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幼馴染の短編

旅行の予定は計画的に。

作者: 田中正義

短編です。

落ち着いたら、旅行ものんびり行きたいですね。

 校外研修とは名ばかりの遠足の打ち合わせだった七限のおかげで、いつもより早めのホームルームとなった晩夏のある日。


 彼女は頬杖を突きながら、物憂げな、しかしどこか楽しさを滲ませた様子で、教師が奏でる連絡事項のBGMを聞き流していた。

 何とも艶麗な少女が心のままを写す表情は、周囲のクラスメイトたちを性別を問わずして魅入らせるものだった。


 考えているのは先ほどまでの打ち合わせのこと。

 今回の目的は離島で特に災害や地域文化について学ぶ、というものである。しかし実際は船旅に海、美味しい海産物を堪能する離島満喫旅情だ。

 夏が終わった頃の旅程は海遊びを謳歌するには暑さも顔を引っ込めているだろうが、過ごしやすさはこの上無し。コースごとにパラグライダーやスクーバ、漁業体験などとイベントも目白押しだ。


 いつもは雰囲気クールな彼女だが、友人たちと花を咲かせた打ち合わせを思い出して楽しい予定を夢想するのだった。大人びた相好を少し崩してぼんやり宙を見つめる様は、少しの童心が魅力の色を増して結構な絵になるものだ。


 何より彼女の心をそわそわさせていたのは、自由探索のこと。

 グループのコースごとに順路が違う旅程であるが、共通して全グループが自由に探索ができる時間がある。


 空想しながら自然と焦点が合った彼女の目線の先には、今回は同性の友人同士が集まった結果、別のグループになった幼馴染の彼。

 思えば何をするにも腐れ縁が続いた彼と、こういったイベントで僅かでも離れるのは珍しいことだった。


 さてつまり、腐れ縁という鎖から解き放たれた今、どうやって彼を誘うかと考えを張り巡らせているわけである。

 幼馴染という武器に甘んじ、無手になった途端に恋愛クソ雑魚が露呈したのが現状だ。「幼馴染だし都合いいから」というしょうもない逃げた理由で彼を連れ回したツケが回ってしまった。

