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王都への旅路〜初日へようこそ!

今日はいよいよ王都へ向けて出発する日。

天気は快晴ここから3日かけて移動だ。

途中に砦街があるようだが食材の補充だけして

素通りする予定らしい。王都から1日の距離で

砦街ってだけあり武器や防具など

鍛治が盛んな街だそうだ。

荒くれ者もそれなりにいるため

豪快な飯屋に賭博場、果ては歓楽街と

砦のくせにそんなのでいいのかよって

ツッコミたくなるような施設も多々あるそうだ。

まぁ子供の教育上良くないって理由で

素通りするってのが親の本音だろう。


まぁそれはさておき。

王都から砦街まで1日という事は

砦街までは2日かかる訳だ。

その2日の間、親や護衛と堅苦しい空間にいるのは

是非とも勘弁願いたい為、

馬車3台で移動としてもらった。

1台目は護衛と王都で売る為の荷物。

2台目は俺たち子供とウルダの小さめな馬車。

3台目が両親と妹、その護衛、世話係となった。


他にも馬で並走する護衛などもいる為

そこそこの人数での移動なので速度は出せない。

当然野盗や盗賊、山賊といった悪党も

もちろんこの世界には少なからずいる。

しかし親や護衛の話によると

今回は普段より多少は気楽なのだそうだ。

気楽と言うと語弊もあるがそれはさておき

理由を聞いてみるとウルダのおかげらしい。


何故にウルダが?と問えば

索敵能力が恐ろしく高いから。だそうだ。


己に対して敵意を向ける相手には基本容赦無く、

配下を使うのは当然としても自身も最前線で

敵対者に攻撃を加える程苛烈な性格だそうだ。

異属性種ミスカラーだとしてもそこは変わらないらしい。


と言う事で賊への警戒はもちろんするが

自分達よりかなり優秀な索敵能力を持った

ウルダがいる為不意打ちの可能性は低い

と言う事で余裕を持てているって事だ。


何それウルダ超出来る子……!


と言う事で護衛の乗らない俺たちの馬車の前後を

護衛の乗った大人が守りつつ進む予定だ。


野営もするし初の遠出で期待が膨らむな。

まぁけど馬車移動だから絶対尻は痛くなるな…


とりあえずちゃっちゃと出発だ。

俺たちの乗る馬車は地味目な箱馬車?で

木製で黒塗りである。窓も付いていて

前後に大人が3〜4人ほど座れるベンチシート。

結構高級なのかベンチシートがクッション込みの

フカフカした布張りで尻の心配は無さそうだ。

ここに3日…俺死ぬんじゃないかな…主に暇で。


そんな俺の嘆きなど素知らぬふりで

ズンズン馬車に入っていくジェドと

馬車の中を見て固まっているシエル。


俺の味方は……あれ?ウルダ?

辺りを見回してもいない…

キョロキョロしてると上から鳴き声がしたので

見上げてみるとそこには馬車の屋根に飾りの如く

直立でこちらを見下ろしているウルダが。


そうか…俺の味方はいないのか…。

まぁいいけどな!まだその程度だと思ってろ!

