同類
「おい!」
……ん?男の声?
「おい!お前だよ!」
俺は、キョロキョロと周りを見る。
……誰も居ない。
騎士達もエリシアもシスターも魔女も地下道を進んでいる。
「何だ。お前、まだ成り立てか?」
成り立て?
「しょうがねーな。ほれ!」
その瞬間――
「うお!!!」
目の前に現れた。幽霊!?
透けているが人の形。だがはっきりと。
「幽霊!!」
思わず、叫ぶ。
「はぁ?」
そいつが、眉を顰める。
「お前もそうだろ!」
……え?
「あー。同類見るのも初めてか」
こっちを、まじまじと見る。
「俺の姿も見えて、声も聞こえるの?」
「おう!聞こえるぞ!」
あっさり。
「いや〜、久々に同類見掛けたからさ」
頭を掻く。
「嬉しくて、声掛けちまった」
……同類。
「お前は、ずっとここに住んでるのか?」
「ん〜。そうだな」
地下道の壁に、もたれかかる。
「住み着いちまったな」
住み着くって。
「で?」
俺を見る。
「お前は、ここで何してるんだ?」
「それが――色々あって、王都から脱出するのさ」
「ほう〜」
ニヤリ、と笑う。
「面白そうだから、ついて行くかな」
……はぁ?
「まあ、いいのか?」
一瞬、迷うが今は、それどころじゃない。
「じゃあ、そうするか」
軽いな。何だ、この幽霊は?
まあ――それどころじゃないが。
そいつが、エリシアを見る。
「見た感じ、姫様みたいだな?それと……魔女にシスターって如何言う組み合わせだよ」
「まあ、確かにそうだな」
頷く。
「あれ?」
首を傾げる。
魔女、気がついて無いのか……?まあそれどころじゃ、ないのか。
「なあ」
そいつが、俺の横に並ぶ。
「お前、どれくらいだ?」
「どれくらい?」
「幽霊になってからだよ」
「……数日だな」
「マジか」
呆れた様に、笑う。
「じゃあ、知らねー事だらけだな」
「そうなのか?」
「まずな」
指を立てる。
「俺らは、“意味のある物”にしか触れねー」
「……霊鋼みたいにか」
「おっ。分かってんじゃねーか」
頷く。
「あと、場所によっては強制的に引っ張られる」
「引っ張られる?」
「強い想いが残ってる場所とかな」
壁を、軽く叩く。
「ここなんかは、死んだ奴も多いからな」
地下道。
「……処刑場とか?」
「ま、似た様なもんだ」
肩をすくめる。
「それと」
もう一本、指を立てる。
「長く居過ぎると、混ざる」
……は?
「場所にだよ」
さらっと言うな。
「記憶とか感情とか」
自分の胸を指差す。
「削れてく」
……。
「だから、俺は中々ここから離れられねー。でも久々に同類みて、離れてーって思ったから動けそうだ」
笑ってはいるが目は、笑ってない。
「最後に」
三本目。
「生きてる奴に、見える奴は少ねーが」
ちらりと猫を見る。
「動物は、ほぼ見えてる」
やっぱりな。
「あと、魔女とか、聖職者は」
一拍。
「“気付く”」
……。
「気付かれたら?」
「祓われる」
軽く言うな……。