 自由探索をわざわざ別の男子グループの幼馴染と回る理由など特別な理由などあろうか、いや、ない。

 なまじ取り繕って一目置かれるクール美少女のポジションに収まってしまっただけに、周囲に相談も出来ないのでいるのが今の彼女だ。


 恋人ならば余程簡単に誘えるのだろうに。


 しかし遠足で彼とアレしたいコレもいいなと皮算用ばかりが積み重なり、妄想やら躊躇やらでどうしようもなくなって彼を見つめてしまうのだった。



 いつの間にかホームルームも終わり、鞄を持った彼が彼女の席の目の前に立つまで彼女の意識は呆けたままだった。



「おい」


 ぼぅ、と彼と視線を合わせていたが、ようやく彼に声をかけられて意識が覚醒する。

 危うく座った椅子を大きく揺らすところだったが、幸いにも見慣れた彼だ。さしもの彼女も驚きをあからさまに表に出すことはなかった。


「な、なによ!」

「こっちのセリフだよ。さっきから何か用か?」

「ないわよ。考え事してただけ」


 ここでさらっと言えれば彼女もその後の身の振り方が楽になるものを、わざわざ一度否定してしまう。

 そんな彼女の様子に、彼もいつもの移り気な彼女のことか、と納得してしまうので、いつまでも関係性に進展がない二人なのだった。


「何もないならいいが。用もないなら、帰るぞ」


 鞄を背負った彼が彼女にともなく声をかけるが、彼女は未だ帰り支度が済んでいない。

 しかし回り切らない頭でも、どうせ帰るならば一緒がいい、くらいの判断は出来る。


「先に昇降口行ってて」


 別に一緒に帰ろうと言われたわけではないのに。


 こういう小賢しいズルは出来るんだもんなぁ、と去り行く彼の背中に溜息を投げるのだった。


 事実そうなのだが、悩んで置いていかれるのが彼女だけのようで、なんだか一人相撲みたいで少しの虚しさを覚える彼女であった。



 彼は振り返ることもせず、通りすがりの友人たちと挨拶を交わしながら教室を出て行く。

 さてどうやって話を切り出そうかと考えながら帰り支度を進めていると、ふと彼らの会話が耳に届いた。


「おい、聞いたぞ。東京行くんだって?」

「悪いな、研修のことは。急だったから」

「こればっかりは仕方ないよなぁ」

「思い出は作っとかねぇとな!せめてなりに満喫しようぜ!頑張れよ!」


 聞こえてきた会話に、彼女の思考は明後日の方向に吹き飛ばされた。具体的には東京なんて、地方の高校生が滅多な用事では行くことも少ない場所だ。


 ちょっと待て。まさか進路か、引越しか?

 そんなの私、何も知らない。


 あまりの驚きに、思わず五七五七七を刻んでしまう彼女であった。

 東京とは何の話か、幼馴染の彼女は何も知らない。研修がなんだって?まさか、行かないのか。何の事情か。


 疑問ばかりが膨れ上がり、伴って不安も累乗が如く増えていく。

 バタバタと帰り支度をし、どうせ急がずとも彼が昇降口で待っていることすら忘れ、スカートを靡かせるのであった。




 結局昇降口に至ってやっと彼に追い付いても、彼も彼で友人たちに囲まれている。


 そこどけお前ら一緒に帰るのは私なのだと声をかけようにも、主張の女々しさが烏滸がましくはなかろうか、と一抹の不安を覚える彼女。

 10年以上の付き合いの彼に今更弱みを見せるならばともかく、彼や自分の友人にはいい格好をしたい、彼に相応しい彼女でいたいという乙女のプライドである。そのプライドを犬にでも食わせれば進展した関係もあったろうに。


 もだもだと決意が決まらず話しかけれず、遠くからゆっくりと下駄箱に近付くのだった。


 しかし未だ彼氏彼女の関係に至れていない二人だが、周りからの印象はそうではない。なんでこいつら早くくっつかないんだと思いながら過ごすこと幾月か。

 彼女を視界に収めた彼の友人たちは、空気を読んで別れの挨拶に少しの羨望を交え、彼を足蹴に散っていく。


 残されたのはなぜだか仏頂面の彼女と、理不尽だけが残って困惑している彼である。


「じゃあ、帰るか」

「待たせたわね」


 ともあれ、歩き出さなければ始まらない。彼の言葉を皮切りに、揃って下駄箱を歩く二人。

 帰宅部の二人は校内に残っても何もないのも事実、慣れた帰路を歩くくらいしかすべきこともない。

 そして不機嫌な顔をした彼女をあまり見たくないのも、彼なりの真実なのだった。



 さて重苦しい空気を纏ったまま自宅との距離を縮める二人だが、そこに会話の一切はない。

 幼馴染の彼からすれば彼女の気紛れは今に始まったことではないが、今日は輪をかけて様子がおかしい。

 ホームルームの時まではご機嫌だったと記憶しているし、どうやら自分に用がありそうだったがそれも彼女は否定した。

 下駄箱までの僅かな時間に何か気分を害したようだが、彼からすれば流石に自分の言い知れぬ所で起こった火を鎮めるのも割に合わない。


 何となく話題を振りつつも、結局彼女は生返事。

 ついには何も言わないまま、堂々と彼の家まで着いてくる始末なのだった。

 最後に部屋の掃除してたのいつだっけ、と彼の不安も着々と増大していく。




 部屋に通した彼女にインスタントの紅茶を淹れ、さてどうしたものかと思案する彼。


 原因は彼自身なのだが、彼はそれを知る由もない。

 なんなら彼女は、彼の部屋に増えていた流行りのアイドルのCDなど見つけ、より唇を尖らせるのだった。自分もそのグループは好きだし勧めたのも彼女だが、そうじゃない。今はそういうテンションではないのだ。