そのうち度肝抜いてやるからな…ふふふふふ。


「はぁ…さっさと乗り込もう…。シエル何呆けてんださっさと乗れよ…って気を失ってる?」


「ハッ!す、すみません!邪魔でしたね!すぐ降りますので!!」


「いやいやいや、降りてどうする。さっさと乗り込めって。」


「そうだぞ!おい、シエル!この馬車すげーな!椅子フッカフカだぞ!早く座ってみろよ!」


「ジェド!何故貴方は主人のラシッド様より先に乗り込んでるんですか!?馬鹿なんですか!?馬鹿でしたね!!!」


おぉ…ジェドへの怒りで再起したようだ。

その後出発してから1時間

みっちり説教されたのは言うまでもあるまい。

もちろんフッカフカの椅子ではなく

硬い木の床の上に正座でした。


ジェド、お前は期待を裏切らないな……。


さて隣でガミガミされるのはまぁ面倒なのだが

ある程度言わせないと鎮まらないので耐えて、

ジェドのいびきに対して説教し始めた辺りで

止めに入った。


「はいはい、とりあえず今日はこの辺でな。せっかくの遠出なんだから外の風景でも見つつ今後の話をしようか。」


「し、失礼しました…。」


「ジェドももうちょい落ち着け?別に馬車は逃げないんだからよ。」


「あ、あぁ…すまなかった…。今後は気をつけるから…そろそろ座っていいですかね…シエルさん…。」


「ダメです!」


即答だよ。流石に可哀想になってきた。


「まぁまぁシエル。俺は気にしてないから。次やらかしたら屋根に括り付けるから許してやってくれ。」


「!?」


「ラシッド様がそうおっしゃるなら…」


「待て!?冗談だよな!?」


「やらかしたらだから。大丈夫だろ?やらかさなければフッカフカの椅子に座って快適な旅を楽しめるんだから問題無いだろ。」


「ラシッド様の寛大な処置に感謝しなさいよ?」


「マジか……」


見事にorzを極めたジェドに内心合掌。



さて朝一出発してからざっと半日ほど経ち

今は昼時。俺たちが初の遠出ということで

休憩がてら近くの川で腰を落ち着けて昼飯。


味付けは薄めで素朴なスープと燻製肉とパン

護衛隊長として付いてきていたタルサと

腹ごなしに訓練をして軽く汗を流してから

川で体を拭いてから再度出発。


今進んでいる道は右側に広大な

小麦(パンの材料で小麦によく似ている)畑が。

道を挟んで反対側に川が流れ、その向こうは山。

道は山に沿ってゆるくカーブしていて

先は見えないがずっと轍が続いている。

そんな長閑な風景をよそに

早速飽きた俺はベンチを1つ使って昼寝。

向かいのシエルは読書。

ジェドはシエルの顔色を時たま伺いつつ

外を眺めている。


そうしてのんびりした時間が流れ夜。


川沿いでみんなで夕飯を食べ各自思い思いに

好きな事をしているとウルダが低く鳴き始めた。

それを聞いた護衛が周りに声をかけ

非戦闘員を馬車の近くに集め警戒をする。


今の所特に何も聞こえないが…

ウルダが警戒したと言う事は何かが

こちらに近付いて来ていると言う事だろう。

火に薪をくべ大きく燃やし

森の奥を見透かす様に注視していると

山の奥から巨大なイノシシが顔を出した。

体長3メートルほど体高は2メートル程だろうか?

牙は長く全身銀色の毛に覆われている。


というかヤバくね?人間に勝てるのあれ。


「くっ…シルバスタンプだと…?何故こんな場所にこんな魔獣が…!?」


どうもシルバスタンプという名前らしい。

魔獣ってのは普通の獣と違い

魔力を持っているから魔獣だそうだ。

シルバスタンプの場合その銀色の毛と牙と鼻に

魔力を通し硬質化させ重戦車の如く突っ込んで

あらゆるものを弾き、轢き、貫き、押し潰す。

知能が若干低いのがせめてもの救いだが

基本出会ったら良くて半壊は覚悟する魔獣で

現在かなり絶望的な状況「だった」らしい。


「だった」とは何かというと

シエルの魔眼が効いたのだ。

その後大人しくなったシルバスタンプに

ウルダが何かしらの能力を使った様で

魔法陣がシルバスタンプの足元に

展開したと思ったらシルバスタンプの牙が

黒くなりシルバーの毛並みに赤の模様が浮かんだ


これはつまり…ウルダの配下になったのか?

けどウルダに赤要素無いと思うんだが…。


するとシルバスタンプは俺に向かって伏せをし

1度匂いを嗅いでから山へと帰っていった。


俺か?もしかして俺の配下になったのか?


周りが呆気に取られ動かない中

ウルダは満足そうに屋根の上へと戻り

俺は俺でとりあえず何が起きたかわからないが

危険は去ったということは分かったし

そのまま呆気に取られたままの周囲を

置き去りにして馬車に戻り寝た。


今回は予想外の出来事だったが有益な情報を

手に入れる事が出来た。


シエルの能力が動物(魔獣だったが)にも効く事

ウルダが魔法を使って配下を増やせる事

ジェドが動物に対して(今の所)無力だと言う事

が分かった。


シエルマジ最強。


周りは未だ呆気に取られ動けずにいるが…

まぁそのうち再起するだろう。


ほっといてとりあえずシエルとジェドと

話をしたところシエルはまぁ見てわかる通り

魔眼で動きを止められるらしい。

ジェド曰く魔眼が完璧に効いたのではなく

魔眼の力でシルバスタンプに迷いが生じた様だ。

ジェドの読心能力も言葉として理解は出来ないが

感情を読み取る事は可能だったようで

まるっきり無力って訳でもなかったようだ。

その後ウルダの魔法にかかったシルバスタンプは

多少の知恵(片言だが言葉を読み取れたようだ)を

ウルダから授かりウルダと俺に対して

従順の意を示し帰って行ったそうだ。


なんだ。ジェドもやれば出来る子じゃないか!


とりあえず今日の出来事は大体把握出来たし

明日に備えて寝るとしようか。


初日からハプニングもあったが

想像の斜め上をいく結果が得られて満足だ。


明日も何か起きる気がするんだよなぁ…。


無事に王都に着けるんだろうな…?




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