力を……受け継ぐ?」


「うむ。初代国王は、己の死期を悟った時、次期国王に選ばれた者にだけ、記憶と能力を受け継がせてから亡くなったのだ。その行為……一応、儀式と呼んでいるが。その儀式を、後世まで続けて行くようにと遺言してな。……リア。おまえも、私の死期が迫った時には、記憶と能力を引き継ぐことになろう」


「わ、私も?……でも、あの……死期が迫った時って、どうやってそんなの――」


「それも、王と定められた者に、もともとそなわっている能力のひとつだ。……わかるのだそうだ。己の死期が近付くと、予知夢とでも言うのか……それを見るのだよ。その夢によって、己の死が近いことを理解するのだ」


「自分がいつ死ぬか、夢に見る――?」

「……そうだ。なかなかに厄介(やっかい)なものだろう? この国の王となることは」


 寂しそうな微笑みに、胸がキュウっとなる。



 ……自分の死期がわかっちゃうなんて、ヤダな……。なんだか、怖い。


 でも、歴代の国王様達は、そうやって……初代国王の記憶と能力、そして、この国を継いで来たんだ……。



 私がずっと黙っているから、心配になったのか、お父様は申し訳なさそうな顔をして、


「すまない、リア。いきなりこんな話をして……。おまえが混乱するのも無理はない。誰だって、初めは信じられんだろう。このような、現実離れした話は」


 そう言って私に近寄ると、優しく頭を撫でてくれた。


「いえ、そんなこと……。信じます。信じられます。だって、私は実際に、神様に会ってしまったから――」



 ……あの、寂しがり屋で短気な、可愛い神様と。



「でも、さっき……神様はまだ、お父様の中に片割れさんが存在してるって――思い違いしてるって言ってましたけど、どうして神様は……」


「――そう。そこなのだ。あの者には、これまでにも幾度も……おまえの片割れは、もうどこにもいないのだと……ただ、その者の記憶が、私の中にあるだけなのだと、数え切れぬほど説明して来たのだが……。(がん)として、理解しようとせん。……いや。理解出来ない訳ではなく、認めたくないだけなのだろうが」


「認めたく、ない……?」

「認めたら、あの者は本当に……一人きりになってしまうからな。それが怖いのだろう」


「……ああ。そっか……」



 神様みたいな存在が、他にもいるとは思えないもんね。

 だとしたら……ホントに神様は、この世に(ひと)りぼっちなんだ……。

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