「なぁ、いい加減なんなんだよ」


 自分のコーヒーを啜りながら、彼女の対面に座る彼。

 部屋まで通してやっと本題に触れようとする遅まきな態度も中々だが、流石にノーヒントでお姫様の難題を解決するのも無理がある。かぐや姫でも求めるものくらいは告げている。



 基本的に不器用な二人だ。

 素直になれない面倒な彼女と、態度に出さず彼女を大切にする彼。


 二人ともお互いを何となく分かったつもりではいるのだ。

 だからこそ彼女は今の不安を言葉にしてしまったら、彼が本当にどこかに行ってしまうのではないかと恐怖している。

 彼は彼女に踏み込み過ぎず、あくまで自由意志を尊重して支えになれるよう自重している。



 言葉にできない時間が過ぎて、彼の気遣う視線を受けた彼女の瞳にじわじわと涙が溜まっていく。


 そうなると焦るのは彼だ。

 自室で意味も分からず最愛の幼馴染に泣かれたら堪ったものではない。


「なぁ、おい、どうした今日は。ちょっとおかしいぞ」


 普段の冷静さも失い、そこらに投げていた部屋着をタオル代わりにぐしゃりと顔面に押し付け、それ以上の決壊を防ぐ。

 しかし彼女にとっては自分の言い知れぬ不安が彼にまで伝播していることすら、感情の起伏を激しくする一端なのだった。


 ぐしぐしと涙を擦り、大人びた美貌を年なりに崩して赤い目で彼を睨む彼女。

 彼からしたら災難そのものである。でも上目遣いの剣幕が可愛いと思ってしまうのは幼馴染の腐れ縁の贔屓目か、惚れた弱みか。


「……研修旅行」


「遠足?流石に話飛び過ぎて分からんぞ」


 彼女とて順序の一つも踏んでいないことは理解していた。

 しかし聞こえていた単語から連想した言い知れぬ不安と、彼と一緒に自由探索を回りたかった希望の板挟みが心をすり減らすのだ。


「……一緒に、行きたかっだ」


 言いながら最悪の未来を想像して嗚咽も止まらない彼女。断片的な推測と思考の悪循環で、彼女自身も何を言っているのか分からない。

 だから彼も、疑問符が止まらない。


「待て待て待て、何の話だ?本格的に説明が欲しいんだが、ちょっと落ち着け、な?お茶飲んで、ゆっくりでいいから」


 赤子をあやすように背中を摩る彼。これまでも不安定な彼女を見たことはあるが、それは例えば受験の合格発表や彼が何かの間違いで告白された時だけだ。

 決して迫る楽しい予定に向けられるものではない。


 彼女はずびずび鼻を鳴らしながら彼のTシャツの裾を掴む。



「……だって、遠足って。……東京行くから、ごめんっで」


 ようやく彼女が理解できる言葉を発する頃には、傾いていた陽光が迫る黄昏の影を濃くしつつあった。

 コーヒーも触れる空気と同じ温度になり、ここからやっと話が進む。ようやくスタートラインに立ったと、本題を進めてもいないのに彼の肩はドッと軽くなった気がした。


「東京って、あー……帰りの時の話?」


 無言で頷く彼女。


 恨みがましい目で彼を見つめるが、ところで彼は彼女の泣き顔を可愛いと思いつつも、基本的にその顔は嫌いだ。

 理由は当然、涙より笑顔の方が好きだから。


 だから彼は、何もかも払拭するような大きな溜息とともに、彼女の頭をぐわぐわと掻き乱した。


「〜〜ッ!だって!何なの!」


「……説明するから、まずその顔面何とかして来い。泣くような話じゃないから。撮るぞ」


 そう言ってスマホを取り出して見せる。

 彼女は後ろ髪を引かれながらも、ノロノロと部屋の外の洗面台に重い歩みを進めるのだった。


 彼女が去った部屋の惨状を見て彼はまた大きな溜息を吐く。

 どうやら自分から漏れ伝わった断片的な情報が彼女を不安にさせていたのだと、後悔が湧き起こる。

 手にしたままのスマホ上にその原因となった先日のメールの画面を開き、彼女を待つのだった。



 戻ってきた彼女はやっぱり目の周りを少し腫らし、いつもより幼さが前面に出ている。

 少しは落ち着いたのか、もうグズることはなかった。

 廊下に出た時に「あれ今日おばさんいたっけ」と軽くパニックになったのは内緒の話。


「とりあえず説明するから、座れよ」


 彼は囲っていたテーブルの向かいを指すと、彼女はそれを無視して彼のベッドに座った。


 こいつが居座ると匂いが残って後で意識するんだよな、と彼も気持ち悪い内心を自覚しながら、まぁいいかと欲望に素直にそのまま話を進める。


「まず、東京ってのはこれ」


 差し出すスマホの画面には、それこそ彼女が先程気を揉んでいたアイドルグループのライブの当落発表のメール。

 当選している会場は、東京だ。


「……ライブ?」

「そ、ライブ」

「あなた、そんなにのめり込んでたかしら?」

「推しカツしたのはお前だろうに。まぁいい、それで続きだ」


 何となく疑問は残るが、大人しく次を促す彼女。


「遠征費捻出で遠足に使える小遣いが削れたんだよ。だからグループで行こうとしてたトコ行けるか微妙で、練り直してもらってたの」


 ライブに行くため、遠足の食べ歩き計画が予算都合で出来なくなりそう、ゴメン!


