戦いの後
猪型の魔物が、地面に崩れ落ちる。
重い音。
俺は、霊鋼の針を握ったまま、その場に留まった。
……一匹、か。
他は――周囲を見渡す。
二匹は、林の奥へと逃げた様だ。
残りは、騎士達が蹴散らした様だが……
街道の上では、まだ数人が剣を構えている。
警戒を解いてはいないが戦闘は終わったらしい。
「……大丈夫か!?」
「こっちは軽傷だ!」
声が飛び交う中、負傷者が出た様だ。
騎士の一人が、膝をついている。
腕から、血が流れていたが死者は、居ないな様だな。
まあ、良かったな。
怪我も、そこまで深く無い様だ。
すぐに、別の騎士が駆け寄る。
腰に下げていた、小さな杖の様な物を取り出した。
……お?
回復魔法ってやつか?
騎士が、それを負傷者の腕へと向ける。
何かを、呟いた。杖の先が、淡く光る。
光が、傷口を覆う。
じわり、と。
傷口が――塞がっていく。
おぉ……。すげー便利。
さっきまで流れていた血が、止まる。
裂けた皮膚も、ゆっくりと繋がっていく。
完全、とは言えないが応急処置としては、十分だ。
負傷した騎士は、肩で息をしている。
顔色もまだ悪い。……疲労の回復は、無い様だな?
回復したのは、傷だけ。
体力までは戻らないらしい。
万能、って訳じゃないのか。騎士達は、すぐに隊列を整え直す。
馬車の周囲へ。
警戒を、再開。
俺は、霊鋼の針を見下ろした。
さっきの感覚。……何だったんだ?
……さっきの。
何か、身体に入って来た様な感覚は――何だ?
魔物を倒した瞬間。胸の奥に、すっと。
何かが、流れ込んできた気がした。
……まあ、身体は無いんだけど。
でも、確かに“俺の中”に入ってきた様な。
妙な、感触。俺は、自分を確かめる。
意識。
記憶。
名前。
……言えるな。
削れてはいない。
違和感も、今の所は無い。霊鋼の針を見下ろす。共鳴は、変わらない。
さっきよりも、強くなっている様な気もするが……
気のせいか?
取り込んだのか?
それとも――残滓に、触れただけか。




