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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第11章 新しい日々

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第2話 天使が舞い降りた日

 いったいどんな人なのかと、ドキドキしながらドアの方を見守っていると。

 入って来たのは、信じられないほど線が細くて、少し小柄な……まるで、少女のように可憐な風貌(ふうぼう)の、美少年だった。



 ……ほ……ほわぁああ……。


 て……天、使……?



 その少年が入って来た瞬間、周りの空気が浄化され――辺り一面が、きらきらとした柔らかい光の粒子に包まれたような……そんな感覚に囚われた。


 ふわっとウェーブのかかった、プラチナブロンドの髪……透き通るような白い肌に、ほんのりピンクに色づいた頬……整ったアーチ型の眉に、深く澄んだセルリアンブルーの瞳……形のいい小さめの鼻に、ローズピンクの柔らかそうな唇……。



 か――っ、完璧だっ!!


 完っ……璧な、天使顔だーーーーーーーっ!!



 あまりにも理想的過ぎるその容貌に、私は思いっきり()まれていた。

 ほけ~っと見惚れたまま動くことすら出来ず、その場に突っ立っていると、


「姫様?……いかがなされました?」


 セバスチャンの声で、現実に引き戻される。


「……あ……いやっ、えっと……。なっ、なんでもないなんでもないっ! ちょっと、えっと、その……あー……うううんっ、やっぱりなんでもないっ!」

「……は、はぁ……?」



 ……あー、危なかったぁ……。


 『天使が舞い降りて来たかと思っちゃって』なーんて恥ずかしいセリフ、言えるワケないもんね。



「姫様。この者が、新しく姫様の護衛を任じられました、シリル・アウデンリートと申す者でございます。――シリル、姫様にご挨拶を」

「――は、はいっ!」


 その天使――じゃない、シリルは、まだ声変わり前みたいな可愛い声で返事すると、その場に片膝をつき、頭をぐぐっと下げて、


「お、おはっ――お初っ、にお目にかかっ、り、ますっ。シ……シリル・アウデンリートと申しまっ……す。あのっ、じゃ、じゃくはい者っ――では、ございますがっ、これより先はっ、ひ、姫様のごえいっ――を、せ――せーいっぱい、つ、務めさせていただきますっ。――ので、どっ、どーかよろっ――よろっ――しく、お、お願いいたしっ――ますっ!」



 言い終えた後、肩が静かに上下してる様子を見て、なんだか、すごく微笑ましく思えてしまった。



 きっと、言い慣れないセリフを、一生懸命、覚えて来たんだろうなぁ……。



「そっかぁ。シリルくんってゆーんだ?――歳は幾つ?」


 しゃがみ込み、膝に両手を重ねて置いて、その上に頬を当てて訊ねると、


「は、はいっ。歳は――」


 シリルは少しだけ顔を上げ、目の前に私の顔があると気付いたとたん、びくっと後ろに体を引き、のけぞりそうになった。


「あっ!……だ、大丈夫? ごめんごめん。驚かせちゃったかな?」

「……い、いえ……。あの……」



 うわぁ……。

 真っ赤になってもじもじしてる姿も、可っ愛いなぁ~~~。


 あーもうっ、自然と顔がニマニマして来ちゃうっ。



「姫様! そのようなはしたない格好を……。おやめくださいませっ! 淑女(しゅくじょ)のなさることではございませんぞっ?」

「え、はしたない?……姫って、しゃがんじゃダメなの?」


「当然でございますっ! そのようなはしたないお姿……国王陛下がご覧になりましたら、さぞやご落胆なさいますでしょう。ご幼少のみぎりでございましたら、まだしものこと……まったく、前代未聞(ぜんだいみもん)でございますぞっ!」



 ……えぇ~~~……?

 しゃがんだくらいで、『はしたない』とか『前代未聞』とかって、言われちゃうのぉ?


 ……ハァ。

 姫ってホント、めんどくさ~~~~~。



「むぅ……。わかったわよ。立てばいーんでしょ、立てば」


 私はすっくと立ち上がり、シリルへと右手を差し出した。


「じゃあ、シリルが立って? 堅っ苦しいのって、苦手なの」

「え……。あ、あの……。でも……」


 シリルは、セバスチャンの様子が気になるみたいで、横目でちらちらと窺っている。


「セバスチャンは気にしなくていーから。――ね? ほらっ」

「えっ? あ――っ」


 私は両手でシリルの手をギュッと握ると、思いきり引っ張って、強引に立ち上がらせた。


「君は私の護衛なんでしょ? だったら、これからはセバスチャンじゃなくて、私のことを、一番に考えてくれなきゃあ。ねっ?」


 両手を取り、ニッコリ笑ってみせる私を、シリルは、まん丸い目を、ますますまん丸く見開いて、しばらくじいっと見つめていた。

 それから、ようやく緊張が解けたみたいで、肩の力を抜き、はにかむような笑顔でうなずく。



 はぅう~~~ん♪

 やっぱり天使ぃ~~~っ。



 ……と、こんな有様で……。


 彼は、ほんの僅かな時間で、私を(とりこ)にしてしまったのだった。

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