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ボンボン

作者: 龍岡

僕たち人類は何千年も何万年も前から存在する。そしてこの世界はさらにはるか昔から存在する。そんな風に学校で教えられたが本当にそうだろうか。私には甚だ疑問である。

また学校では、様々な価値観や考えを受け入れなさいと教えられる。でもそんな違った考えが生まれる理由を学校では議論しない。どうして違いが生まれるのかを議論しなければ、真の意味で違いを受け入れていくことも難しいと私は考える。

こんな小さな疑問からくる微かな反抗である

 Creator


ほんの十秒前、僕の記憶では僕はまだ歯を磨いていたのだが、その時はまだ僕はおろか世界すら存在していなかったそうだ。ただ何もない空間で神様は暇すぎてあくびをしていた。

 そこで神様はほんの三秒前にこの世界を作り上げた。人間が作ったと勘違いしているビルやインフラも含めたこの世界のすべてをである。そしてつい先ほど、ほんの刹那のうちに様々な生物を作り、今までまるでずっと存在していたかのような記憶を与えた。

 そうだというのに、僕たちはついさっきまで何もなかったというのに、急に与えられた記憶に基づいて、いそいそと、せこせこと、いやいや毎日を過ごし、いっぱしの愚痴をこぼしている。または変に達観して『人の一生なんて自然界に比べたらほんの一瞬みたいなものさ。』とポエミーに呟いてみたりしている。

 きっとこんな道化は面白くってしようがないと神様は思うだろう。

 ほんのひと時の暇つぶし、そういった意味では僕たちは神様のお眼鏡にかなったのかもしれない。

 だからどうかもっと楽に生きられるように神様には世界を創ってほしかったとしみじみ思う今この瞬間であった。



 見方の違い


 僕には昔、弟がいた。弟と言っても僕たちは一卵性双生児だったので、僕ととても似ている、というかむしろ全く同じであった。着ている服を交換すると、母でさえどっちが僕でどっちが弟かわからなかった。

 ある日弟と、公園でサッカーをしようと道を駆けていたところ、道路に飛び出してしまった。そこで大型トラックにはねられた。僕はトラックに直接跳ね飛ばされ、頭を強く打った。顔面がゆがみ、眼玉が潰れて目が見えなくなった。弟は跳ね飛ばされた僕の体にぶつかって倒れ、そして減速しきれなかったトラックに胴体をつぶされて死んでしまった。

 幸い一命をとりとめた僕は、視覚を取り戻すために弟の眼球を移植してもらうこととなった。複雑な気持であったが、弟の分もこの世界を見てやろうと思って、移植手術を受けることにした。

 手術は無事成功し、一週間後に僕は光を取り戻した。しかし僕に見えたのは全く違う世界だった。世界の色が文字通り全く違うのだ。今まで赤く見えていたものが青く見えたり、今まで青色に見えたものが黄色に見えたりと、今までと色が全く違うように見えた。

 その時の僕はとても動揺した。目がちゃんと見えていないのだと思った。この色覚障害がなぜ起こったのかがわからず焦っていた。

 しかしふと僕は気が付いた。これは異常ではないのかもしれないと。

 僕たちはもともと違う目を持っている。そして仮に世界の色が全く違うように見えていても、例えば海を指さされて『あの色が青だよ』と言われれば、その見えている色を青として認識する。だから眼玉一つ一つに別の見え方があっても、他人の視覚を体験しない限り僕たちは見える色の違いを認識できないのだ。だから、僕たちが気付かないだけで、みんな世界が全く別の色に見えているのかもしれない。そして僕は弟の目をもらったことでそのことに気づいたのだ。

 今僕は社会人として働いている。様々な人と意見を戦わせ、よりよい社会を作ろうとする人間の一人である。人によって様々な考えや価値観を持っていることに驚く人もいるが、僕は当然だと思う。だって世界の見え方ひとつをとっても全く人と異なるのだから。

 そしてまた、弟も僕とは全く異なる一つの存在だったのだ。

この2つの話はあくまで想像である。しかし、これが嘘であるという証明は誰もできない。

もしかしたら本当に世界ができたのはついさっきかもしれない。神が完全な存在なら、私たちはそれを観測することすらできないのだから。

もしかしたら、世界の見え方は全く違うのかもしれない。眼球移植は今の医学では行われていない。せいぜい角膜移植や、iPS細胞による自分の角膜の移植である。

そんな中で果たしてこの2つの話は完全に嘘なのだろうか。そんなふうに私は思う。

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