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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第7話 二度目の謁見

 勉強と剣の稽古を繰り返す日々にも、すっかり慣れた頃。

 もう少しで夕食――という辺りで、その知らせは私にもたらされた。


「えっ!? 国王様が来る? ここに?」

「はい! 先ほど知らせが届きまして。明朝、こちらにいらっしゃるそうです」


 セバスチャンは、ソワソワってゆーか、ウキウキってゆーか。

 とにかく、すごく嬉しそうに、私に報告してくれたんだけど……。


「姫様? 浮かないお顔をしていらっしゃいますが……どうかなされましたか?」

「うん……。国王様には、いろいろと訊きたいことがあるんだけど、どー切り出したらいいのか、わかんないよーな話ばっかりだからさぁ。もー、どーしよーかなって」


「ピョ? 『どう切り出していいかわからない話』……でございますか?」


 セバスチャンは、私をじーっと見つめてから、不思議そうに顔を(かたむ)ける。



 ……まあ、そーゆー反応になるよね。

 この話は、セバスチャンにだって、したことないんだから。


 私自身、信じられないよーな話だし……荒唐無稽(こうとうむけい)、って感じなんだもんなぁ。

 どー話せばいーんだか、さっぱりわかんないよ。



「んー……。セバスチャンには関係ないことだから、気にしなくて大丈夫。これは、私と国王様の問題だから」

「はぁ……」


 セバスチャンは、納得したんだか、してないんだか。

 判断が難しい顔をしていたけど、これ以上、何か訊かれても困るだけだから、放っておくことにしよう。



 ……さて。

 どーしたもんかなぁ?



 国王様に面会した時、どうやって話を切り出そうかと、私はずっと考えていた。


 夕食の時間も、湯浴みの時間も――夜、眠りに就く、ギリギリの瞬間まで。

 とにかく、その日一日、ずーーーっと考え続けた。





 次の日。

 国王様を前にした私は、ひたすら緊張していて。

 前日に、頭でシミュレーションしていたはずのことを、綺麗さっぱり忘れ、頭が真っ白になっていた。



 どっ、どーしよー……。


 訊きたいこと、いっぱいあるのに。

 これから、どーする予定だったかが……。


 あぁあっ!! 全ッ然、思い出せない!!



「リア?……どうしたのだ? 顔色が(すぐ)れぬようだが?」


 そっと頬に触れる、大きくて温かい手。

 一瞬、ビクッとしちゃったけど、その後、何故だか、急に甘えてみたくなってしまって。

 私は、片手を国王様の手の甲に重ねると、大きな掌に、自ら顔を近付けた。


「リア?」


 少し戸惑ったような、国王様の声。

 私はハッと我に返り、慌てて手を離して頭を下げた。


「すっ、すみません! あの――っ、失礼しましたっ!」


 国王様は、両腕でそっと包み込むように、私を抱き締め、


「何を謝ることがある? おまえは、私の娘だ。ただ一人の、愛しい娘なのだから……遠慮なく、甘えてよいのだぞ? その方が、私も嬉しい」


 穏やかな声で語り掛けると、優しく頭を撫でてくれた。


「国王、様……」


 胸がジ~ンと熱くなって、ホッとして……。

 私はそうっと、国王様の胸に顔を(うず)めた。


 大きくて、広くて、たくましくて……どこまでも温かい、国王様の腕の中。

 なんだか、小さな頃に戻ったみたい。『このままずっと、こうして甘えていたい』なんて思ってしまう。



 やっぱり、信じられないよ。

 国王様が、桜さんに冷たかったなんて……。



 こうしてるだけでも、優しさや温かさが伝わって来る。

 父親が、娘を大事に想う気持ちが、しみじみと感じられるのに……。



「あの、国王さ――。……いえ。お父、様……」



 勇気を出して呼んでみる。

 国王様のこと、桜さんがなんて呼んでたんだか、全然わからないのに。


 ……ちょっと、軽率だったかな?



「……ん? どうした?」


 国王様が自然に受けてくれたから、安心して先を続ける。


「えっと……実は、お父様にお訊きしたいことがあるんです。聞いていただけますか?」

「うむ。なんだね?」


「あの……急にこんなこと言って、驚かれるかもしれませんけど……。私、会ったんです。会って、いろいろ聞いたんです。その……神様に」


 一瞬だけ、私を抱き締める手が、ピクリと反応した気がした。


 驚いたためなのか、緊張しているためなのか、それはわからない。

 でも、確実に、国王様は神様を知ってる。そう確信した。


 お父様は、私から静かに体を離す。

 くるりと背を向けて、窓辺までゆっくり歩いて行くと、外を眺めながら訊ねた。


「それで? 全て聞いたのかね? 私の……いや。初代国王とのことを」


 お父様は、特に取り乱す様子もなく、落ち着いた声のままだった。


「やっぱり。お父様は知ってるんですね、神様のこと? 神様が、すごく子供っぽくて、短気で……ホントは、とても寂しがり屋だってこと」


 お父様は、一度ちらりと振り返り……何かを思い出したかのように、フッと笑みをこぼした。


「子供っぽくて、短気で……か。確かにそうだな。……まったく。困った神様もいるものだ」


 そう言いながらも、お父様の声には、優しさと親しみが込められていた。

 まるで、イタズラ好きの弟のことでも、話してるみたいだった。


 そんな温かさが感じられたことが、何故だか、無性に嬉しくて。

 私は、ホッと息をついてから、次の質問を投げ掛けた。


「お父様は、神様と――元は、同じような存在だったって聞いたんですけど……。あの、それって、どういう意味なんですか? 私、神様の説明を聞いただけでは、よくわからなくて……」



 しばらくの間、沈黙が続いた。

 お父様は、ふと、何か思いついたかのように、私をじっと見ると。


「リア。これから、少し昔話をしようと思うのだが……聞いてくれるか?」

「え? 昔話?」


「ああ、そうだ。私の記憶も、だんだん薄れて来ているのでな。うまく話せるかどうか、自信はない。退屈させてしまうかもしれんが……それでも、聞いて欲しい」


「……はい。聞かせてください。お父様の話が、聞きたいです」

「うむ。ありがとう。……では、始めるとしようか」


 お父様は、昔を懐かしむように目を細めると、遠い過去の記憶を、ぽつぽつと語り始めた。

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