 要約するとそれだけで、単に彼女の早とちりである。


「ていうかお前ん家でも後で話そうと思ってたんだが、それをよくもまあ、な?」


 大泣きしやがってと肩をすくめる彼。そうなると立場が悪いのは彼女だ。


「〜〜ッ!だって、急に単語で聞こえてきたら色々想像しちゃうじゃない!もしかして東京の大学にするのか!とか!」

「なわけあるか。お前の志望、県内だろ?俺もそうだってさんざ言ってるだろうに」

「分かんないわよ!あなた志望校とかろくに話さないじゃない!」

「その辺の人文ならどこでもいいからな。拘りもそうないし」


 ぐぬぬ、と唸る彼女。自分も気分屋だとは自覚しているが、彼の飄々とした性格も大概だ。

 さもおかしそうに彼がニヤニヤしているのが余計腹立たしい。それと同時に安心して崩れてしまいそうでもあるので、お気持ちがお忙しい彼女である。

 毎度馬鹿にしやがってこの幼馴染は、と恨み言の一つも吐きたくなるのだった。


「……ちなみに、拘りって?」

「人文系の就職先とか……他には、ま、大した理由じゃないさ。ここまで納得したか?」


 拘りとしては、将来大卒で就職出来ればいいくらいに考えている彼としては、彼女が通う大学と同じか近くでそれなりのレベルならばいい程度だ。口には出さないが。


 しかしこんな言い方をされれば意地でもボロを出させたくなる彼女である。


「……あ、ライブの話。私の家でも説明するつもりだったって、何で(ウチ)?」


 そういえば後で説明する気だったと言っていた。

 彼はああ、と頷くと、再びスマホの画面を見せる。


「チケット、二人分取れたんだよ。お前も行くかって話しようと思って」

「え?」

「だから、ライブ、一緒に行かないか?」

「……えちょっと待ってほんと?」

「嘘吐くくらいなら黙って行って後から煽る」

「確かに……って、そうじゃなくて。え、行きたいけど。大丈夫かしら」

「だからお前ん家で話そうと思ったんだよ。おじさんたちにも言わないとだろ」


 なるほど道理が通っている。


「それは私も嬉しいんだけど、あなたってそんなにこのグループ好きだった?誰推しなの?」

「青担」


 ちなみに彼女も美人系の青担当が推しである。こんな風になれたらいいな、とたまに思う。


「……ふーん」


 聞いておいてなんだか面白くない彼女だ。彼が他の女に現を抜かしているからか、推し被りからか、その理由は彼女にもわからない。


「でも男の人って可愛い女の子なら誰でもいいんでしょ?」

「なわけあるか。お前も青推しって言ってたろ。それで化粧とか雰囲気たまに真似てるよな?だから目で追いがちになるんだよ。歌もいいし」

「は?邪念混じりの理由で推さないでもらえます?」

「邪念って……確かに下心は否定しないが、にしても俺は今、結構なことを言ったと思うんだが」

「ん?」


 やれやれと苦笑いを浮かべる彼である。

