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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第6話 理解者

 チャンバラごっこ――もとい、剣の稽古を終えた私は、額の汗を手の甲で(ぬぐ)い、師匠を振り返った。



 ……うん。

 思った通り、まだ眠りこけてる。



「師匠! 起きてください、ししょーーーーっ!!」


 近寄って大きく揺さぶると、ムニャムニャと、何やら聞き取れない言葉をつぶやいた後、師匠はパチっと目を開いた。


「う……?……おぉ~……。そーじゃったそーじゃったぁ。稽古、だったのぉ……」

「何寝ぼけてるんですか! 師匠が眠り込んじゃったから、稽古は勝手に済ませちゃいましたよ?」


「……おおー……。なるほどのぉ。……ふむ……むぅぅ……ふぉ? 『師匠』とは……誰のことかね?」


「あなたのことです。……すみません。オルブライト先生のことを『先生』って呼んでるんで、ややこしーなと思って。これからは、『師匠』って呼ばせてもらってもいいでしょーか?……ダメ……ですか?」


「ふぉあっほっは!……いんや、べつに構わんよ。どう呼ぼうとも、あんたの勝手さね。……けんどまあ、少々照れ臭いかのぉ……。ふぉあっほっは」


「では早速。――師匠。今日はここまでってことで、稽古は終わりにしてもいいですよね?」


 ずっと居眠りしてたんだから、強いことは言えないはず。

 そう思った私は、にっこり笑顔で、師匠にお願いしてみた。


「そうさのぉ~。……ふむ。構わんよ」

「ありがとうございます! じゃあ、これで失礼しま――」


「もう身についたかね?」

「……へ?」


 唐突に訊ねられ、私は一瞬、ぽかんとしてしまった。


「剣術じゃよ。もうすっかり、身についたんじゃないのかね?」

「え?……いやっ、まさか! まだ習い始めてから、十日も経ってませんよ? その程度で身につくなんて、考えられま――」


「いやいやぁ。あんたなら大丈夫じゃろう? 一度目にすれば、たいがいのことはこなせるんじゃないかね?」

「――っ!」


 師匠の言葉に、唖然(あぜん)とする。



 『一度目にしさえすれば、たいがいのことはこなせる』?


 どーしてそんなこと……師匠が知ってるの?

 私……まだ誰にも、そんな話したことないのに……。



 確かに、私は向こうの世界にいた時から(特に、スポーツに関しては、だけど)、一度目にすれば、だいたいのことはこなせてた。


 こなせてた程度なら、まだよかったんだけど……。

 本気でやってたら、それこそ、日本のトップレベルにまで、達しちゃってたんじゃないかと思う。



 だから、嫌なヤツだけど……私はずっと、手を抜いてたんだ。向こうの世界では、何ひとつとして、真剣にやろうとはしなかった。


 周りから、明らかに浮いちゃうのがイヤだった。

 ――ううん。イヤってゆーより、怖かったんだ。



 ……でも、そのことを……どーして、この人は知ってるの?



「ふぉあっほっは! そんな顔せんでも、ちょいと見れば、そうい人間じゃーっちゅうのは、わかっちまうもんさね。ワシが、特別な能力を持ってるっちゅうこっちゃあない」


「し……師匠……」


「だからのぉ。ワシなんかは、あんたにとっちゃあ、不必要な人間なんじゃろうて。……ふぉあっほっは。それでも、この老人にはなぁ、あんたみたいな子を見ていられるっちゅうのは、何よりも楽しい……毎日、褒美を貰えとるようなもんなんじゃよ。だからのぉ、お役目を辞退する気にゃあ、どぉ~しても、なれんかったのよ。……すまんなぁ、こんな老人の暇潰しに、付き合わせてしもうて」


 そう言って、師匠はにっこりと笑った。

 その笑顔は、まるで、祖父が孫を見守ってるみたいな……優しさと温かさを感じさせるような……心に、じんわりと染みて来るような笑顔で……。


 何故だか、急に泣きたくなってしまって。

 その後、私は涙を堪えるのに、すごく苦労した。



 誰かが、私のことを、ちゃんとわかってくれてる。


 そう思えたことによる、安心感。

 嬉しさと感動と、ちょっぴりの切なさが、急激に心を満たして……溢れ出しそうになっちゃったのかもしれない。



「ありがとうございます、師匠。……不必要なんかじゃ、ないですよ。私にとっては、そういう人がいてくれたってことだけで、すごく嬉しいから……。だから、あの……これからも、よろしくお願いしますね」


 『何を』お願いしますなんだか、自分でも、よくわからなかったけど。

 気が付くと、そんな言葉が口に出てた。


 私を見返す師匠の瞳は、とっても綺麗な……透き通るような海の色をしていて……。

 『吸い込まれそうだな』なんて考えていたら、師匠は、全てわかってくれてるみたいな顔で、うんうんと何度もうなずいた。

 それを見た私は、またホッとして……にっこりと笑い返したのだった。

先生にシリルにグレンジャーに……って、ヒーロー去った後なのに、何故続々と新キャラ登場!?

などと、驚かれている方もいらっしゃるかもしれませんが……。


この二人と、そして先生は、ギルルート(シリル)とカイルルート(先生とグレンジャー師匠)に関わって来るキャラですので、お披露目程度に思っていただければ……と思います。

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