その1「新たな王の誕生?」
灼熱の業火に焼かれながら、一つの生命は消え去った。この気持ちはなんだろう。感じたことのない気持ち。僕は本当の父ではない、この男の死の報告を受け、今までは感じなかった、そんな気持ちがこみ上げた。そう。失って初めて…
数日が経ったようだ。だが何もする気になれない。何もしたくない。自分の部屋にこもっていたい。
「皇子どの!ドラゴレオ皇子!そう気を落とされるな!我々がついておりますぞ!」
今でも僕の部下が扉の前で呼びかけてくれている。
そうだったな。この世界は人間が暮らしている『地球』とは大きく異なる世界なんだ。
僕は幼い頃、本当の両親を亡くした。そして心を閉ざした。親戚付き合いも悪かったせいか、誰にも預かって貰えず施設に送られ『愛』を知らずに育った。
いつからかな、義理の父であり、龍之王である「バサク・ド・ラグン」と出会い、この世界に連れられた。彼は僕を本当の息子のように育てて、「ドラゴレオ」という名前までくれたのだ。
この気持ちは、亡くして初めて気付いた気持ちは…愛なのかもしれない。今までそっけない態度であったことが悔しい、が。今こそ恩を返すときなんじゃあないか? 父が守り、統治していたこの国だが、今、上に立つ存在がいない。この国を…この国をッ! 僕が治めるんだ。王としてッ! 父の作ったこの国を守ろう。
そうして僕は扉を開けた。閉ざされた扉。その暗い内側に光が差し込んだ。
「皇子どの!心配しましたぞ!」
家臣の一人が心配そうに見つめている。
「すまない。心配をかけたな。もう大丈夫だ。」
堂々とした声で、声高らかにそう言った。
「皇子どの。これからどうするおつもりで? ラグン国王が亡くなられたことで国は混乱しています。」
彼らも大変だったのであろう。見てわかるほど疲れているようだ、目にクマができている。
「ああ。わかっている。僕が王になるよ。バサク・ド・ドラゴレオの誕生だ!」
色々僕も不安なことはある。けど、この瞬間に、この国に新たな王が誕生したのだ。