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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第5話 困った剣術指南役

「また寝てる」


 練習場――って言っても、広い殺風景な部屋って感じのところなんだけど。

 そこに着くと、剣術指南役のマックスウェル・グレンジャー先生が、椅子に座ったまま、こっくりこっくりと船を()いでいた。



 グレンジャー先生はかなりのお年寄りで、伸びっぱなしの白髪(はくはつ)と、白髭(しろひげ)がトレードマーク(?)のおじいちゃん。

 でも、こう見えても若い頃は、広く名の知れた剣士だったらしい。


 セバスチャンとは昔馴染みだそうなんだけど、グレンジャー先生は、若い頃(二十代辺り)に、いきなり長い旅に出てしまったんだそうだ。

 国に戻って来たのは、六十歳を過ぎてからってことで……。


 すごいよね。四十年くらい、放浪生活してたなんて。

 その間、どこで、どんな風に暮らしてたんだろ?



 いつか、いろいろ訊いてみたいな~なんて思いつつ、グレンジャー先生の前まで行くと。

 私は大きく息を吸い込み、声を張り上げた。


「グレンジャー先生っ!! 時間ですよ、起きてくださーーーいっ!!」


 ビクンと体が揺れ、目を覚ましたグレンジャー先生(長ったらしくて面倒だから、これからは『師匠』と呼ぶことにしよう)が、のろのろと周囲を見回した。


「おぉ~……。もうそんな時間じゃったかぁ?……やれやれ。よく眠ったのぉ。ふぉあっほっは」


「もー。笑いごとじゃないですよ。毎回毎回、よく眠れますね?――ってか、ほとんど眠ってるだけじゃないですか」


「ふぉあっほっは。そうかのぉ~? そんなによう眠っとるかのぉ? ふぉあっほっは」



 ……いや。

 『ふぉあっほっは』じゃなくて。


 うぅ~ん……。

 何度聞いても気になっちゃう、変わった笑い方だわぁ……。



「それより、今日はどーしますか? またシリルに相手してもらって、自主練習でもしてましょーか?」

「ふぅむ……。そうさのぉ……。ふぅ~……む。……むぅ……」


 ガクン! と頭が下がったかと思うと、すひぃ~……すひぃ~……と寝息が聞こえて来た。


「……マジですか?」


 半ば呆れ、半ば感心しながら、私は大きくため息をつく。

 後ろを振り返り、少しだけ離れた場所から、こちらの様子を窺っているシリルと目が合うと、


「ごめんね、シリル。グレンジャー先生は、今日もお休みみたいだから、手合わせお願い出来る?」


 仕方ないので自主練と決め、対戦を申し込んだ。


「は、はいっ! しょ、しょーちいたしましたっ」



 ――という訳で。

 師匠から少し離れた場所で、私とシリルは、右手に剣(もちろん本物じゃない。形だけ剣に似せた、金属の(かたまり)だ)を持ち、少し腰を落として向かい合った。


 その後は……まあ、日本の武道で言えば、剣道みたいなもの(と、私は勝手に思っている。昔の子供が遊んでたってゆー、チャンバラごっこみたいなもの、とも言えるかもしれない)をやり合うだけ。


 剣道は、部活勧誘の一日体験みたいなところで、一度だけ、立ち合い稽古(げいこ)っぽいものをさせてもらったことはある。

 でも、詳しいルールとかは、剣道自体にあまり興味がなかった(ごめんなさい)から、覚えてないんだよね。


 だから、剣道みたいなものと言っても、私の感覚では、チャンバラごっこの方に近いかなぁ?


 ……いや。

 この世界(国?)で使ってる武器は、刀の形じゃなく、剣って感じの見た目だから、剣道よりは、フェンシングの方に近いのかもしれない。


 でもなぁ……フェンシングのことは、さっぱりわからないし。

 真面目に相手してくれてるシリルには、すごく失礼なのかもしれないけど……やっぱり感覚的には、チャンバラごっこなんだよね。(だってこれ、特にルールはないみたいだし。『酷いケガさせちゃダメ』とか『急所は狙っちゃダメ』とか、一般的な常識から外れるような行為は、もちろん、禁止されてるみたいだけどね)



 ああ、そうそう。シリルと言えば。

 彼は毎回必ず、私に勝ちを譲ってくれる。


 『気なんか遣わなくていいからね? こてんぱんに負かしてやる! ってくらいの気持ちで、掛かって来てくれていーんだよ?』っていくら言っても、遠慮しちゃって、本気で向かって来てはくれないんだよね。



 彼にとって、私は仕えている相手なんだし。

 気を遣うなって言う方が、迷惑なのかもしれないけど……。



 とにもかくにも。

 剣術は、この国の王族なら、男女関係なく()()()()()()()()()()()って決まりがある。

 だから、面倒でもやってるワケなんだけど……ホントに必要なのかって考えると、かなり疑問。


 騎士でもなければ、剣の所持なんて普段からしてない(ってゆーか出来ないみたいだ)し。

 そーすると、いざって時に身を守るためって理屈も、通じないじゃない?


 ……ホント、これって何のためにやってるんだろ?

 体を健康に保つため、とかかな?



 う~ん……。

 私は体動かすのが好きだから、学校の体育とでも思っとけば、全然苦にならないし、べつにいーんだけど。

 運動音痴っぽかった桜さんなんかは、かなり辛かっただろうなぁ……。


 いくら剣は模造刀(もぞうとう)(剣だから模造剣?)って言っても、プラスチックとかじゃなくて金属だから、想像以上に重いし。

 女性用として、普通のよりは刀身も細めで、やや薄めに作られてるらしいけど……。

 それでも、ただ振り回してるだけでも、結構キツイもんなぁ。



 ……なんて。

 桜さんのことに思いを()せたりしながらも。


 イマイチ納得出来ないままに、私は、剣の稽古を大人しく続けていた。

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