 彼女が真似る、雰囲気が似てるから気になる。気になるのはアイドル?彼女?


「んん???」

「曲買ってライブ行くくらいハマったのは事実だが、好きな女が好きなものなら興味くらいは持つだろ」

「……んんん?????」


 呆気に取られるしかない彼女である。

 彼女からすれば彼は冷静そのものに見えるが、その心拍は彼しか知らない。彼自身も予想外に、泣いた後の潤んだ瞳が、言わなくてもいいことまで言わせる魔力を持っていたのだ。


「つまりライブに行こうというのは推し活を装ったデートの誘いなんだが、受けてくれるか?勿論、ただの同担の幼馴染としてではなく」

「……待って無理」

「お前この流れでその無理はどっちの無理だよ」

「む〜〜〜り〜〜〜!!」


 呻きながら、顔を隠しながら、制服の皺も気にせずベッドの布団に潜る彼女。

 その暑さに、彼の匂いに、それこそ無理だった。5秒も耐えられない。


 渋々と顔を出しながら、さっき放り投げられていた彼の部屋着を盾に顔を隠す。

 しかし結局どうしても彼の匂いがするからか、心臓は踊り狂っていた。


「イエスがノーの簡単な問いなんだがな」

「イエスよ!イエスだけど!何なのよ、もう!」

「逆ギレすんなよ……。お前今日情緒ヤバいな」

「誰のせいよ!」


 勢い任せに言ってしまったが、もう遅い。


「俺のせい?」


 その事実はこれ以上ないほど的確で。どれだけ彼女が夢中かを、雄弁に物語っていた。

 四面楚歌のアウェイな状況が、余計に心を攻め立てているようだった。どこにも彼の気配を感じるこの部屋じゃ、浮き足立って仕方ない。


「〜〜〜〜!!後で私の家にも来てもらうから!」

「そりゃ挨拶は勿論。遠征の話もあるし」

「なんでそんなに冷静なのよ!」

「これでも舞い上がってる。どっかの誰かが半狂乱で逆に落ち着いてる」

「落ち着けるわけないじゃない!」

「なら、ちょっと落ち着け。深呼吸」


 カップの中にお茶はもうない。だから彼は、物理的に彼女を落ち着かせることにした。


 大変なことになっている表情を隠すのに使われていた部屋着を奪い取り、真っ赤になった顔を晒す。


「ちょっと、今顔見ないで!」


 さっきまで散々泣いていたのに、また泣きそうだから。ニヤニヤが止まらないから。

 今度の泣き笑い顔は、不思議とそんなに嫌いじゃない彼だった。


「分かった、見ない。目閉じるから、お前も目瞑れ」

「何で私も……ッ」


 しかし肩に手を置かれてしまえば、彼女にもこの後のことは容易に想像できた。



 ぎゅぅと目を閉じながら、ああ、触れたところからこの鼓動が伝わってはいないだろうかと心臓が爆発しそうな彼女。



 果たして伝わっていたのかは、触れた恋人のみが知るところである。

幼馴染シリーズも少しずつ増えてきましたね。見てね。

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