表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

第七話 副幹事

 日本は温泉・銭湯などが世界一多い国ではないかと思う。全国各地至るところに大小様々な施設がある。

 スパ、つまり天然温泉は、わざわざ山や郊外まで行かなくても、市街地にもある。天然や源泉にこだわるのは、つまりその効能を期待するからだ。

 癒されたい。それは身体だけではなく、心も含めてだ。だから、いくら効能の素晴らしい天然温泉でも、不潔なところへは行きたくないし、内装も悪いよりは良い方が良い。

 なるべく落ち着ける雰囲気の所に行きたいと思い、同僚に相談すると、

「じゃあ、女性陣も何人か誘って行くか」

 と言われた。

 正直言うと、一人で行きたかったのだが、なんとなく断り辛い雰囲気になってしまったので、仕方なく男女六人で行く事になった。当然、食事と酒付きである。しかも、言い出しっぺの一人という事にされてしまい、副幹事に任命されてしまったのは、大きな計算違いだ。

 独身の男三人、女三人という組み合わせは、もしかしなくても狙っているだろう。

「……高杉(たかすぎ)、お前、彼女いたんじゃなかったのか?」

 幹事役の同僚、企画担当の友人に尋ねると、

「それはそれ、これはこれ。だいたいな、これは彼女イナイ暦五年以上のお前のための企画なんだぞ」

「頼んでない」

 有り難迷惑だ。

「そういうこと言うな。梶木(かじき)もノリノリだし、受付のユキナちゃんだって喜んでるんだから」

「誰だ、それ」

 受付なら知らない筈はないが。

深川由貴奈(ふかがわゆきな)ちゃんだよ。今年入社の」

「あの内巻きロールの新人か」

「そ。可愛くて巨乳の」

「巨乳? そんなに大きかったか?」

「いや、Dくらいだけど。だけどそれくらいありゃ十分だろ? それともお前、オッパイ星人だっけ?」

「別に。あまりこだわりはない」

 ただ、面倒臭いのと煩いのは苦手だ。

「良く見てるんだな」

「毎日見る子のチェックくらいするだろ?」

「顔は見るけど、それから下は別に。セクハラだとか何とか言われるのは面倒だ」

「……お前、渇れてるな」

 そんな事言われたくない。

「別に渇れてるわけじゃない」

 たぶん好みだったらチェックするだろうけど、そうじゃないから見ないだけだ。

「お前、トシのワリにふけてんだよ。ユキナちゃん、俺とお前が同期だなんて思わなかったって言ってたぞ?」

「……そんなに老けてるか?」

「見た目はそれほどじゃねーけど、言動がオッサン臭いだろ?」

「…………」

 ちょっとショックだった。

「ま、俺が二十六歳くらいで、お前が三十歳らしいから、共にプラマイ二歳ずつ? そんなたいした誤差じゃないけどな」

 それはそうだが、なんとなく複雑な心境だ。頼もしく見られるとか、貫禄があると見られるのなら嬉しいが、老けていると言われるのは。おとなげないと言われるよりは、確実にマシだが。

「高杉は深川狙いなのか?」

「いや、ユキナちゃんは惜しいけど、お前に譲ってやるから、ガンガン行け」

「…………」

 もしかして、始まる前から、既に決定事項なのだろうか。

「選択の余地はないのか?」

来生(きすぎ)ちゃんは梶木のお目当てだし、俺はユキナちゃんがダメなら、アキちゃん狙うから」

「なら、お前が深川でも良いんじゃないか?」

「彼女にバレると殺されるから、口が堅そうなアキちゃんの方が良い」

「…………」

 ため息をついた。

「……嫌だと言っても拒否権はないんだろ?」

「贅沢言うな、井上。一番若くて胸が大きいユキナちゃんだぞ。嬉しくないのか」

「向こうにだって選ぶ権利はあるだろ?」

 すると高杉はニヤリと笑った。

「安心しろ。幸運の女神はお前に微笑んでいる」

 俺は深いため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