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死者の記憶を継ぐ者 〜巻き込まれ転生で幽霊になった俺は、王女に未来を託す〜  作者:


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ポチ、城をさまよう

あれ?

何で名前が直ぐに出なかった?

自分の名前だぞ?


一瞬、喉まで出かかったのに、霧みたいに消えた。


妙な違和感が残る。


女――魔女は、そんな俺を見て小さく肩をすくめた。


「まあ聞いても話せぬのなら無理か」


軽いな。


「そうだな。ポチでいいな」


このやろー!

犬扱いかよ!!


思わず抗議のジェスチャーをするが、魔女は涼しい顔だ。


「ポチ。この世界の事を知り、少しは楽しめ」


楽しめって言われても……

巻き込まれて幽霊だぞ?

まあ、そうするしか無さそうだし……


そうするか……


魔女はもう興味を失ったのか、書物へ視線を落としている。

俺は部屋を抜け、城の廊下へと戻った。


さて。


幽霊。誰からも見えない。

触れない。声も届かない。


つまり――


!?


相手から見えないって事は!


くくく!


やる事は一つ!!


俺は意気揚々と、貴族らしき連中が談笑している部屋へ向かった。


豪奢な服。宝石。ワイン。そして、胸元の開いたドレス。


……うーむ。


見ても何も面白く無いな。

何故だ?

幽霊だから欲が無くなったのか。


いや、違う。


何というか……実感が無い。

触れない。匂いも感じない。


ただ映像を眺めているだけ。

虚しい。俺は溜息をついた。


テンプレお約束の“見放題イベント”は、不発に終わった。


「……つまらん」


自分でも驚くほど冷静だ。

欲望よりも、状況の方が気になる。

ほんとざっ西洋の中世って感じか。


石造りの廊下。

壁の燭台。鎧の兵士。重厚な扉。

勇者召喚テンプレ世界、ここにあり。


この身体?も慣れてしまえば楽か?

腹も減らないし眠くもならない。


疲労も無い。

階段を一気に上がる。


いや、正確には“浮いて”いる。


足音も無い。城の上にも行ってみるか?

屋根をすり抜ける。


夜風が吹いている――はずだが、感じない。

城壁の上に出ると、視界が一気に開けた。


町はどんな感じなんだ?


見渡す。


城の外には石畳の街路。

家々は木造と石造りが混在している。


中央通りはそれなりに広い。

だが灯りはまばら。活気はあるが、どこか緊張感が漂っている。


広いのかな?

王都というより、中規模都市。


交易都市か?


門の外には荷馬車が並び、兵士が検問している。


その先には、暗い森。

遠くに山影。


……あっちが辺境か?


そう考えた瞬間。低い鐘の音が鳴った。


ゴォン……ゴォン……


警戒音?


城下の門が慌ただしく閉じられる。

兵士が走る。


「北門付近に魔物出現!」


声が響く。町の空気が一変する。

さっきまでの静けさが、緊張へと変わる。


城壁の外、森の影。

赤い光が瞬いた。


「おいおい……」


テンプレ勇者世界らしくなってきたな。

俺は城壁の外へ視線を向ける。


兵士達が出動する。

その中の一人。

若い兵士が、震える手で剣を握っていた。


……ああ。


怖いんだな。

当然だ。俺も同じ立場なら、震える。

その兵士が、門を抜ける直前。

森の奥から、咆哮が響いた。


巨大な影が、木々をなぎ倒しながら姿を現す。


「うわ……」


本物の魔物。ゲームじゃない。

兵士達が突撃する。剣が振るわれる。


だが、あっさりと一人が吹き飛ばされた。


城壁の上からでも分かる。

致命傷。


俺は、息を呑む。


死。


さっきまで話していた、ただの人間が。


動かない。その瞬間。

何かが、引っ張られた。


俺の意識が、強制的に――


倒れた兵士の方へ。

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