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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第3話 天使が護衛になった理由

 シリルが私の護衛になってから、数日後。


 冷静になって来た頭で、私は、どうして先生が、彼を護衛に選んだのかについて、考え始めた。



 シリルはすごくいい子だし、素直で可愛いし、見た目の印象は天使だし。

 まあ、控えめに言っても、完璧!……なのよね。



 個人的には、すごく気に入ってる。

 ……ううん。ものすっごく気に入ってる。


 弟がいたら、こんな感じなのかなぁって、毎日妄想しちゃったりするほど……。

 彼はすっかり、私のお気に入りになってしまっているのだ。



 ……でも。


 護衛?

 ――ってことで考えると、イマイチ……いや。イマサンくらい、ピンと来ない。


 こんなに華奢(きゃしゃ)で、女の子みたいに可愛い子が、護衛?

 どーして先生は、わざわざこんな――虫も殺せそうにない子を選んだんだろ?


 ……って、ますます不思議に思えて来ちゃうんだ。



 だから、単刀直入に聞いてみた。

 先生にヘタな小細工は通用しないし、探りを入れる――なんて遠回しな方法は、即、看破(かんぱ)されちゃうに決まってるもん。



「シリルを護衛に選んだ理由……だと?」


 先生は、さも面倒だと言うように、ジロリと私を一睨みすると、


「フン。そんなもの。まだ幼さを残す程度の少年であれば、さすがの君も、恋に落ちたりはしまい? そう思ったからに決まっている」

「……へっ?」


 私は思わず、アホの子みたいにぽけーっと口を開けたまま、しばらくの間、先生を凝視してしまった。

 我に返ったとたん、『いきなり何言い出すんだ、この嫌味教師!?』と、思わずカッとする。


「ば――っ! バカなこと言わないでくださいっ! シリルはまだ十一歳ですよっ!? 恋に落ちるなんて……! そんなの、犯罪じゃーないですかっ!!」


「だから、さすがの君も――と言っているだろう? あの年頃の者にも食指(しょくし)が動くようなら、どうにもならんと諦めるつもりだったが……仔細(しさい)なかったようだな」


「なん――っ? あ、当たり前ですっ! 先生は、私をどーゆー目で見てるんですかっ!?……私は、カイルだから好きになったんです! 護衛なら誰でもいい――ってワケじゃないんですぅーッ!!」



 ……まったく。

 人をバカにするにも、ほどがあるっつーの!



「そうか。それはよかった」


 嫌味ったらしくニヤリと笑って、指先で眼鏡の位置を調節してる先生を、私はムカムカしながら睨みつけた。


「……でも、シリルって……まだあんなに小さいし、華奢だし……。ホントに、護衛なんて任せちゃって大丈夫なんですか? むしろ、彼の方に護衛つけてあげたいくらいなんですけど……」


「見た目で人を判断するのは、あまり感心出来んな。彼は確かに幼いし、力も弱い。だが、ああ見えて、剣の腕は確かだそうだぞ。私は直接目にした訳ではないのだが……力のない分、俊敏(しゅんびん)さと技術で(おぎな)い、陰では『天才』とささやかれているほど、稀有(けう)な能力の持ち主らしい」


「天才剣士!?……シリルが?」



 ……ほぇ~……。

 ホント、人は見掛けによらないのねぇ……。



「剣士としては申し分ないんだが……あの容姿だからな。何かと問題も出て来る」

「……問題? 容姿で問題って?」


「危険なのだよ」

「危険?……え、シリルが……ってことですか?」


「そうだ。騎士見習いは男ばかりだからな。あのように女性的な美しさを持った少年が、長いこと中にいると……マズイことになる可能性がある」

「マズイこと?……って、なんですか?」


 ぽかんとして訊ねると、先生は深々とため息をつき、


「察しが悪いな。年頃の男共の中に、美しい見た目の少年が一人いたとしたら?――そう深く考えずともわかるだろう」

「年頃の……男? 美しい見た目の……少年……」


「だから! 襲われる可能性があるということだ。その程度のこと、言われなくとも気付きたまえ」

「襲わ――…………え?…………えぇええええッ!?」



 襲われるって……シリルがっ!?



「ちょ…っ! ちょっと待ってください! シリルはまだ、あんな小さくて……しかも、男の子ですよ!? 襲われるって、そんな――!」


「君は、同性愛者の存在を知らんのか?……そうでなくとも、あのような少女のごとき見た目の少年が、目の前に長くいたとしたまえ。ふらっとして、間違いを犯す者が出て来たとしても――なんら不思議はあるまい?」


「……ふ、不思議はあるまい、って……」



 イヤっ! 怖いっ!!


 あんな可愛いシリルが……天使みたいなシリルが、()えた男共の餌食(えじき)になっちゃってたかもしれないなんてーーーーーっ!!



「冗談じゃありませんっ! そんなことあって堪るもんですかっ!――シリルは私が守ります!! ぜーーーったい、そんな人達なんかに近付けませんっ!!」


 キッパリと宣言すると、先生はフッと笑ってうなずいた。


「そう。シリルに君の護衛をさせることは、彼のためにも、君のためにもなる。それが選んだ理由――というやつだ」

「なるほど……。さすがです、先生!」



 心の底からの賛辞(さんじ)だったのに、先生はさして興味なさそうに、私を一瞥(いちべつ)すると、ふいっと目を逸らした。


「君に褒められたところで、嬉しくは思えんな。……むしろ、バカにされているような気さえして来るのは――どうしてなのだろうな?」



 ……たまに褒めてもこれだもん。

 まったく、可愛くないんだからっ!

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