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死者の記憶を継ぐ者 〜巻き込まれ転生で幽霊になった俺は、王女に未来を託す〜  作者:


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視える王女の噂

夜の間、俺は城内を彷徨いていた。

する事も無いし、眠くもならない。

警備の巡回の兵について行ってみたりして、時間を潰していた。


廊下を歩き、階段を上り、塔の上まで。


どこへでも行ける。壁も扉も関係ない。

幽霊ってのは、こういう時は便利だな。


朝日が出る頃には、城の屋根へ行き、空を見ていた。


地平線が淡く染まる。やがて、光が差し込む。


そして――太陽が、昇った。


二つ。


「……おお」


太陽が、二個見えた。


ほんと、ここは別の世界だな。と、改めて思ったよ。

一つは大きく、もう一つはやや小さい。

並んで昇る様は、現実味が無い。


ゲームか、映画か。確かにここにある。

俺はしばらく、それを眺めていた。


そして、あの魔女の所へ行って。


ジェスチャーで如何にか、街にも行ってみたいって伝えてみた。


最初は面倒そうな顔をされたが、やがて溜息をつき、


「外出中よ、って事にしておくわ」


と、許可が出た。


いや、俺は誰にも見えないんだが。

まあ、建前ってやつか。


城門を抜け、町へ。

町中はやっぱヨーロッパ風?の町並み。


石畳の道。木造の家屋。

煙突から立ち上る煙。


のんびりした住宅に、活気のある市場。


行商人が声を張り上げ、子供が駆け回り、

主婦らしき女性が品物を選んでいる。


旅行気分だ。


まあ、少しは楽しまないとなぁ。


住人達が和気あいあいとしていて、良い町だと思った。

……辺境って言う割には、ちゃんとしてる。


交易路の要衝、ってやつか。

物資も人も、それなりに集まっている。


その時。


井戸端で話し込む女性達の声が耳に入った。


「ねえねえ?聞いた?」


「この町に第二王女様が赴任したって」


あー。


やっぱ話題にはなるよな。


「私も聞いたわよ。でも噂の王女様でしょ?」


噂?


「やっぱ、その噂ほんとなのかしら?」


「如何なんだろうね?」


声が少し小さくなる。


「だって、小さい頃から何も居ない所に話しかけたり」


……ん?


「他の人になぜ見えないって?聞いたり」


胸が、ざわつく。


「不気味な子だったんでしょ?」


「そう言う話みたいよね」


女性が肩をすくめる。


「何だか心配よね」


俺は、その場に立ち尽くした。


……あー。


成る程。


昔から“見える子”って奴だったのか。

だから、俺も見える。


偶然じゃない。

元々の資質。


王族としては……厄介だろうな。

幽霊が見える王女。

そりゃ噂にもなる。

敬遠もされる。

孤立もする。


俺は空を見上げる。


朝の光が、町を照らしていた。

活気のある市場。


笑い声。日常。


だが、その中であの少女は、ずっと一人だったのかもしれない。


城へ戻る。魔女の部屋へ。扉をすり抜ける。


「おかえり、ポチ」


やめろ。


俺はすぐに、さっきの話をジェスチャーで伝える。


子供の頃から見えていた。


噂。


魔女の眉が、わずかに上がった。


「……ああ」


納得したように頷く。


「やっぱり、聞いたのね」


知ってたのか。


「エリシア様は、昔からそうよ」


魔女は淡々と言う。


「見えるはずのないものが、見えていた」


椅子に腰掛け、脚を組む。


「だから王都では“気味が悪い”って言われていた」


胸の奥が、ちくりとする。


「でも」


魔女は、視線を上げる。


「それを理解出来るのは、私だけだった」


……一番の理解者、って訳か。


エリシアが、ここにいる理由。


左遷。


それだけじゃない。“扱いづらい王女”。

だから、辺境。魔物の出る町へ。


「王族ってのも、大変ね」


魔女がぽつりと呟いた。


俺は、何も言えない。


ただ。あの城壁での横顔を思い出していた。

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