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Part,1

 ジリリリリ……!

「…………」

 明るい茶色の瞳が眠たそうにしている。

 ジリリリリ……!

「…………」

 まだ眠そうだ。

 ジ!

 寝ぼけまなこのまま、目覚まし時計を止める。

「…………」

 それでもまだ眠そうだ。

「……い!」

 誰かの声がする。

「まりい!」

 女の人の声。

「……はぁい」

 こげ茶色の髪に茶色の目。

 少女は、まりいは目を覚ました。



 椎名まりい。十四歳。焦げ茶色の髪と明るい茶色の瞳をもつ中学三年生だ。

「早く行きなさい。学校に遅刻するわよ」

 台所から再び女の人の声がする。

「まだ時間あるから大丈夫だよ」

 と言いつつも、本当に遅刻しかねないので靴を履き、通学用カバンを肩にかける。

「行ってきます」

 まだ家の中にいる家族にそう言うと、ドアを開ける。ドアの前には、まりいと同じ年頃の髪の短い女の子がいた。

「まりい、おはよっ」

「由香ちゃんおはよう」

 佐藤由香。まりいの友達である。

「いつも言ってるでしょ。もっとシャキッとしなさいよ」

「うん……」

「ほらほら、言ってるそばから。そんなんじゃ今日の体育の授業バテるわよ?」

「それは大丈夫だよ」

「はいはい。とにかく学校行くわよ。ほらっ。急ぐ!」

 そう言って、掛け声と共にダッシュする。

「まってー!」

 それにならい、まりいも慌てて後をついて行った。



「まりい、そこっ!」

「はいっ!」

 バシッ!

 ボールがコートに炸裂する。

 今は四時間目、体育のバレーボールの授業中。

「椎名さんって体育になると性格かわるよねー」

「ほんと。いつもはおとなしいのに」

 まりいは、見かけとは裏腹に運動神経がいい。普段はおとなしいだけに、周りからすれば余計にギャップを感じてしまうのだろう。

「そんなことないよ」

「そんなことあるって絶対」

 クラスメートの一言に周りがうなずく。

「ほんとにそんなこと……」

 ズキッ。

「……っ!」

『?』

 まりいの一瞬見せた苦痛の表情に周りが怪訝な顔をする。

「授業終わるぞー。みんな整列!」

 が、ちょうどのタイミングで体育教師が号令をかける。

「集合だって。早く行こうよ。」

 さっきの表情を打ち消すように、クラスメートに呼びかけると、すでに集合しているクラスの輪の中にかけていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「まりい、今日のバレー大活躍だったよね」

「うん! 体育ならまかせて」

 学校の帰り道。いつものように由香と帰路につく。

「これが男子の前でもできるといいのに」

 由香のついたため息に、まりいが硬直する。

 まりいは対人恐怖症、特に男子に対して――がある。そうなったのにはちゃんと理由があるのだが、それは後ほど話すことにしよう。

「まりいは、もっと多くの人と接しなきゃだめね。そしたらちゃんと話せるようになるでしょ」

「あははは」

 由香の言葉も当たっているだけに苦笑せざるをえない。

「それはそうと、体は大丈夫なの? 確かに大活躍だったけど、平気なの?」

 友人が心配そうな顔をする。

「やだ、由香ちゃんそれこそ心配しすぎ……」

 ズキッ!

「……っ!」

 数時間前と同じ感覚に体をくの字におる。

「まりい?」

「……大丈夫。すぐ良くなるから……」

 薄れ行く意識の中、まりいは地面に崩れ落ちた。

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