帰還
無事に、宿屋へ戻れたな。
俺は、二人の後を追いながら中へ入る。
中では――
老夫婦が、魔女によって押さえられていた。
手首に、淡く光る拘束の様なもの。
動けない様にしてあるらしい。
……まあ、仕方ないか。
そこへ。
「お父さん!お母さん!」
娘と孫が、飛び込んで行った。
老夫婦の目が、見開かれる。
「……っ!?」
「無事だったのか……!」
拘束されたまま、涙を浮かべる。
「良かった……」
魔女が、ちらりと俺を見る。
「おっ、戻ってきたか」
軽いな。
「ポチもお帰り」
俺は、霊鋼で突き刺したままの袋を――
テーブルへ、投げ捨てた。
ドサッ。
魔女が、それを拾い上げ中身を、確認する。金貨。数枚じゃない、それなりの量だ。
「成る程ね」
魔女が、呟く。
「金で雇われた連中ね」
やっぱりな。
「しかし……」
老夫婦を、見る。震えている。
「確かに」
低い声。
「人質を取られたとはいえ」
一拍。
「王女を暗殺しようとした罪は……」
重いな。この場の空気が、変わる。
老夫婦の顔が、青ざめた。
エリシアも、その場に居て状況を確認したみたいだな。
老夫婦と娘と孫。
そして、テーブルの上の金貨。
魔女の視線も、鋭い。
空気が、重くなりかけた――その時。
ぱん!
と、エリシアが手を叩いた。
全員の視線が、集まる。
「私は、何もされておりません」
静かな声だが、はっきりと。
「早く、温かい料理を食べたいです」
……。
魔女が、口を開きかける。
何か、言いたそうだったが――
エリシアの方を見る。
数秒の沈黙。やがて。
「……エリシア様が、そう仰るなら」
渋々、といった様子で頷いた。
そして、老夫婦へと視線を向ける。
「さて」
腕を組む。
「ちゃんと宿料金は払ってるんだから」
一歩、踏み出す。
「準備しなさい!」
その一言で、場の空気が、変わった。
老夫婦が、何度も頭を下げる。
娘が、泣きながら支える。
……助けた、って事か。




