廃屋の中
さっきの男は……何処だ?
俺は、路地の上を漂いながら周囲を見渡す。
人影は少ない。
いた!あいつだ。
さっき、宿の裏口に来ていた男。
籠はもう持っていない。
急ぎ足で、裏通りを進んでいる。
後をつけるぞ。
俺は距離を保ったまま、追う。
……しかし。
気のせいか?前に来た密偵とは、動きが大分粗いな?
足音。周囲への視線。隠れる気があるのか無いのか。
何だか、素人っぽいな?本職じゃないな。
やがて――
男は、一つの建物へ入って行った。
……ん?ここか?
随分と荒れているな。壁の一部は崩れ。
窓も割れている。廃屋、って奴かな?
悪さするには、丁度良いって訳か。
周りにも、他の建物はねーし。
俺も、中へ入るか。
壁を抜ける。中は、薄暗い。
……あちゃー。
如何にも野盗って感じの奴らだな。
数人。剣や棍棒を持って、だらけている。
「おい!上手く行ったか?」
奥から声。
「あっしが、しくじる訳ねーでしょ」
さっきの男だ。
「例の物は、渡して来やしたぜ」
笑い声。
「こんな楽な仕事はねーなー」
別の男が言う。
「娘と孫だっけか?掻っ攫って、その年寄りどもに渡すだけで」
金貨を、指で弾く。
「金貨十枚も払うなんて、いい稼ぎだ」
……やっぱりな。
「しかし、親分」
若い声。
「こんな楽なのに、金貨十枚もって」
首を傾げる。
「依頼人は、誰でやんす?」
親分らしき男が、肩をすくめる。
「さーなー」
酒瓶を傾ける。
「酒場で、話を掛けられただけだ」
「前金で、パッと払われた」
「成功報酬は、更に金を出すって話だ」
成る程な。雇われただけの奴等か。
所謂、ザコか。
……成功しても、お前らの命は無いと思うがな。口封じってやつだ。
「で?」
親分が、周囲を見る。
「人質は?」
別の男が、顎で示す。
「地下でさぁ」
地下か。俺は、そちらへ向かう。
階段。鉄の扉。
……いた。
縛られた、女性と子供。
間違いない。宿の老夫婦の、娘と孫だ。
来たは良いが……如何するか?
一度、戻るか?




